第4話 ロンドンの一夜 Episode #4.4
監督/Catherine Morshead 脚本/Julian Fellowes
【前回までのあらすじ】
メアリーはダウントンの運命に乗り出す。屋敷では伯爵夫人主催の
パーティーが開かれる。アンソニー(トニー)・ギリンガム卿が
やってくる。メアリーにとっては幼なじみであり、彼は久しぶりに再会
したメアリーに好意を寄せる。イーディスは伯爵と恋人のグレッグソン
を仲介しようとするが、なかなか相手にされなかった。しかしポーカー
で負けが込んできた伯爵のことをグレッグソンが救うことでようやく
立派な者として認識される。パーティーになじめないトム。そんな
落ち込んだトムに酒を渡す侍女のエドナが近づく。パーティーで
盛り上がる使用人たち。アンナはギリンガム卿の従者のグリーンに
乱暴されてしまう。ヒューズに助けを求め、この件はベイツも含め
誰にも言わないで欲しいと頼む。もしも夫に言えば彼はグリーンを
殺してしまうからだという。
【ストーリー】
朝早くからダウントンにやってくるものが居た。
そんなアンナに対してベイツは何で先に家を出たのかと問い、私が何か
したのかと問う。仕事が有ったからだとしてアンナは誤魔化す。
使用人部屋でトーマスはアンナが顔に傷が多数あることに気がついて
どうしたのか尋ねると、荷物を運んでいて転んだのだという。
ヒューズもそんなアンナに相づちを入れてフォローする中、カーソンは
荷物運びが必要ならばアルフレッドやジミーに協力してもらいなさい
と語る。ジミーは舌打ちするが・・ベイツはヒューズの元に行くと夕べ
アンナが服を借りに来た際の様子を尋ねる。彼女は転んで唇を切った
と言っているがそれだけではないという。ヒューズはベイツに本当の
ことを話す事は出来なかった。
トーマスはなんだか辛気くさいことを口にすると、カーソンは常々
朝は静かに食事を取りたかったとしてちょうどいいという。
パーティーの客人たちはみんな帰宅する為に、ダウントンでは見送り。
カーソンはグリーンに忘れものはないかと尋ねると忘れられない滞在
になったという。グレッグソンはロバートにパーティーに招いてくれた
ことにお礼を言うと逆に感謝される。ヨービル公爵夫人はトムに対して
ようやく解放されてホッとしているのでしょと語る。悲しみは厄介
で私も夫を亡くした時に悲しみに暮れて何も手に付かなかったこと
を語る。立ち直ることが夫への裏切りだと感じていたが、それでも
前に進んだ事を告げあなたにも出来ると語る。ローズはジョンと
お別れ。あんまり外出できる立場ではない事を告げると、ジョンからは
古いしきたりに捕らわれることはないと言われる。メアリーはギリン
ガム卿に対して、久しぶりに会えて楽しかったことを語る。
また会えるかとするとお互い私たちは忙しいでしょというメアリー。
そんな中車は列車の時間に間に合うように出発する。
イザベラはクラークソンに会うと、彼は今から理事会を説得に行く
のだという。住民のために外来診療所が必要だという。イザベルにも
協力して欲しいと語る。人手が増えれば助かるのだとするとイザベラ
は考えておくという。
メアリーはトムやコーラ、ロバートが居る前で税務署員と会う約束
だったが水曜日の正午に延期されたとし、遅れるのは嫌だとして
明日ロンドンに行くという。ロバートは私抜きで行くのかとすると、
コーラは二人に任せれば良いと語る。あくまで土地を売ることは反対
なのかとすると、トムは納税さえ出来れば別の方法でも良いはず
だという。支払い期日や納付の方法について話し合った結果は報告
するとロバートに語る。その後みんなで話し合いをしようという
ロバート。ロバートは今後20年間は債務を背負うことになると
すると収益を上げれば良いのだというメアリー。借金を返し続ける
余生かと告げると、私たちはダウントンの所有者ではなく管理人だ
とメアリーは語る。ロザムンド叔母様の所に止まるのかというコーラ。
ローズはロンドンに行くのであれば私も行って良いかと語る。
コーラはメアリーに向こうに行ったらトニー(ギリンガム卿)に逢う
のかと問うとお節介は止してと語る。
エドナはトムの元に来ると夕べは逢いに来てくれると思ったのに・・
と語る。トムは面目がないことだがボクは酔っていたとし、過ちが
あったならば悪かったと語る。落ち込んでやけになっていたせいだ
として分かって欲しいという。冷たいのは自分を恥じているのねと
するとそれを否定しつつ、過ちがあったのならば謝罪するという。
お互いおろかだったのだというトム。そんな会話をトーマスは陰から
聞いていた。
厨房ではアルフレッドはアイビーに何を作っているのかと尋ねると
フイユテだという。アスパラガスを使ったパイだという。デイジー
はこれはオランデーズソースだという。気取ったメニューだなという
ジミー。アルフレッドはみんなが魚のフライとミートパイが好きな
訳じゃないと語る。アイビーはパットナムから初めて任された大役
なので失敗できないという。パットナムは簡単な仕事なので失敗したら
幼稚園からやり直しだと語る。
