第8話 母への想(おも)い The Sins of the Father
脚本/Howard Overman
監督/Metin Huseyin
【ストーリー】
水晶を見る魔法使いのモルゴース。
アーサー・ペンドラゴン・・大いなる定めが待っているとし戦いが
始まると呟く。
キャメロットではバイオア卿、カルドラ卿を含め5人が王様たちの
前で騎士としての栄誉を授かる。ウーサーは彼らに騎士には栄誉
が与えられる分、責任が伴う事を語る。騎士の掟に値する生き方を
しなければならないこと。日々の行動には厳しく、名誉と尊厳を
保ち、誓いの重さを知るのだという。アーサーが騎士の見本だとして
ウーサーは誇らしく語る。
そんな中甲冑を着た騎士が次々とキャメロットの衛兵たちを倒して
ついにはウーサーや騎士達が集まる広間へとやってくる。すると
突然小手を外すと、それは騎士道では挑戦を意味していた。
アーサーは挑戦は受けるというが、闘うならば面をさらして名前を
名乗れと語る。兜を外した素顔はなんとブロンドの女性で我が名は
モルゴースだという。
300年前まで遡り記録を調べたが女性が決闘をしてはならないという決
まりはないというガイアス。なんとか止める手は無いのかとすると
騎士道の掟では彼女の挑戦は有効だという。女性のことを知らないし
軽々しく相手をさせられないというウーサー。アーサーは受けると言っ
た以上、逃げれば卑怯者だという。しかし4人の衛兵が殺されたとし
女性を甘く見てはいかんという。しかしアーサーは自ら掟を破っては
部下に示しが付かないと語り、明日闘うと告げる。
モーガンはアーサーに何故あなたにあの女性は勝負を挑むのかと尋ねる。
オレは王の息子であり倒せば名を上げられるからだろうと。戦いたく
ないんでしょというマーリン。だが逃げれば卑怯だと思われ、女を殺せ
ば・・・というアーサー。マーリンは躊躇えば向こうが有利になること
を語る。剣の腕はなかなかなので注意した方が良いという。
アーサーはモルゴースに伝言を伝えて欲しいとし、説得して挑戦を
辞めさせるのだと語る。
マーリンはモルゴースの部屋に行くと、突然剣を突き立てられ、何の
用事かと尋ねられる。王子からの伝言だとし、戦いを撤回して欲しい
とのこと。今なら安全に国を出られるように計らうという。闘いたく
なければ降りれば良いとするが、立場上それは出来ないのだという。女性
だからって手加減はしないというと、モルゴースも特別扱いは望んで
いないという。アーサーと諍いが有った訳では無いのに何故闘いたがる
のか?アーサーに貴方を殺させたくないというと、アーサーの方が死ぬ
とはどうして考えないのかというモルゴース。
翌日、いよいよ闘技場で民衆や王が集まる中で対決が始まる。
戦いの前に降りるチャンスは与えたのであとはどうなっても気に止む
ことはないというマーリン。
王はみんなの前で騎士道に則り一方が死ぬまで闘うのだという。降りる
なら今が最後のチャンスだぞというアーサー。
いよいよ決闘が始まる。民衆達もこの決闘に声援を上げる中、
最初に優位に立ったのはアーサーだった。モルゴースの剣をはじき飛ば
して肩口に傷を負わせたこと。しかしアーサーはそこではトドメを刺さず
に再び剣を持つよう猶予を持たす。しかし次はモルゴースがコロシアム
の壁にアーサーを追いつめると、はじき飛ばしてアーサーが倒れた所
剣を心臓に向けて勝負を決める。しかしモルガーナは殺害せず約束すれば
命を助けるという。3日後に私を訪ね用意した挑戦に応じること。
例えどんな挑戦でも受けると誓えばここで命を取るようなことはしないと
語る。アーサーはそれを約束し、取りあえずこの場で命を落とすことは
なかった。
ガイアスはモルゴースの傷の手当をする。
ガイアスはそなたに見覚えがあると言うと、遠い昔に来たこと。
赤ちゃんの頃なので覚えても居ないはずだという。モルゴースは治療
に感謝すると部屋に戻る。
マーリンはあれで済んで良かったとアーサーに語る。しかしアーサーは
こんな惨めな思いは初めてだとし、国民の前で女に負けたという。
マーリンはそう思うと笑えますねと告げ、今までアーサーによって
惨めな思いをさせられてきたマーリンは嫌な口を叩く。女だから遠慮
したというアーサーに対してそうは見えなかったという。
モルガーナはモルゴースの元にいくと挨拶をする。
腕の傷はすぐに治るという。逆にモルゴースはモルガーナを見て疲れて
いる様だと語るとよく眠れないのだという。私にも経験があるという
彼女に何処かでお会いしたことがないかと尋ねる。
モルガーナは彼女に素敵なブレスレットをしていますねと語ると、
母親からの贈り物だという。良かったら受け取ってとし、癒しの効果が
あるというと、頂けないとして遠慮する。モルゴースは彼女に私の事を
忘れないでと語る。
深夜モルゴースはモルガーナの寝室にいくと、呪文を施したブレスレッ
トを室内に置いて行く。するとモルガーナは今までの悪夢がウソのように
眠りに就く。
翌朝アーサーは彼女におめでとうと語り君ほどの剣士は男の中にもそうは
いないと語る。立派な馬だとすると、彼女は3日後に待っているという。
アーサーは何処に行けば良いのかとするとその時がくれば自ずと分かる
という。剣を拾わせてくれたわねというと、その資質は母親譲りねと
語る。母の事を知っているのかと尋ねるとよく知っていたと語る。
■感想
いよいよイグレインの秘密を解き明かして、キャメロットを陥落
させようとする魔女でありモルガーナの義姉のモルゴースが登場。
モルゴース役にはイギリスでは有名なドラマでシーズン20の制作が既
