第5話 ことの真相 Episode #4.5
監督/Philip John 脚本/Julian Fellowes
【前回までのあらすじ】
ダウントンの運営に乗り出したメアリー。支払期日、納品の方法を
相談にいくという。相続税のことでロンドンに出かけたメアリーは
ギリンガム卿と再会。一方イーディスと結婚するためにドイツ国籍
を取ることを決意したグレッグソン。一週間後に出発するという
ことでイーディスは彼と一夜を共にする。それを知ったロザムンド
からは名と評判がかかっているのだとして怒られる。
エドナはトムに対して赤ちゃんが出来たら結婚してくれるかと
問う。過去の過ちでエドナの罠にハマったがヒューズに助けられる。
乱暴を受けたアンナはベイツを避けるようになる。突然プロポーズ
をされたメアリーは困惑するが、やっぱりマシューのことが忘れ
られないとして断るが、キスして最後の思い出とする。
【ストーリー】
ベイツは自宅から一人で城へ通勤する。アンナは城の使用人部屋で
朝を迎えていた。顔のアザの出来た場所をメイクで隠す中、
アンナが部屋から出て階段から下りてくるのを毎朝のようにベイツ
は待っていた。どうして待っているのかというアンナに、君に一番に
毎日挨拶をしたいのだという。オレは原因を説明してくれるまで待つ
という。完璧な人生がある日突然崩れてしまったこと。説明無しでは
納得できないという。
トーマスの紹介でエドナの代わりにやってきた侍女のバクスター。
ミシンを使いたいがソケットがないとして使用人部屋で
使っても良いかとアンナに許可を求める。あのトーマスと親しい
なんて変ではないかというベイツに対してアンナは「よく言うでしょ、
人間は不可解な生き物だ」と。
パットナムは本当にアルフレッドに料理を教えて良いのかとデイジー
と語る。ヒューズはその件をカーソンに尋ねる。料理学校の試験に
備えて特訓しても良いかとすると、受験の許可はまだ来ていないが今
から練習がしたいという。本人がその道に進みたいというのであれば
問題は無いとしてパットナムも手伝って良いと許可する。
Merciaのベルが鳴る。
侍女バクスターはコーラの元に朝食を運ぶ。いつもとは違いアメリカ
では朝食の時にオレンジジュースを飲むのでアメリカ出身の奥様は
好きかと思ったとしてベッドに持ってくる。
ロバートがやってくると、コーラに対して彼女は合格かと尋ねる。
あとでトムとメアリーから書斎に呼ばれたとし、何か考えがあるらしい
ことを語る。
イザベルはクラークソンと共に若者の働き口について話し合う。
ペグ夫人が気にしているのはお茶や同情よりも息子・ジョン・ペグ
の就職だという。伯爵の屋敷の庭師とか庭造りに熱心な先代の伯爵夫人
の所で雇ってもらえないかとイザベルに相談する。
トムとメアリーはロバートに対して明日葬儀があるという。先祖の代
から付き合いのある小作人だった。メアリーは地代を払ってないとし
て然るべき対処をするという。土地を貸すのを辞めて自営農業をする
のか?と問うロバート。代々あの一家に任せていた土地だとするが
メアリーは世の中は前進していると語る。
そんな中メアリーにこの記事を読んだのかとしてロバートは新聞を
渡す。そこには
「グリンガム子爵と故オズウェストン卿の一人娘・メイベル・レイン・
フォックス嬢がめでたくご婚約」
と書かれていた。メアリーは祝福の手紙を書かないといけないわねと
淡々と語るが、その裏でショックを受ける。
デイジーはバクスターが使用人部屋でミシンを使うのを見て居た。
ミシンって電気でしょとし勝手に動き出して指を机に縫い付けられそう
で怖くないのかと問う。どうやって操作しているのかと問われ
ペダルだという。パットナムはあまりの恐怖に何もこんなところやる
ことはないとし、捨ててしまえば良いと語る。トーマスはバクスター
に対してパットナムは古い人間だと語る。
アンナがそんなみんなが居る中にやってくるが、ベイツが居るのを
知り避けて行ってしまう。
ヒューズはそんなアンナを追いかけると、どうしてあんな風に彼に
冷たく当たるのかと告げる。妊娠してないのは分かったのだから事件を
乗り越える為にも彼と話したらどうかという。真実を話すのは
難しく、嘘をついても彼は見抜いてしまうという。ベイツがあなた
を絶望の淵から救ってくれたら良いのにねとし、全てを打ち明けたく
ないのかと問う。そうしたいが本当のことを知れば夫は黙って居ない
とし、彼の人生を守りたいのだという。隠すのは間違いだという
ヒューズ。そんな会話をベイツは物陰から聞いてしまう。
ジョン・ペグはイザベルの元にやってくる。
庭仕事は出来るとし、知識は無いが働きながら覚えるという。
イザベルはクラークソンに対して伯爵夫妻はよくしてくれるけど私は
決して家族の一員ではないと語る。クラークソンは伯爵はあなたを
尊敬しているし「愛されていないとすねている内は何を言っても無駄