エドナはトムの部屋に入ってくる。
エドナはこんな仕打ちはあんまりだとし哀れな女を利用して捨てるな
んてと訴える。トムは謝っただろうとすると、彼女はもし妊娠していた
ら?と尋ねる。トムは馬鹿なことを言うなとしてそう簡単に妊娠する訳
じゃないと語ると、子供が出来たら結婚してくれるのか知りたいと
いう。あなたが逃げずに責任を取ってくれる人か知りたいという。
身分は関係ないはずで、あなただってシビル様と結婚出来たのだと
いう。彼女の名前を出すなというトム。赤ちゃんが出来たら結婚すると
言ってという。一緒になれば私はきっと良い妻になるとしあなたを
縛ったりしないという。決して後悔させないとすると、トムは既に
後悔の気持ちで一杯だと語る。
バイオレットはイザベルに逢うと音楽会は楽しかったかと尋ねる。
生でメルバを聞けて楽しかったという。パーティー全体はどうだった
かと尋ねられると、イザベルは質問の意味を察して、笑顔が戻った
メアリーを見て辛かったかということかと問うと、それは認めるが、
そんな感情を抱くのはよくないという。自分勝手に人を妬むのは
不道徳だとすると、バイオレットはみんなが聖人君子ならば教会の
仕事が無くなると語る。メアリーが大事だとし、彼女に孤独で不幸な
人生を送って欲しくはないという。それを聞いたバイオレットは
イザベルにまた世の中を愛せるようになれば良いわねと語る。
メアリーはアンナに対してロンドンではローズのお世話を頼めるか
と語る。マッジは連れて行かないと。しかしメアリーはアンナの口数が
少ないことに気がついていて大丈夫かと問う。アンナは他に用事がない
ならば・・として外に出て行ってしまう。
コーラはロザムンドに電話した事を告げ、向こうで夕食会があると
語る。トムは?と問うと勿論参加しても良いという。断る理由もない
としローズの為にサー・ジョンも招くし万全だという。魂胆は見え見え
だというロバートだが進展しそうなのかと問う。家族が不売るのは素敵
なことだとし、侍女のエドナにそうでしょと尋ねると、「こちらの
家族の一員になれる人は幸せです」と語る。
■感想
シビルに続いて、マシューの死、そしてダウントンの財政再建
など度重なる頭を痛ませる問題に対して、コーラ主催のパーティーが
3日間の日程で開かれた。喪に服して喜びの感情を封印していたもの
たちは音楽や踊りに興じて心を癒され、負の感情を解放して前に
進むべき英気を養っていく。
そういえばコーラのパーティーって何でロザムンド叔母さんは
呼ばれなかったのだろうか。真っ先に呼ばれるべき人ではないのかと。
ロザムンドの家がホテルみたいになっているというローズの言葉を
聞くと何処かぞんざいに扱われている感じ。
テーマとしては「嫉妬心」と「決断」が挙げられる。
嫉妬心を抱くのはやはり自分にはないものを相手が持っている為の
ものだろうけど、それぞれ似たような立場にいる人たちが同僚に抱く
可愛い嫉妬心もあれば、貧富の差による境遇の違いから発生する嫉妬心
も有る。
行動に対する責任と決断はその人のものだけど、イーディスの行動も
不安なものがあるし、ローズの天真爛漫さはいつでも不安なモノが有る
し、とにかく城の内外では色んな所に地雷が仕掛けてあるようで、
不安さに溢れている。
嫉妬心
「家政婦は見た」ばりに柱の陰で重要な会話内容を聞いているバロー
とかデイジー辺りが小狡いことを画策している感じは不気味にも
思えたし、メアリーが新たにギリンガム卿との関係を進める気になっ
たことに対して、バイオレットはイザベルの視線に気がついてフォロー
する流れがあったけど、イザベルは自分の感情だけでメアリーを縛る
のはエゴだということで、いい気はしないがメアリーには幸せになって
欲しいとして容認する発言をする姿が有り、最後はなんとギリンガム卿
と握手するまでに至った。バイオレットはかつてあれだけイザベルとの
間で水と油の様な関係で牽制し合い、庶民的感覚を持つイザベラのことを
バイオレットは散々皮肉を込めて発言していたのに、今回はそんな彼女
の態度に対して
「歯が浮くようなことを言うようだけれど、彼女の美徳は時に称賛
に値する」
と語っていた。
新たにイザベルはクラークソンと共に外来診療所を開いて何か行動
を起こしていきそうだけど、認められるのかな。
NHK海外ドラマスタッフのブログの1月8日付けの記事にも書かれている
けれど、バイオレットが引き合いに出すロイド・ジョージ首相のこと
が今回も引用され、
「ウチも無料で働いて欲しい」
「そんなのロイド・ジョージが認めないわ」
と語っていた。
またデイジーはジミーとアイビーが作業室に入っていくのを見て、
アルフレッドにその現実を見せつける為に画策し、後味の悪さを
感じることとなった。
陰謀の末
このドラマでは陰謀は大抵失敗に終わる。
今回チャレンジしたのはシーズン3の頃から、クローリー家の一員と
なるべくして近づいてきたエドナのトムに対する画策だった。
トムは前回の中で彼女から酒を渡されていたけれど、エドナと妊娠す
るようなことをしていたのだっけか?
