第2話 マシューの手紙 Episode #4.2
監督/David Evans 脚本/Julian Fellowes
【前回までのあらすじ】
待望の後継者誕生の矢先に起きたマシューの死。夫の死から立ち直
れずにいたメアリーを周囲は心配する。イーディスはグレッグソンに
リジーと離婚できるとしその為にはドイツ国籍の取得が必要だとされ
不倫のグレッグソンからプロポーズされる。アンナはオブライエン
が出て行った事を知りみんなに伝える中、変わりにやってきたのは
以前ダウンタウンでメイドとして働いていたエドナだった。ブラン
ソンを誘惑したことで引き離されるようにして首になった彼女。
メアリーのことを見かねたヴァイオレットは救いの手をさしのべる。
「選びなさい、このまま死ぬか生きるか」と。カーソンからの助言
も有り、メアリーは新たな一歩を踏み出す。
【ストーリー】
ヒューズはみんなの元にグエンが結婚したという知らせが来たこと
を語る。昔ここにいたメイドで現在秘書をしているという。
ただしご主人の母が病気なので式は挙げないとのこと。その内夫を
紹介すると言ってくれているという。アンナはみんなでカードを
贈りましょうと語る。
トーマスはエドナを見ると大した出世だなという。みんなは君を
受け入れたのかと問うと、別にみんなに好かれなくても良いという
彼女。トーマスは気が合いそうだと語る。アンナはエドナに対して
アドバイスとして、バローは嫌がらせをしてくるかも知れないので
一定の距離を置いた方が良いと語る。
ジミーは荷物が届いたとして使用人部屋に運んでくる。
メアリー宛の荷物だとしてカーソンは、荷物はマシューの事務所から
届いたものだという。メアリーに渡す前に見た方が良いのかも知れ
ないとし、彼女が悲しむようなものが入っている可能性がある
とヒューズはカーソンに告げる。カーソンは確かにそうかも知れない
としてロバートに確認してもらうという。
ジミーは使用人たちに対して、フィリス・デアがヨーク劇場に来る
ことを知らせる。ロンドンで大ヒットしたミュージカルの「バラの
貴婦人」に出演予定だという。アイビーは誰なのかと問うと、デア
姉妹の一人で、ジア・デアとフィリス・デアの美人女優姉妹だと
いう。ジアはイーシャー卿の息子と結婚して引退しているという。
パットナムは羨ましいことだねと語る。アイビーは劇場には縁がない
のでまるで知らなかった。
ヴァイオレットはロバートに対して早くメアリーにマシューからの
手紙を見せなさいと語る。法的効力があるか分からないという
ロバートはメアリーに無駄な期待を持たせたくないという。マシュー
はメアリーに全財産を継がせたがったのよと語り例え法的には無効
でもメアリーにとっては大事なことだという。これがメアリーの
の望んだことでロバートが口を出す事じゃないという。弁護士のマレー
に相談するというロバートだが、ヴァイオレットはまずメアリーに
見せるのだという。あなたは本心を誤魔化すつもりなのか?と問うと、
あなたは当主の座を自分が独占したいのだとし、メアリーとは分け合
いたくないのだという。昔の私ならば夕食無きよと言いたくなる
ところだと。
医師のクラークソンはクローリーハウスに居るグリッグの診察を
する。一番の薬は働くことだという。しかし彼の年では仕事を
見つけるのは難しいことをヒューズは語るが、イザベルに考えがある
みたいだという。
ヒューズはグリッグに逢うと、カーソンのことを尋ねられるが忙しい
と嘘をつく。しかしグリッグは嘘だと分かっていて本当はどう
言っているのかと問う。カーソンは昔の日々を忘れたいみたいだと
語る。アイツはオレを恨んでいるが誤解しているとし、オレは悪くない
んだと語る。
デイジーは家族が揃うのでディナーが2人分追加だという。アルフレッ
ドはジミーがアイビーに構っていることに対して彼はアイビーの
ことは何も思っていないという。オレへの当てつけだと。しかしデイ
ジーは人は変わるのではないかと語る。パットナムは村に魚売りが
来ているかと思ったが来ていなかったとし、ヨークの店まで買いに