でしょう」と語る。随分冷たい言い方だとイザベルは語る。
ティム・ドリューの父親の葬式。
ロバートはティムに対して良い葬儀だった事を語る。父の農場に
現在泊まっているというティムに対して明け渡す準備が出来たら
知らせてくれという。するとティムは出来れば父の跡を継ぎたい
事を語る。明け渡しは決まっていると言うが土地を取り上げて自営農場
にするのかと問われる。私を冷酷と思わないで欲しいというロバート
は言いたくないがお父さんは長い間猶予を与えてきたのだという。地代
滞納は父から聞いていないというティムは代々ユーツリー農場で
小作をしてきたこと。信頼関係があるハズだとしチャンスが欲しいと
頼む。また明日もう一度話し合おうとし何も約束は出来ないと語る。
■感想
時代は確実に文明開化の転換期を迎えて、次々とダウントンには
文明の利器である電気を使った機器が使用され始める。
これまでにも「電灯」「電話」「タイプライター」などがその象徴
として挙げられていたけど、「泡立て器」「冷蔵庫」「ミシン」
などの電化製品が入って来たことで、閉鎖的な城でも一気に
文明の恩恵を受けることになる。
保守的な人も多い中で、そんな道具を導入することや、それを
使うものを見る人たちの視線やリアクションがそれぞれに楽しい
流れとして存在していたりするね。
明日がどうなるのか誰にも分からない中で、未来に向けて
新たな道を模索するものも現れ、新しい世界に可能性を見いだす。
昔ながらの規律や考えを尊重するものたちの間で、意見は割れる。
なんとか時代に取り残されない為に行動を起こすが、未来が持てず
にいるものたちは、自らの道を歩もうとしているものに対して
足を引っ張ろうとする。
色々とそれぞれのエピソードが散見するので一概には言えないけれど、
「故郷」とか「居場所」という事を意識させるようなキーワードが
エピソードの中に込められている感じは受ける。
新しい世界へと進むものにとってはその故郷から離れて行かねば
ならない寂しさは当然存在するだろうし、嫌でもそこから出て行かねば
ならないとする状況にまで追い込まれているものも居る。
窮地に陥るものに対して助けの手が及べば良いのだろうけど、
助ける側にもそう余裕がない場合にはただただもどかしさしか感じ
ない。
■決断
色々な決断に迫られるシーンがある。
・アルフレッドが料理学校の入学試験を受ける決断。
・アルフレッドに料理を教える事に関連し、別れの後押しするのでは
ないかとするデイジーに心情。
・クローリー家と小作人の関係性。貸借関係を続けるべきか自営に
切り替えるか。
・ヴァイオレット邸にイザベルの後押しでやってくるジョン・ペグの
信頼性。
・アンナの件でのベイツの退職を巡るやりとり。
・下僕待遇でのモールズリーへのダウントンでの仕事への誘い
色々と遠くの事件・事象・出来事を知らせるツールが揃ってきて、
電話、新聞、手紙などが使われる中、利点を享受出来るであろうハズ
のツールが逆に欠点であるかのようにして使われてしまうことが
有るね。この時代ならばラジオが有るはずだけど、ラジオで情報を
得ようとする人は居ないのかな。
そして今回はそれとは対照的に古くからの人間関係の繋がりこそ
最大の宝だという名目の下、助け合いの精神が働き、
「自分の後光がまぶしくなるときはないのか?」と言われたイザベル
が助けたジョン・ペグの件や、クローリー邸と繋がりのあるティムとの
関係に於いて、それが利点として働いていくのか不透明な点。
人間関係も金が絡むとたちまち乱れることが有るし、目標を持てずに
いるジミーがアルフレッドの未来に対して邪魔しているのではないか
とする便りの操作の流れや、ジョン・ペグが今の仕事から首になる
ようにして高価なペーパーナイフが盗まれるという流れが存在する。
ジョンの流れは懐かしいことけどベイツが城で就職するとした際に、
トーマスがダンナのものを盗んでその罪をベイツになすりつけよう
として牽制した流れを思い出すね。
モールズリーとカーソンのやりとりは面白かったね。
「検討します」(Moles)
「お返事心からお待ちしております」(Carson)
「熟慮を重ねた結果申し出を受ける」(Moles)
「残念だが私が話した時にその場で決断していれば採用していたものを、
チャンスを逃したのだ」(Carson)
人に愛されているかどうか
・イザベルはグランサム家から愛されていないとする言葉を吐露。
・イーディスはマイケルとの関係が不安になる中、妊娠騒ぎ
・メアリーの相手、グランサム卿の婚約の知らせ
・ベイツのアンナへの気持ち
・ブランソンはアメリカでの活路を見いだすか悩む。
中でもやはりベイツの状況が一番怖い。
ヒューズは自らの信条・信念をねじ曲げてもウソをついた訳だけど、
ベイツはまるで「人のウソを見抜けるエマ・スワンさん」(c)Once
Upon a Time の如く、ぐいぐいと真実・真相に向けて行動を起こして