今回はエドナが凄い勢いで迫ってきたので怖かったけれど、子供の
認知の問題と爵位有る人物との関係に関しては、シーズン3のエセルの
件で散々描かれたからね。既成事実を作った後に行為に及んで妊娠する
気なのか、既にこの城の侍女となった時には別の誰かと関係を持ち妊娠
していて、それを押しつける格好になるのかなと思って見て居たけれど、
問題の解決人・仲裁者役を果たしているヒューズさんに相談した結果、
達観した考えの下で巧みに女性心理を読んだヒューズの対応が、エドナ
の画策をはねのけた。
「将来の保障もないのに子供を作れると思う?」
そんな心理的裏付けとして「性の指南書、マリー・ストープスの
「結婚愛」」が彼女の持ち物の中に有ったというところもよく出来て
いたね。
「ウソを認めないなら医者の検査を受けてもらう。」
「力尽くで?」
「医者が来たらあなたの服をはぎ取ります」
ヒューズさんも本気を出すと怖い(笑)
ヒューズさんは本当に至るところで仲裁役を果たしているけど、この人
がダウントンの暴露本を書いたら凄い事になるんだろうね。
その印税で一気にダウントンの相続税の問題は解決じゃないか。
幸いロンドンの怪しい出版社の人(誰のことだ)も居ることですし・・
心に抱えるものたち
問題を抱えている人にとって相談できる人が居れば一番良いのだろうけ
ど、それでも容易に解決しない問題というのはあるものだ。
アンナの暴行のされた問題に関しては正直どう折り合いをつけていくの
かなかなか想像出来ずに居る。
ただ暴行された問題が明らかにされるのはそう時間はかからないと思う
のだけどね。
今回はベイツだけでなく色んな人がアンナの異変に気がついていたので
もう少し何とかならないのかと思う所も有ったし、皮肉にもアンナが
ギリンガム卿と逢うことになる度にクズのようなグリーンと逢わない
といけないのかと思うと今回は何度もギリンガム卿がメアリーの前に
現れるために怖い思いがした。
ただギリンガム卿はグリーンのことをあまり快く思っていないみたい
だったのでその辺は救われるところか。今後のグリーン追求への
流れになったとしても協力してくれるところがあるのかな。
結婚はタイミング
よく言われる言葉だけど、メアリーとギリンガム卿の再開からプロポーズ
へのスパンはあまりに早すぎるものがあった。
それでもメアリーとしてはあれだけ心が揺らぐというのは相当な好意
を秘めていた感じがするね。それでもやはりメアリーの心にはマシュー
の影がつきまとい、無理だという事を語っていた。
メアリーとギリンガム卿の陰に隠れているが、今回はカーソンのアリス
もまた結婚のタイミングを逃して一緒になれなかった人物として抽出
された。
カーソンは芸人時代の事を話すのを嫌がっていたけれど、ヒューズに
は話すようになったね。
「彼女とは同じ芸人仲間だった。向こうは姉妹でコンビを組んでいた。
「ヒバリとハト」という名前だった」「アリスの売りは歌よりも彼女
の持つ可愛らしさだった。可愛くて愛おしい」と。
彼女は亡くなる直前に私を選ぶべきだったとして後悔していたとするが
亡くなった今では意味がないと思っているカーソンに対して、ヒューズ
は
「その言葉に大いに意味がある。あなたは愛した女性に愛されていた。」
記憶、思い出、瞬間
ギリンガム卿はメイベルに恥をかかすのはフェアじゃないとかなんとか
偉そうなことを言っていたけれど、なんだかいい加減な感じにも
思える。
「一つだけ頼みがある。キスして欲しい。これ程愛せる人はもう居ない
からこの瞬間を記憶に刻みたい。」
メアリーの一連のエピソードの流れは色んな流れと連動しているけれど、
カーソンとアリスの流れと比較すると一番楽しいところだ。
アリスは選択を誤ってしまったことを認めて亡くなっていった。
カーソンに育てられたメアリーはまた似たようなことで悩んでいきそう
だ。
「ある決断をしたけれど長いこと後悔しそうだ」と。
その直前のシーンでカーソンがまた
「人生とは言わば思い出の積み重ね。最後に残るのも思い出だ」
と語るだけに、ギリンガム卿の”この瞬間を記憶に刻みたい”というセリフ
も活きていた感じがするね。
ヒューズとカーソン
この二人、とても良い関係なんだよね。
カーソンがアリスのことをヒューズに語る中で、「あの時の情熱は何処
に行った?と言いたいのだろう」としていたけれど、この二人は
ある意味ではダウントンのパパとママみたいだ。
