第5話 忠実なしもべ Faithfully
脚本/Timothy J. Lea
監督/Jean de Segonzac
【ストーリー】
「神様、この食事を祝福して心と体を支える糧として下さい。
アーメン」。ゴーレンは兄のフランクの妻方の親戚5人と共に
休暇を過ごしていた。フランクと元妻エヴリンの間には、ドニー
とモリーという子供たちがいた。モリーからおマメ食べる?
と声を掛けられるゴーレン。
クレオン・ルイスは医師のライアン・コンロンのオフィスに駆け
つけると貴様を殺してやると告げ、ニューヨークレジャー誌を
叩き付ける。「クーガーズのスター選手”鎮痛剤依存症”」と取り
上げており、そのネタ元なんだろうと語る。ライアンはそれを否定
するが、俺を売った金で高級車や別荘のローンを払ったのだろう
と語る。
キャリーはある男性と関係を持っていた。
その時間、聖エドガーズ教会では、ダン・ワイラー牧師が説教
をしていた。
「愛とは全てを信じ全てに希望を抱き全てに堪え忍ぶものだが、
我々の愛は利己的で常に見返りを求める。神の愛は無償の愛。
神の愛で互いを慈しみ合いましょう」と語る。
そんな牧師の説法を聞く妻のアリソンら信者たち。
キャリーはバイクを乗った人物によって殴り飛ばされ気絶する。
みんな素晴らしい説教だったと牧師に声を掛ける。
妻が書いたもので私の愛の指導者ですというダン牧師。彼が
教本よと妻。そこにはライアンも来ていて心に沁みたよと声を
かける。実行は難しいよというと、善行は努力を伴うものというと
全力を尽くして天命を待てさすれば道は開けるか?
そんな中、教会で秘書をしているMs.マハーはコンロン先生に
奥様からの伝言だと告げに来る。特別ランチを作るみたいだとして
妻キャリーの待つ自宅へ。すると室内には黒づくめの強盗がいて
もみ合いになる。犯人にも傷つくが、ライアンは殴り殺されると
バイクに乗って逃走する。
留守電には「キャリーよ、礼拝に行けず残念だったわ。牧師様に
誕生日の贈り物があるの」というメッセージ。それをアリソンは
遠目に見ていた。
キャリーは口を縛られてはいたが夫の死体を見て涙する。
エイムズは船の上からもうすぐ港に到着すると連絡する。
現場はスタテン島。エイムズは船の外で待っているゴーレンと合流
すると来週まで休暇でしょと。昨晩戻って来たとし、親戚の家に
行ってきたことを語る。元気そうねとエイムズ。
現場のコンロン邸へ。
捜査官はコソ泥がしくじったのだろうとし裏口を破り妻を縛り上
げて宝石を奪い現金を探していた時に旦那が帰宅したのだろうと
見解を述べる。しかしエイムズは私がコソ泥ならすぐ逃げるわと。
捕まってもみ合いになったのかというゴーレン。
被害者はライアン・コンロン(35歳)。解雇劇で騒がれた人物だと
ゴーレンも周知していた。クーガーズの専属医ねとエイムズ。
転職は成功。最新の電化製品が何故盗まれていないのかとエイムズ
は疑問に感じる。今朝の行動はどうなのかと問うと、勤務する
LH病院で朝の回診後、AM11:00の礼拝に酸化。12時45分に帰宅して
いること。ゴーレンは血の付いた足跡があるとし犯人のバイク
ブーツのようだと語る。キャリーは電話で助けを呼ぼうとしたが
無理だったと告げる。犯人の特徴は尋ねると目出し帽を被った背の
高い男180cm以上、あの目は殴られる前にハッキリと見たとし
殺意を感じたという。色はブルーグレイよ。誰かが来る予定が
有ったのかと問うゴーレン。今朝はずっと独りだったという。
しかしゴーレンはエイムズに対して高級下着と化粧をしていること
を指摘する。エイムズも香水をしているとし夫とデートの予定
なのか誰かを持てなしなのかと語る。
エイムズはベッドの精液を検査してとCSU Techの女性に頼む。
カバンがあるとし、その中には先日のスポーツ選手の記事の書かれ
た新聞だった。患者の秘密をばらまく医者が増えているという
エイムズ。解雇されて収入を補ったかというゴーレン。
NYPDに戻りロスに報告する。
彼はゴーレンに休暇は楽しめたのかと問うと、事件のことを早速
尋ねる。押し込み強盗を装った殺人事件だというゴーレン。盗ま
れた宝石は近くの排水溝に捨てられていたこと。レジャー誌絡み
の報復殺人ではないのかという。コンロンの携帯には編集部の
番号が入っていたというゴーレン。彼は数ヶ月前まで専属医で
クレオンはチームの花形だったこと。編集部は認めていないが
コンロンから医療記録を買ったのだろうというゴーレン。
犯人の目撃者はと尋ねると近所の女性が黒いバイクに轢かれそうに
なったという。全身黒ずくめ・・バットマンかというロスに
彼は正義だというゴーレン。それを聞いてエイムズは微笑む。
クレオンのマンションへ。
首になったからって情報をうるなんて最悪だという。
