第16話 湖に沈んだ希望 The Source in the Sludge
脚本/Jonathan Collier
監督/Ian Toynton
【ストーリー】
ピートとカイルは明日の釣り大会の為に、ズルして魚を予め
仕込むために深夜の湖に来ていた。仕込むなんてマズイだろうという
が優勝が目標だとし、魚に鉛を入れるヤツだっているのだという。
オレはモラルのことを言っているのだというが・・そんな中湖の中
にダッフルバックが浮いていることに気がつく。俺たちと同じ事を
考えている奴らが居るのか。ピートは中身を確認。カイルは何が
入っていたのかとすると、白骨化した遺体が入っていた。
ブース&ブレナンは朝食で店にいた。
ブースが3杯目のコーヒーを飲んだのを見たブレナンはあなたは私
よりも早く死ぬ理由が増えたわという。あなたは発がん性の高い飲み物
を好み、脳腫瘍歴が有り私よりも年上で男性だとし、保険会社は
間違っているという。私の方が長生きするのにあなたよりも生命保険料
が高いという。私の方があなたより現場に出た時、危険という間違った
判断もしたのだという。ブースはオレは危険に対処する訓練を受けた
からだとし、君はラボのエースだろうというと、私は銃も撃てるし
武術だって出来るという。一度オレを撃っただろうとすると、あれは
跳ね返っただけだという。あなたも私が不利と思っているのねという
ブレナンにこれ以上の会話は辞めておくという。ちょうど事件を知らせ
る電話が鳴る。しかしブレナンは食い下がると、オレは保険会社の代表
でもなければオレが悪い訳ではないだろうと語る。私はあなたの命
を助けたのよと。
現場の湖へ。
カムは水中の腐乱組織から判断して4日間前からバッグの中に入って
いるという。ホッジンズは中に正確な時間が分かる何かが有るハズ
だという。ブレナンは眼窩上縁は鋭く眉間が隆起していないところ
から見て被害者は女性だという。そんな会話を見て居てブースは
君の武器は骨と賢い頭脳であり、オレの武器は銃だけだという。
ブレナンはお世辞は辞めてというと、会話の内容をカムやホッジンズ
に語る。保険会社は私の方がブースよりも現場では危険が大きいと
言っているのだという。みんなを巻き込むなというブース。ホッジンズは
統計だよとし、ブースの方が現場経験が豊富だという。
ブレナンは骨に損傷があるとし洗浄しないと死因の特定は無理だと
いう。遺体を隠すにはバッグに重りを入れるハズ。釣り大会があるハズ
だったし・・しかし遺体を発見させたいならば別だという。
そんな中バッグを運ぼうとすると中からナツメウナギが出てくる。
ホッジンズはブースに証拠なので絶対に逃がすなと語る。ブレナンは
手伝いたいけど私は現場向きではないのでしょと皮肉る。
ラボ。
頭蓋骨の縫合の骨化がほぼ完了しているところからみて被害者は20代
後半の女性、損傷が少ないのでアンジェラも複顔出来るでしょう
というカム。デイジーは被害者は白人だとすると、ブレナンは本当
にそうかと語る。デイジーは人種の特定は基本だとし何か見過ごした
のかと問う。ブレナンは梨状口の下縁が鋭い事と前鼻棘の角度から
判断するとこの被害者は白人ってことよという。カムはデイジーも
そう言っていたでしょうと怪訝な顔を見せる。しかし問題は突出した
頬骨と両眼窩の間隔が広いところがあるとすると、アジア人か?という
デイジー。他民族が行き交う土地の出身だから一つの人種じゃないとし
北アジアとコーカサスを繋ぐ古代の交易路に沿った地域の何処かだ
という。デイジーは口述試験の勉強で疲れていたことを語る。
被害者は”スタン”がつく地域の出身だろうとし、ワジリスタンとか
アフガニスタンだという。ブレナンはそうねと語る。カムは皮膚が
ズタズタだというとナツメウナギが食べたのねと語る。
ブースとスイーツ。
ブースはスイーツにどうすれば良いんだと語りブレナンは怒り心頭だ
という。スイーツは博士(ブレナン)はやろうと思えば自分で何でも
出来ると思っているのに自分で思う程特別じゃないと評価されたから
だろうと。
現場から見て犯人は性犯罪者ではないとし大抵その手の犯人は
印を残したがるからだという。ウナギは印ではないかと問うと
確かに男根の象徴だが型に当てはまらないという。確実にメッセージ
を送ろうとしているという。
デイジーとブレナン。
デイジーは被害者の骨格全体の一次検査をしたことを語る。左上腕骨
に骨修復が有ったという。X線はと問うブレナンに、画像を見せつつ
2年前に重度の骨折が有ったようだと語るとブレナンは3年前だと語る。
固定する為にビスが挿入されているのに気がついたのかとし、上腕骨
を調べようという。するとそこにはビスの製造番号が入っていた。
これを伝えればアンジェラは被害者を特定してくれるハズなので渡す様
告げる。あなたは何か別の事を考えているのかとデイジーに告げると