行かねばならないと語る。ソレを聞いていたジミーは自分が買いに
行くという。カーソンが許さないというが、パットナムに頼んでくれ
と語る。
アンナはモールズリーに逢う。
彼は執事の仕事はなく、道路の舗装工事の仕事をしていた。
待っていれば今に仕事が見つかるとアンナは語るが、職を失って
から村中に借金をしているとし、もうどん底だと語る。幾ら借りてい
るのかと問うと、15から20ポンドくらいだという。主人と私で金を
貸しましょうか?とするが返す宛がないという。大金は無理だが金は
あげるというアンナに対して気持ちは嬉しいとしてありがとうと
しつつも受け取れないと断る。
ロバートはメアリーに対して話が有ると語る。今夜ヴァイオレットと
イザベルを招いたこと。マシューがお前に宛てた手紙が見つかったの
だという。マシューの事務所の本の中に挟んで有ったもので今朝
これが届いたのだという。封は元々していなかったとし、マレーに
渡して吟味させようとしたと語るが、ヴァイオレットからまずは
メアリーにと言われたのだという。読めば分かると語る。
アンナはベイツにモールズリーのことを話す。かわいそうで心が
痛んだことを語る。
マシューが手紙を残していたとしてみんなが集まるまで語る。
スコットランドに行く前に書かれたみたいで本の中に挟んで有った
のだという。みんなの前で手紙を読むとし、ロバートそれを読んで
もらうことになる。
■感想
シーズン4がどういう方向性を持って行くのかが少しずつ明かされて
来た感じかな。
何と言っても国中の就職難・恋愛・社会に於ける男女の格差、身分
制度による格差、そして何よりもダウントンアビーに於ける財政再建
と相続の問題点。そんな中でも人間同士の義理とか人情などを
際立たせて、その問題点に立ち向かい、乗り越えていこうとする
姿に良さを感じるし、そこに存在する落とし穴なんかも見え隠れして
いて、人間のリアルな生態がそこにはあるって感じ。
そしてちょっぴりほっこりさせる内容としては至る所で散見される
男女の恋愛ネタ。どの恋愛の流れもビターな味のする結末が用意
されている感じだけど、成就するよりもよく心に響くような流れと
して演出されているところは深く記憶に残る感じだ。
■人は変わる
エドナはシーズン3の時にはそれ程悪い人物には思えなかったけど、
「人は変わる」ということを通して、その典型的人物の一人になって
いくのかな。オブライエンが居なくなったことで、代替的役割を
求めているところも有るのだろうけど、トーマスはバローさんと
呼ばれるようになっても尚、未だに意地の悪さというものが存在して
いて必ずしも人が変わるものだけではない様だ。基本的には一人は
寂しいので誰か仲間とかパートナーを求める為、トーマスはエドナ
を味方に付けようとしている感じ。
デイジーは随分とアイビーを巡るアルフレッドとジミーの恋愛の流れ
なんかを客観的に見られる人物になっていて、嫉妬心なんかは影を
潜めてしまっているし、ジミーは単なるキザな遊び人というだけでな
く、アイビーに対する恋心なんかも見られて、その方向性が少しずつ
定まり始めている。迷走してしまっているのはアルフレッドだね。
そして何よりもモールズリーさん。
この人はこれまでずっと綱渡りの人生だったけど、運とか処世術とか
ちょっとした小狡しさを通して、上手いこと人生の軌道には乗って
いたのだけど、そのメッキが剥がされてしまったようでちょっぴり
切なさも有った。
小賢しさ所に愛らしさと小憎らしさを感じるキャラクターだったのに、
意外なところでプライドを発揮して金の施しは受けないみたいな感じ
になっていたり、舗装工事で顔を泥だらけにしている姿をみると、
それだけ厳しい状況というものを感じて笑えないところでドラマが
回っている。
■身分制度
身分制度が少しずつ現代ナイズドされていき、かつてカーソンが
仕切っていた使用人たちの間での身分の違いも「無法地帯」だと
語るように厳格さだけではなく、それぞれの個性が通る時代になって
いる。カーソン自身がメアリーとの間で身分を越えた繋がりなど