いく。幸せは時として脆く崩れるものだと言わんばかりの状況でも
有るし、幸せかどうかはその人の気持ち次第だという展開はアンナの
今回のリアクションを見ればある程度納得がいくところも有った。
イザベルとブランソンの疎外感もハンパなものではないけれど、
他の物に比べれば相当贅沢な悩みとして存在していることが伺える。
今回は土地を巡る争いの構図の中で、トムが社会主義的思想を以て
ロバート寄りの発言をしたことで面白いやりとりが有ったけど、
「ボクは気づかされた。この屋敷に自分の居場所はない。ボクは
変わってしまったのでアイルランドに帰ってもなじめない。ボクにはもう
家も祖国もない。」
そんな意見に同調したのがイザベルだったというところもよく出来た
ところ。ディナーの席ではヴァイオレットはイザベルがトムに
同調したことで、
「流石反逆者の味方ね」
「この人押しが強い、戦争だってもっと手加減する」
と散々言われていたけど(笑)
ただイザベルはともかくブランソンの場合、「運転手の娘」でいる
よりもアメリカでのびのび育つ方がシビーの為というのは分かる気が
する。ただトムが居なくなると流石にメアリーだけでの運営は
難しい。そうなるとネイピアのような人物が今回出てきたことは
頼もしい面も有るのだけど、この人が語っていたことは本当のことな
のか怪しい。地域経済についての調査だとしていたし、調査対象が
誰の土地なのかと問われた際に、不公平なのでそれは言えないと
としつつも
「深刻な問題を抱えた領地の中にダウントンは入っていない」
としたけれど、この辺りでの調査ならばダウントンは当然その調査の
対象の最先端ではないのかな。
新たなキャラクター
新たなキャラクターとしてダウントンの城にトーマスの推薦でやって
来たバクスター。
彼女はトーマスに誘われる形でやってきたけれど、悪い人物には
見えないし、今のところトーマスがこの関係に主導権を握っている
ように見えるが、そう簡単に操れるのかと言った感じ。
トーマスとしては単純に激動の時代に情報戦に勝ち抜くために彼女
に上層部の事情を知らせて欲しいとするスパイ役を頼んだ。
元々は侍女だったオブライエンが情報を流していたけど、確かに
シーズン1と2の頃は、オブライエン&トーマスだったものね。
■使用された曲
・Downton Abbey – The Suite by The Chamber Orchestra of London
■出演者
ロバート・クローリー (Hugh Bonneville) グランサム伯爵
シビル・クローリー (Jessica Brown Findlay) 三女
イーディス・クローリー (Laura Carmichael) 次女
メアリー・クローリー (Michelle Dockery) 長女
コーラ・クローリー (Elizabeth McGovern) 伯爵夫人
バイオレット・クローリー (Maggie Smith) ロバートの母
イザベル・クローリー (Penelope Wilton) マシューの母
チャールズ・カーソン (Jim Carter) 執事
ジョン・ベイツ (Brendan Coyle) 従者
アンナ・スミス・ベイツ (Joanne Froggatt) メイド
デイジー・メイソン (Sophie McShera) 料理人
トーマス・バロウ (Rob James-Collier) 副執事
Mrs.ヒューズ (Phyllis Logan) メイド長
Mrs.パットモア (Lesley Nicol) 料理長
ジョセフ・モールズリー (Kevin Doyle) 無職
ジミー・ケント (Ed Speleers) 新しい第二下僕、イケメン
アルフレッド・ニュージェント (Matt Milne) 下僕、オブライエンの甥
アイビー・スチュワート (Cara Theobold) キッチンメイド
トム・ブランソン (Allen Leech) シビルの元夫
LADYローズ・マクレア (Lily James) 18歳、スーザンの娘
Dr.クラークソン (David Robb) 医者
バクスター (Raquel Cassidy) エドナの代わりの侍女
ジョン・ペグ (Joncie Elmore) 庭師見習いとしてヴァイオレット邸で
ティム・ドリュー (Andrew Scarborough) ユーツリー農場の小作人
アルセーヌ・アビニョン (Yves Aubert) リッツの副料理長
— (Kieran Hodgson) First Student
— (Spencer Cowan) Second Student
イヴリン・ネイピア (Brendan Patricks) 政府の土地調査の仕事
— (Deborah Wise) Rally Attendee
バイロン
Dr.T.ゴールドマン () ロンドンの産科医
チャールズ・ブレイク () ネイピアの上司
ジョージ
シビー