デイジーは何も考えられない感じだと語る。
ホッジンズは3億6千年前から進化していない生物だとしてナツメウナギ
のことをカムに説明する。カムは連邦議会に立候補出来そうねと語る。
遺体を食べたのだからウナギは有益な証拠を摂取しているハズなので
「作る」のを待っているという。マイケルには排泄のことをそう話して
いるのだという。人間と違ってこいつの消化管は口から肛門まで一直線
だという。カムは切開して今すぐ取り出せるのでは?というが、3億6千
年前からの生物に敬意を示すべきだと語る。すると今作っていると語る
とカムはそそくさのその場から立ち去っていく。
アンジェラは遺体はサリー・ナゼリ(28歳)だとカムに語る。
ブレナンが被害者の上腕骨から発見したピンはアフガニスタンに送られ
た医療物資の中に含まれていたもので、アフガニスタン出身だという。
一年前に兄のアジーズとアメリカに移住していること。サリーは
教員助手をして兄は造園や大工の仕事をしている事を告げると、
カムは政治亡命ねと語る。
■今回の事件と流れ
・被害者のサリー・ナゼリは政治亡命したアフガニスタンの女性で
兄妹で故郷を捨てアメリカに渡ってきたこと。亡命に際してテロリスト
の情報を提供していた。
・サリーはビデオに撮影していて、アメリカに来た事で、これまでの
長い闇に覆われた世界に光をもたらすことになったことか。自由につい
て話せること。それが実現できるならばどんな犠牲も厭わないことを
語っていた。
・ナゼリ家にいくと兄のアジーズは妹の居場所を知りたがっていた。
するとその部屋にはCIA捜査官でブースも顔なじみのダニー・ベック
捜査官が警護していた。
・殺されたことを話すと兄はサリーを殺したのはイブラヒム・サジャ
ーディだろうとし、アルカイダに爆弾を作っていた男だという。
ガズニーにいるのが分かっていたがそれ以上の情報が分からず、
当時同じ村出身のサリーにベックが工作員として働いてもらい、
イブラヒムのアジトに爆撃用の発信器を付けてもらって爆撃機で
殺害していた。
・サリーの上腕骨の傷はその当時のもの。
・アフガニスタン時代、イブラヒムは収監されていた事が有り、
当時の陸軍デレク・ヨハネセン伍長が看守の際に脱獄が有ったこと
が判明していく。
■感想
ここの所、個人的に「ホームランド」S4を見て居るので、アフガニス
タン関連のネタが出てくると、類似しているところを見つけようと
してしまう。
アフガニスタン人のアジーズとブレナンが最初に会話する時には
ブレナンは彼とパシュトー語で語り合う姿が有る。「ホームランド」
などでも、トルコのイスタンブール、アフガニスタンのカブールのCIA
支部を中心とした流れが有るのだけど、そこで使われる原語は、
パシュトー語とアラブ語とウルドゥー語が使われていて、色々と
侵入出来ない地域への攻撃には、協力者の存在と無人爆撃機の存在は
欠かせないものがある。
ネタとしては、国内の捜査を担当するFBIと国際的な捜査を担当して
いるCIAの管轄権の違いが描かれたり、国内の司法と軍事法廷の
違いなどを通して、司法取引する相手に報いを受けさせるという
流れを通して、色々とアメリカの複雑な権利と主張を垣間見た感じ
のエピソードだった。
■尻に敷かれるブース
今回のドラマ、ブレナンが主張する生命保険の掛け金を巡る問題は
あまりにくだらなすぎて無理矢理問題を作った感じがして安っぽいなと
いう思いしかしなかったのだけど、スイーツが語るように
「ブレナンはやろうと思えば自分では何でも出来ると思っている。
それなのに自分で思う程特別じゃないと評価された」
事に対して拘りを見せていた様だ。
現場に於けるリスクに関しては、難しいものがある。
ブースは一線で活躍している捜査官なので例えブレナンと相棒だとして
も、最前線の現場にいく可能性が高いのはブースで有り、殺される確率
でいけばブースの方が遙かに高い。ブレナンとブースが全く同じような
行動をしていれば、確実にブレナンの方が死亡する確率は高いとは
思うんだけどね。
■ドラマとしてのテーマ
生命保険ネタを通してブレナンが投げかけた不公平な社会への反発心。
口述試験に於ける存在の意義は教授が優越感に浸りたいだけで無意味
で時代遅れの伝統だということで、自然と彼女の言動からテーマも
浮かび上がってきたのではないか。
ドラマでは抑圧されているイスラムの国から来た兄妹の思惑の違い
が描かれることになった。
アジーズはアメリカに来たけれど、国では英雄のようにして扱われて
いたのにアメリカでは金持ちの家の造園の仕事をしてまるで感謝され
ないことに不満を持ち、またアフガニスタンに戻ろうとしていた。
一方のサリーはイスラムの教えから、女性はまるで人権などなく、
自由に発言できない世界から自由社会のアメリカに来たことに
喜びを唱え、色々とメッセージを残していた。