NHKでは出演者インタビューがないけど、スターチャンネルで見て居る
と、出演者インタビューなどが有り、このエピソード後のインタビュー
でカーソン役のJim Carterはヒューズと結ばれて欲しいみたいなことを
言っていたな。
ダウントンの色んな顔
なんだかみんな今回の状況とかセリフを見るとダウントンに帰ること
自体、気が滅入るとばかりの息苦しさを感じた。
しかしダウントンが見せる美しい光景は癒されるものがあり、
メアリーとギリンガム卿がキスしたシーンもそうだし、パーティー
から見送る際の映像も良かったし、冒頭でまだ日が昇らない中を
ダウントンの中に入っていくアンナの光景などどれもキレイだった。
イギリス文化
ポップカルチャーは何と言ってもイギリスは群を抜いたすばらしさが
あると思う。ロンドンで黒人のジャック・ロスが歌う光景の中、
ダンスに興じるものたち。
今回はロンドンのリッツホテルに料理学校が出来るとし、エスコフィ
エ氏の功績を称えて設立されたようなことが語られていた。
イギリスというと料理が不味いとよく耳にするけど、こういう料理学校
が出来ることで庶民の口に合うような料理文化は上手く根付かなかった
のだろうか?
イーディスとロザムンド
最後にちょっとした小競り合いがあったけど、寧ろ気になるのは
イーディスに対してマイケルが何か書類にサインをさせていたことだ
よな。大事に至らなければ良いんだけど・・・こういうのをサイン
する時には、伯爵の弁護士がロンドンにいるので一度目を通して
もらえばいいのにね。イーディスは執筆もしているので聡明な感じ
がするのだけど、恋で盲目になっていなければ良いけどね。
■使用された曲
・April Showers by Gary Carr
・Downton Abbey – The Suite by The Chamber Orchestra of London
■出演者
ロバート・クローリー (Hugh Bonneville) グランサム伯爵
シビル・クローリー (Jessica Brown Findlay) 三女
イーディス・クローリー (Laura Carmichael) 次女
メアリー・クローリー (Michelle Dockery) 長女
コーラ・クローリー (Elizabeth McGovern) 伯爵夫人
バイオレット・クローリー (Maggie Smith) ロバートの母
イザベル・クローリー (Penelope Wilton) マシューの母
チャールズ・カーソン (Jim Carter) 執事
ジョン・ベイツ (Brendan Coyle) 従者
アンナ・スミス・ベイツ (Joanne Froggatt) メイド
デイジー・メイソン (Sophie McShera) 料理人
トーマス・バロウ (Rob James-Collier) 副執事
Mrs.ヒューズ (Phyllis Logan) メイド長
Mrs.パットモア (Lesley Nicol) 料理長
ジョセフ・モールズリー (Kevin Doyle) 無職
ジミー・ケント (Ed Speleers) 新しい第二下僕、イケメン
アルフレッド・ニュージェント (Matt Milne) 下僕、オブライエンの甥
アイビー・スチュワート (Cara Theobold) キッチンメイド
トム・ブランソン (Allen Leech) シビルの元夫
LADYローズ・マクレア (Lily James) 18歳、スーザンの娘
エドナ・ブレイスウェイト (MyAnna Buring) 新人メイド
Dr.クラークソン (David Robb) 医者
アンソニー・ギリンガム (Tom Cullen) ギリンガム卿
グリーン (Nigel Harman) アンソニーの従者
Sirジョン・ブロック (Andrew Alexander) 招待客
マイケル・グレッグソン (Charles Edwards) ロンドンの雑誌の編集者
ヨービル公爵夫人 (Joanna David) “閣下”
テレンス・サンプソン (Patrick Kennedy) 詐欺師
LADYロザムンド・ペインズウィック (Samantha Bond) 叔母
ジャック・ロス (Gary Carr) 黒人歌手
— (Hugh O’Brien) 紳士
— (Deborah Wise) Rally Attendee