最後にコンロン医師と会ったのはいつかと尋ねると一昨日文句を
言いに行ったが素直に認める訳もないという。嘘をばらまいた
ヤツ。殺したって尚更損するだけで告訴する予定だったという。
死んだら金が入らないだろうというクレオン。
エイムズは筋は通るが信用出来ないという。ゴーレンもシロとは
言えないと語る。コンロンの身辺を洗おうというエイムズ。
聖エドガーズ教会へ。
コンロンは毎週礼拝に来ていたという秘書のマハー。活動にも
参加していたのかというと慈善募金に寄付してくれていたという。
彼の患者も協力してくれていたとし裕福な信者が多かったという。
そこに牧師の妻・アリソンがやってくる。
■感想
今回はゴーレン&エイムズサイドのエピソード。
シーズン8に入ってゴーレンサイドのエピソードは2度目だけど
このエピソードがある意味では前シーズンとのつながりが有りそう
な感じだったな。
ゴーレンが姪っ子のモリーの一家と休暇を共にする姿。
天涯孤独と思っていたゴーレンだけど、兄は死ぬ前に姪っ子を残
してくれている。敬虔な家庭にも思えるけれど、そんな家庭で育っ
ているモリーとの交流にゴーレンとしても癒されるものがある
みたい。
エイムズさんに写真を見せていたし、モリーからは手紙が届いて
ゴーレンもニッコリ。
今回牧師が語っていたように
「人間の愛は利己的、神の愛は無償のもの」
だとしていたように、人は何処かで何かの見返りを求めるところ
があるけれど、ゴーレンはモリーに対しては無償の愛を捧げら
れる相手では無いだろうかと。
今回は男女間の姦淫、肉欲、欲望なんかが抽出されて、乱れた性
に対する戒め的な意味合いも大きかったのかな。
人は誰(何)を信じ、その信じる相手は信じるに値する人物なのか。
ドラマの中では職業倫理とか完全に無視した流れが有って、
教会の牧師・ダンが浮気していたかと思えば、医者のライアンは
守秘義務を無視して編集者に選手の薬物依存の情報を流している。
こんなことが教会に行っているというだけで安易に赦されるのか。
アメリカの倫理の根底には宗教観があるのかなと思っているけど
実際には悔い改めれば簡単に前に犯した罪が赦されるとでも
思っていないか?だとしたら教会という存在が都合の良い存在に
なってはいないだろうかと考えさせられる。
そんな状況の中、女性陣も負けていない。
そもそも今回医師のライアンはクーガーズというクラブの専属医
をしていた。そのCougarsと言えば、一時期アメリカでもワード
として流行した「若い男子を好む中年女性」の意味でもある。
今回はそんな女性が親の居ない里子/男児のこころや牧師の心を
操って色々と行動を起こしていたところがある。
■事件発生
クラブの専属医のライアン・コンロン(35歳)が自宅で殺害される。
その日の朝、勤務している病院の回診後に教会に立ち寄り、
そして妻・キャリーからの連絡でランチの為に帰宅した際に、
黒ずくめの目出し帽の男によって殺害されて発見する。同じ部屋
にいたキャリーは手足口を縛られこそすれ殺されることは無かっ
たことで違和感を生じる捜査官たち。
捜査官は強盗による仕業で帰宅した旦那と鉢合わせしたのではない
かというが、ゴーレンの見立てでは強盗に見せかけた殺人だとして
ロスに報告する。
■信じるもの
人はそれぞれ信じたいものを信じる。
その対象が神ならばその言葉を代弁する牧師を信じるのかな。
ただアメリカのドラマを見ていても、キリスト教でも原理主義的
に教典を信じるものも居れば、その解釈には様々なものが有り、
同じ宗派で有っても違ったものがあるのだろう。
今のイスラム教徒の流れを考えれば、極端なコーランへの解釈を
巡って人は自分に都合良く解釈を求めてその格差が争いを発生
させている。
刑事達が信じるものといえばやはり自分の捜査に於いて見たもの
聞いたもの・・経験だろうね。冒頭ではいつも発見した警察官が
トンチンカンな推理を展開していくが、全否定の形でゴーレン
&エイムズが事実を選り分けていく。まぁこれはいつものことか。
今回は当事者とされる女性は二人共ブロンドで似た様な感じが
したので途中でどちらがどちらか分からなくなりそうだった。
・クレオンは信じたのが医師のライアンだった。
・牧師は神を信じているのだろうけど、その言葉は妻によって
練られたものだった。
・里子で奉事者ケビンはアリソンを信じていた。
・ライアンの妻・キャリーは牧師としての彼ではなくダン・ワイ
ラーを信じている。
なんとなくこれこそNCISのS7-1なんかでも語られる
“One Little Goat”の構図って感じがするね。
■検死
「科学の力」と「宗教の力」。
歴史の中ではある意味対立する関係でもある。
エリザベスは検視の結果、ケビンの死はメタドンとアルコールを