に言及しているし、時折「失礼を承知で・・」という文言で助言する
姿が有る。また親の言うことを聞かない子供たちの姿が有ったり、
きっちりとした礼節・礼儀などもアバウトになり、イーディスに見る
朝帰りの光景だったり、モーニングなどの着替えなどを無視した
流れに、ヴァイオレットからは「親しき仲にも礼儀あり」「家族だ
からって・・・」とちょっぴり切なく、そして皮肉にも似た台詞が
語られた。その前の展開でヴァイオレットはメアリーにはロバートに
内緒で農地改革・財政改革に於ける勉強をトムに教えてもらう
件を通して「親しき仲にも秘密はあるものよ」と語っているから
余計に笑える。
そしてシーズン4ではいつでも爆弾になりえるローズに見る爵位を
持つものの存在が一般の人たちとの交流を通して、ちょっとした
問題を起こしそうなところは怖いところが有るし、ドラマをかき回そう
としている感じもして、おもしろさに繋がっている。
ローズの役割・行動は伯爵家などのお屋敷だけでなく、城下町などの
庶民の生活を垣間見る為には重要なキャラクターだ。
正直ローズはこのままサムとの関係に於いて、身分を偽って付き合って
いき、何時の日かサムが仕えているエリス卿とクローリー伯爵家
との会食の際に正体がばれるみたいな流れが演出されるのかと
思った。
■メアリー
マシューからの手紙が残されていた。
ロバートはマシューからの手紙をメアリーに見せずに処理しようと
していた動きがあり、その件でヴァイオレットからは手厳しく本音
を指摘されていた。ただロバートは全てに於いて悪意があるとは
思えず、あれだけ過保護な姿を通して見ると、メアリーに金の悩み事
などさせたくない思いも有ったのだろう。
ただあれだけ気持ちを込めて書かれたマシューからの手紙がメアリー
に伝わらなかったとしたらこれほどロバートの罪深きことは無かった
のだろうね。
「愛するメアリー、ダンイーグル行きを明朝に控え遺言と呼べるもの
を用意していないことに気がついた。弁護士としては迂闊だった。
それに身重の妻が要るのに無責任だ。戻ったらこれを破棄して正式
な遺言を書くことにする。だが念のためにここに記して置くことに
する。僕はメアリーに全てを相続させる。男の子か女の子か分からない
がもうすぐ僕らの間に子供が生まれる。遺言状を作る前に僕に何が
有った場合は君に全てを託す。これに署名をして家に帰れば、君との
ディナーが待っている。考えただけでも心が躍る。」
朝食の席でみんなの前で、メアリーが運営に関して意見を言う権利を
持ちたいとした際にロバートが
「輪作をどう思う?牧畜と穀物のどちらが良いか?税金についても意見
を聞きたい。」
今までそういうことに遠ざけて来たロバートが突然答えられるハズも
ないことを問う姿に意地の悪さはあるよね。
「遺言が無効てあって欲しいような口ぶりね」(vio)
メアリーが相続するとしても寡婦控除は特にないとし、相続人が妻
でも他人でも同じ税金がかかるのは変だとしてトムとメアリーは
愚痴っていた。
■イーディス
この人も恋する乙女って感じで、結婚することにばかり努力している
姿が有る。これも限嗣相続制故に仕方がないのだろうけど、年の離れた
人物との恋愛を求めたと思えば、今度は妻の居る男性との恋愛を
求めるところが何とも言えないね。しかもその相手はドイツ国籍を取って
までイーディスと結婚したいと考えている様だけど、シビルとブランソン
の結婚を許したロバートは、こんな形の結婚も許していくことになる
のか。取りあえずはクローリー邸に彼を紹介しに行くシーンがある
のでそれぞれのリアクションが楽しみかな。
■その他
・カーソンとグリッグの和解
この二人、”おちゃめな二人”(Cheerful Charlies)というコンビで
ヨークシャーのヴィクトリア劇場でコメディアンとして活動して
いた様だ。今回そんな時の思い出のチラシと写真が出てきた。
アリス・ニール(Alice Neal)という女性を巡り、アリスはグリッグを
選んで結婚したものの、結局この二人は上手くいかずに、彼女は別れ
た後に5年前病気で亡くなったという。その際グレッグに対してアリスは