そんなアメリカの中でも言えることだけど、男尊女卑の構図の中に
女性の社会的地位を築くことで男性は自分たちの役割や権利を脅かさ
れるものではないかとして依然として男女平等の構図は成り立っては
いない。
「無知が好奇心に打ち勝つことが出来ないのは明白。憎悪や抑圧で
人の心は支配出来ない。思いやりや愛に導かれ私たちは自由という
恩恵を得る。」
ブレナンが現場に於けるリスク管理に関してブースと張り合っていた
けれど、やはり出来る事と出来ないことが有り、男性と女性との間
でも似たようなところが有るのではないかなという気はする。
男女の差別と区別というのは違うのでその辺は間違えずに尊重して
行きたいところだ。
■平常心のホッジンズ、右往左往するデイジー
前回精神疾患を持つ兄が登場し、それ以前には全財産を失いつつも
まるでいつもの通り振る舞うホッジンズの姿。例え陰謀論者で有って
変わり者だけど、普段は本当に知的で彼の拘りは凄いところがある。
3億6千万年経過しても変わらない生態を持つナツメウナギに癒しを
求めるホッジンズに対してアンジェラが理解を示していく光景が
有った。
一方デイジーは口述試験の場で思わず、目眩で真っ白になり気絶しそう
になり思うように話せなかったことで博士号の不合格になった
ことを語る。スイーツを呼び出して、「私はオチこぼれで嘘つきだ」
としていたけれど、スイーツは誰でも躓くことがあるとし、試験の場
でそうなったのは過度のストレスによる血管迷走神経反射で珍しく
はないとし、事実を受け入れてまた挑戦すれば良いことを語る。
しかしデイジーは余程スイーツが好きなのか、セックスのこともやたら
ネタに入れて話していたな。
■事件捜査
今回はなかなか死因が見つからないという珍しい状況だった。
致命傷になった傷というのが骨からはなかなか見つからず、ブレナン
もデイジーもカムも困惑。
・ダッフルバックに蛇を入れて公共の場に遺棄するのはイブラヒムの
手口。ヘビは汚れた生き物だとされ、被害者を侮蔑する為に入れる。
・フンの中から繊維が見つかり、それがより糸・ジョートだという。
またイポメアプルプレア(アサガオ)の花粉が付着していたことから
造園業の兄が疑われる。
しかし仲が良かったし、新しい生活に慣れるのは大変なので協力し
ていたことを訴えられる。
・ジャマール・アフマドとアジーズに繋がりが有り、帰国しようとして
いたことを知ってサリーを殺すことで忠誠を誓うことを示したのでは
ないかと疑う。
・ベックの不自然な言動はサリーと恋仲にあった為のもの。
・デイジーが口述試験に落ちたことをブレナンに話すと自分も落ちた
として、委員会に私を評価できるほどの能力がないと思ったので
そのことをハッキリと伝えたら落ちたという。
・デイジーが第三肋骨の内側にV字型の切り傷があることを発見。
「骨に触れろ」というブレナンの教え。その傷から高炭素の440B鋼
と鞘の部分に使われている樹脂を検出。高性能戦闘用のナイフに
だけ使われるもので、エルパソのヒギンソン社製のもの・特殊部隊用
だと判明。
・犯人はベックかに思われたが護身用にサリーに渡していたことを
告げ、二人が愛し合っていたことを語る。
・サリーが亡くなったのはカムが眼球を潰した結果硝子体液の中の
カリウムを検出し、死ぬまで放置されたことによる脱水が死因と特定。
・サリーが犯人を凄い力で噛んだこと。皮膚の粒子を吸い込んでいて、
それが北欧人のものだと判明。該当するのは看守をしていたという
デレクが犯人だった。
■使用された曲
・Lift Me Up by Mree
■出演者
テンペランス・ブレナン (Emily Deschanel) “ボーンズ”、法人類学者
シーリー・ブース (David Boreanaz) FBI捜査官
アンジェラ・モンテネグロ (Michaela Conlin) 骨格から似顔絵
ジャック・ホッジンズ (T.J. Thyne) 知識が豊富、実家が金持ち
カミール・サローヤン (Tamara Taylor) スミソニアン責任者、”カム”
ランス・スイーツ (John Francis Daley) FBIの心理学博士
キャロリン・ジュリアン (Patricia Belcher) 検事補
デイジー・ウィック (Carla Gallo) 研究員
デレク・ヨハネセン (Chris Browning) 元陸軍、刑務所看守
アジズ・ナゼリ (Homie Doroodian) 兄、アフガニスタンから亡命
サリー・ナゼリ (Nazneen Contractor) 妹、亡命、工作員
カイル・スタンリー (Chris Coppola) 魚釣り大会不正
ピーター・ディネーン (Patrick Renna) 魚釣り大会不正
ダニー・ベック (Freddie Prinze Jr.) CIA
— (Maria Jordan) FBI Agent