一緒に飲んで呼吸不全に陥ったとされる。以前にも睡眠薬で自殺
未遂をしたことがあるという。
アルコールの血中濃度は0.34、メタドンは経口摂取して240mg。
キリスト教徒ならば自殺する訳が無いというゴーレン。
常に宗教観を科学の力で否定も肯定もしてきた。
ドラマ「BONES」を見ている人ならばこの構図はまさに主人公の
価値観の対立を引き立てている要素の一つでもあるので感じる
のではないかと。学者肌のブレナンと宗教には拘りの強い
ブースの構図。
■人を操るのは簡単なのか
端的に言うと今回人を操っていたのは牧師の妻で元言語療法士
のアリソンだった。
アリソンは若い子との絆を深めるのが得意で、前に勤めていた
リンカーン青少年センターではケビンは14歳の頃にアリソンが
吃音の治療をしていたことが判明。ケビンにとっては初めての
家族だという認識が生まれた。
また牧師の説教の大部分は彼の経験談から来るもので、その
言葉はアリソンが作っていたところが多そうだ。
希望と絶望への怖さも感じる。
アリソンはケビンを利用した後にあっさりと彼を捨てて自殺を
誘発させた。
また牧師とキャリーの流れの中で「誕生日の贈り物の礼もない。
あなたの為に尊い犠牲を払ったのに私を見捨てるなんて不公平よ。
理解しているの?」という言葉が留守電に入っていた。
しかし当然キャリーの言葉ではなくそれはアリソンが言語療法士
だった過去を利用して上手く活用したのだろうね。
キャリーはケビンのことも肉欲的な武器を使って操っていたのか
と思わせたが声紋という「科学」はごまかせない。
■人を操る自分に酔っていたのか?
アリソンは自分のスキルによってカルト集団のようなものを
つくることが出来ていた。「13、14歳の男子の感受性は強い。
同年代の女子よりも魅力的な理想的な恋人だ。」
アリソンが牧師と結婚していたのもまた影で夫を操るのを目的に
し、更には人々を操ることに快楽さを覚えていたところが有った
のではないのだろうか。
■物証は固まっていく
「神よ我に与えた”尊い犠牲”を払う強さを。」
ケビンが書いた神への嘆願。
そんな言葉をアリソンもまた使用している。
アリソンとダン。二人には罪を犯した事に対する絶対的なやり
直しの方法論の違いが現れていた。
アリソンは二人で一緒にやり直して共に築いたものを壊さないよう
にしようとしていた。
しかしダンは寧ろ全てを壊して全てをやり直したいと考えている。
■その他
・ロスが女性に厳しい
どうもシーズン8のロスは女性に厳しい言葉を投げかけるな。
ユダヤ教徒なので妻と別れるってことはないとは思うのだろう
けど、どうも不満が溜まっている感じ。何がそんなに不満なの
かな。
■出演者
ロバート・ゴーレン (Vincent D’Onofrio) 天才刑事”ボビー”
アレクサンドラ・エイムズ (Kathryn Erbe) ゴーレンの右腕、刑事
ザック・ニコラス (Jeff Goldblum) 刑事、元ロスの相棒
ミーガン・ウィーラー (Julianne Nicholson) 刑事ニコラスの相棒
ダニー・ロス (Eric Bogosian) 警部
エリザベス・ロジャース (Leslie Hendrix) 検視局
— (Steven Zirnkilton) Opening Announcer (voice)
アリソン・ワイラー (Janel Moloney) 元言語療法士、ダンの妻
ダン・ワイラー (Leland Orser) 聖エドガーズ教会・牧師
キャリー・コンロン (Katheryn Winnick) 妻、ダンと浮気
ケビン・パクストン (Will Rogers) 牧師館に住む奉事者
Dr.ライアン・コンロン (Robert Farrior) 35歳、元クーガース専属医
— (Bruce McCarty) Sergeant
クレオン・ルイス (Robert Christopher Riley) クーガーズスター選手
モリー (Quincy Confoy) ゴーレンの姪、手紙が届く
Ms.マハー (Cheryl Freeman) 教会・秘書
— (Trish McCall) Administrator / リンカーン青少年センター
— (Scott Robertson) 弁護士
— (Carlos Alberto Valencia) 酒屋の店員
— (Jerry Richardson) Congregant
— (Heather Silvio) Congregant
ケニー (Kenny Sosnowski) 学生
— (Nicole Pope) 学生
— (Jennifer Butler) CS Detective
メーガン
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