「チャーリー・カーソンを選べば良かった。良い人だった。彼を
愛していた。でも自分の本心に気づけなかった」と残していたこと
を告げていたとして、伝えて欲しいと言われたという。
グリッグがイザベルの尽力でベルファストのオペラハウスの守衛と
して働くことが決まり、カーソンが11時の列車にやってくるか
どうかがラストで注目されたけど、蒸気機関車の霧の中から登場する
カーソンがまた格好よく見えるところが何とも言えないね。
・刑務所で多くを学んだベイツ
ベイツがモールズリーの為に小切手の署名を偽造していた感じがする
けど、今回はマシューの遺言の筆跡なんかも問題にされていたので、
ちょっと今後の展開で何かないか怖く写る。
またアンナも今回ターゲットにされたけれど、何故きっちりと解明
しなかったのかな。エドナが不敵に笑う姿が不気味。
・お茶とダンスの会
スコットランド出身のローズとしてはワンステップを披露したいと
して、使用人・小作人が集まるバーに行きたがった。アンナがダンス
好きだって知っているとして、彼女もまんざらでもないことを語って
いた。その後まさかローズのダンスパートナーをしたサムが
ダウントンアビーまで来るとは思わなかったけど、メイド姿で現れる
ローズの姿は可愛いかった。メイド喫茶が人気が出るのが分かる(笑)
・グエンの結婚
三女・シビルはかつてグエンが秘書になろうと希望を燃やしていた
頃に後押ししてなんとか転職させた経緯がある。タイプライター
なんかも買ったりしたけれど、そんなグエンが結婚していた。
・James Dome Black Lead
・わが家が一番
・ピーターバラで列車が止まったの。
■出演者
ロバート・クローリー (Hugh Bonneville) グランサム伯爵
シビル・クローリー (Jessica Brown Findlay) 三女
イーディス・クローリー (Laura Carmichael) 次女
メアリー・クローリー (Michelle Dockery) 長女
コーラ・クローリー (Elizabeth McGovern) 伯爵夫人
バイオレット・クローリー (Maggie Smith) ロバートの母
イザベル・クローリー (Penelope Wilton) マシューの母
チャールズ・カーソン (Jim Carter) 執事
ジョン・ベイツ (Brendan Coyle) 従者
アンナ・スミス・ベイツ (Joanne Froggatt) メイド
デイジー・メイソン (Sophie McShera) 料理人
トーマス・バロウ (Rob James-Collier) 副執事
Mrs.ヒューズ (Phyllis Logan) メイド長
Mrs.パットモア (Lesley Nicol) 料理長
ジョセフ・モールズリー (Kevin Doyle) 無職
ジミー・ケント (Ed Speleers) 新しい第二下僕、イケメン
アルフレッド・ニュージェント (Matt Milne) 下僕、オブライエンの甥
アイビー・スチュワート (Cara Theobold) キッチンメイド
トム・ブランソン (Allen Leech) シビルの元夫
LADYローズ・マクレア (Lily James) 18歳、スーザンの娘
エドナ・ブレイスウェイト (MyAnna Buring) 新人メイド
Dr.クラークソン (David Robb) 医者
チャールズ・グレッグ (Nicky Henson) カーソンの元芸人・相棒
マイケル・グレッグソン (Charles Edwards) ロンドンの雑誌の編集者
スプラット (Jeremy Swift) バイオレットの執事
— (Alex Carter) ウェイター
サム・ソウリー (Jonathan Howard) エリス卿の庭師、ローズと出会う
— (Nicky Bell) Tough Man at Dance
— (Stuart Matthews) Barman
アリス・ニール
オールド一家 () オークランド農場
レディ・ローソン
フェアクロー家
レディ・イングラム