に決定している「法医学捜査班 / Silent Witness」の医師のニキ役
(S8から登場)のEmilia Foxさんが演じていて、気がつくとEmilia Foxさん
がこのドラマで最長出演者となっている。
日本ではCS/AXNの方で放送が有ったけど、見たいなと思いつつなかなか
見るに至っていない。ただ何度かニキが出演していない頃に
何話が視聴したことがあり、このドラマは2話で一つのエピソードと
いう構成を取っている。録画してあるのでいつか見ようと思ってる。
マーリンの方でもシーズン3ではメインのキャラクターに据えられて
いるので戦いはこれからというところなのか。
■厄介な騎士道
立派だと言えば立派だけど、闘う理由もないのに戦いを挑まれたら
断れないというのは少々騎士道とは言いづらい感じもする。
小手を投げられてそれを受け取れば勝負の挑戦を受けたことになり、
一度受けた挑戦を断れば卑怯者とされるので厄介だ。
今回のアーサーは冒頭では女性・モルゴースと闘わねばならず、
最後はアーサーに小手を投げて勝負を挑んだ。
アーサーとウーサーの違いは正直ものかどうかの違いが有るのだろう。
アーサーはモルゴースの城を訪ねた際に、斧で首を切られそうになるが
それが彼女の望む挑戦ならばとして潔く首を切られる覚悟をしていた。
ウーサーはアーサーと対戦は拒むが、息子に対して斬りたければ斬れば
良いとしつつも、結局斬りつけてきたときには剣を出して対抗する。
■アーサーの出生の秘密
今回はモルゴースが現れたことで、アーサーに取っては最も知りたい
母親・イグレインのことに触れると共に、その事実を知ったアーサーが
ウーサー王を殺害に至ってしまうのではないかとするヒヤヒヤものの
展開だったことで面白いエピソードとなった。
モルガーナとモルゴース。誰が聞いても関係者だということは明らかな
名前。もっとも5世紀とかその辺のブリテン時代の人の名前など似たよ
うな名前が付けられているのかも知れないけど・・
ガイアスによるとモルゴースはモルガーナ姫の腹違いの姉で、王は幼く
して死んだと聞かされているとしていたが、実はガイアスが生まれて
程なくキャメロットから連れ去れて太古の魔法使いの司祭に託して
育てられたとしている。
彼女が手にしていたブレスレットは大いなる一族・ゴルロイス家の紋章
がついていたこと。
史実というか通説では、アーサーの母はイグレインで間違いないが
イグレインは当時コーンウォール国のゴルロイスと結婚していて、
ウーサーがそのイグレインに恋をしたために、ウーサーは魔法の力で
姿を変えてイグレインと関係を持ちその時出来た子供がアーサーだと
されている。魔法の力を使ったのはマーリンであり、そしてアーサー
を託したのはマーリンだとしているけど、このドラマではガイアスと
マーリンの役割がかなり入り乱れているような感じ。
このドラマの中で、アーサーはモルゴースの魔法によって他界している
イグレインと遭い本当の事を聞く。
イグレインとウーサーの間に子供が生まれずに、その為に魔法使いの
ニムエに頼んで、イグレインに子供が出来るように頼んだこと。魔法
で生まれた子で、その際イグレインの命と引き替えにアーサーを生んだ
とされている。
何処まで本当のことなのかよく分からないけれど、取りあえず今回
はマーリンの助言によってアーサーがウーサーを殺さずに過ごすこと
が出来た。全てはアーサーの心の隙間を魔法使いが入り込んで、
ニセの情報を埋め込んだこと。そもそもイグレインが幻覚であった
ということからすれば、魔女に操られたと考えてもおかしくはないハズ
で、アーサーもマーリンの話に一理あると感じたようだ。
しかしウーサーが嘘をついているとした際にはアーサーは
「あなたの利己主義で強欲のせいで魔法使いを殺してきたこと。
異常に魔法使いを恨むのは己の罪悪感を隠す為で、名誉と高潔を歌いな
がら偽善とウソの塊だ」としていたこと。
■複雑なマーリン
今回ウーサー王が殺されればマーリンら魔法使いにとっては、魔法使い
に対する虐殺が止まるので、それを考えればそのまま見過ごしても
良かったものの、結局アーサーの将来を考えた際に、必ず残るであろう
心の傷のことを気遣って止めることになった。
結果としては良かったのだけど、ウーサーだけでなくアーサーもまた
魔法使いは危険だという認識を持たれてしまった。
しかしウーサー、アーサー、そしてガイアスから感謝されたマーリンは
ご満悦という感じ。
ロープで部屋から逃げ出す際とか、女性に負けたというアーサーに対して
マーリンが嬉しそうにしていたところもまた普段の流れからすると仕方が
ないのかな。
■使用された曲
・
■出演者
マーリン (Colin Morgan) 生まれながらに魔法の力を授かる
アーサー (Bradley James) ウーサー王の息子。武術の能力
ガイアス (Richard Wilson) 思慮深く賢い宮廷医師
ドラゴン (声) (John Hurt)
ウーサー・ペンドラゴン (Anthony Head) キャメロットの王
モルガーナ (Katie McGrath) ウーサー王が後見人となり王女
グウェン (Angel Coulby) モルガーナの世話係。
モルゴース (Emilia Fox) モルガーナの腹違いの姉
— (Michael Cronin) Geoffrey of Monmouth
イグレイン (Alice Patten) アーサーの母
レオン卿 (Rupert Young) 城の衛兵
— (Rhys Rusbatch) 守衛