[E] ダウントン・アビー ~貴族とメイドと相続人~ Downton Abbey シーズン6 第10話 懐かしき友、久しき日々 Episode #6.10 Christmas Special

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第10話 懐かしき友、久しき日々 Episode #6.10 Christmas Special

監督/ 脚本/

【これまでのあらすじ】

イーディスとバーティはメアリーの計らいで再会。そしてイー
ディスは彼からプロポーズされる。二人を祝福する伯爵夫妻。
メアリーと結婚したヘンリーは、もうかつてのようにカーレース
を楽しめなくなっていた。再出発の為にトムに協力を求める。
マートン卿から悪性貧血だと思わぬ告白を受けたイザベルは
決意を固める。しかしアミリアからは突然もう関わらないでと
態度を急変させられディッキーと会わせないようにさせられて
しまう。使用人の間ではバローがダウントンを去ることに。
カーソンは執事としては致命的な病気にかかってしまう。
伯爵夫妻はバーティの母ペラム夫人の待つブランカスター城へ。
マリゴールドのことを話したら母親は許されないと言われるが
イーディスは真実を打ち明ける。バーティは彼女の勇気と義理堅さ
と誠実の証だとして母親に理解を求める。結婚相手としては
失格だという母。

【ストーリー】

イーディスは、バーティに対してあなたの母とマリゴールドが
遊ぶ姿を秘密を抱えたまま見てるなんて出来なかったという。
しかしこれが隠し事はなくなったと。ロバートは言う必要が
有ったのかとしてイーディスの決断を嘆く。コーラはイーディス
の決断は誇らしいものだと語る。
リスバーン伯爵夫妻などがやってくる。

スタイルズ夫妻の家に執事として働くことになったバロー。
食事が終わるとさっさと部屋に戻る夫妻。

ブランカスター城では夕食会が開かれていた。
ロバートはペラム夫人にそろそろではないかと語る。
すると夫人は食事しているみんなに対して立ち上がって声を掛け
る。息子の為に集まってくれたことに感謝するとして乾杯の音頭
を取る。息子は重責を担うことになったこと。皆さんが友人にある
ことは心強いものだと。しかしそこで婚約のことは一切言及しな
かった。それを知ったバーティは続いて報告が有るとして立ち上
がる。話そうとしたバーティだがロバートはペラム夫人に対して
「今言わないと息子さんを失いますよ」と声を掛ける。すると
ペラム夫人がバーティよりも早く、息子はイーディスと婚約した
ことを発表する。

デイジーはアンディが最近メイソンの農場で大活躍していること
をパットナムに告げ、彼はメイソンが好きだから助けたいのよと
語り働き者だと賞賛する。深い意味はないというデイジー。
ヒューズが帰宅前に使用人部屋のパットナムたちに声を掛けてい
った為にパットナムは「悩みとは無縁の愛の巣に帰るのかい」と
語る。すると愛の巣であることに違いはないが悩みはあるという
ヒューズ。

イーディスとロバートはとんだ番狂わせだったなと語る。
イーディスはその後ペラム夫人とは口を利いていないのでどう
ゆう状況か心境は分からないという。
するとそこに夫人がやってくる。イーディスは婚約を発表した
ことを後悔していないかと尋ねる。どこに反対する理由があるの
かという夫人。家柄が良く頭も良くて真っ正直なあなたが義理の
娘になるのよと。目の前に有る幸せを失う覚悟で真実を告白
したのは称賛に値するものだという。バーティと揉めるのが嫌
で妥協したのではないかと問うと、それもあることはあるが
一日よく考えたがこの結婚は上手く行くと確信しているという。
バーティは全て解決だねと語る。そしてイーディスにキスして
欲しいとして家族の前でキスするのだった。

ヴァイオレットとイザベルはマートン卿の邸宅にいく。
彼を呼んでくれたか?というイザベルに対してアミリアは呼んで
はいないという。呼ぶわけがないという彼女に、彼をイザベル
に押しつける必要がなくなったのねというヴァイオレット。
先が短いから・・と。死を待つ彼を2階の部屋に閉じ込めて言い
なりにさせるのかという。するとマートン卿とラリーが騒ぎを
聞いて二階からやってくる。マートン卿はイザベルたちに何故
会いに来てくれないのかというが、会いに来たけどアミリアたち
に追い出されたのだという。ディッキーに対してイザベルは
今すぐに従者に命じて身の回りのものを私の家に運ばせてという。
これから責任を持って彼の世話をするという。
家族を引き離すのかというラリーたちに対して、ディッキーも
激怒し、息子として愛して居るがお前という人間は好きになれ
ないと語り残りの人生は好きにさせてくれという。父さんの
家だというと、こんな家はお前達にくれてやるという。用意が
整い次第結婚しましょうというイザベラ。なんとか言ってよと
アミリアに対してディッキーは最高に幸せだと語る。

■感想

いよいよ6シーズン続いたドラマの最終話。
海外ドラマとしてはそれ程長いという程ではないけど、NHKとして
は珍しく最後まで放送してくれたのが驚きかな。

シナリオ自体はラストシーズンはそれ程完成度が高いとは言えな
かったけど、シーズン当初がそもそも普段は目にすることの無い
貴族生活に焦点が当たったり、その称号の継承権の問題が有ったり
第一次世界大戦が近づく中でのシナリオと、様々な要素が盛りだ
くさんだった。
文明の利器が急速に社会に浸透したり、女性の社会的進出や学問
の薦めとばかりに今後は民衆たちが社会の主役という主張を盛り
込んで行き、ダウントン・アビーの存在意義や徐々に貴族として
の特権社会に異議を唱える流れが出て来たりして、それぞれ当た
り前のように役割を果たして来た階級・階層社会の人々がその壁
を打ち破っていく為に努力したり不安に陥ったりして、その心理
状況も含めて興味深く描かれて行った。

ドラマ的には最後はやっぱり一気に時計の針を進めて1925年12月
29日となり、イーディスの結婚式を始め、新年にはそれぞれ新しい
人生の再出発的新たな決意が語られた感じで、益々ダウントンの
人々のその後の経過なんかを見守りたくなってしまうものが
有る。ハリウッドなら恐らくシーズンが続くんだろうなと思い
ながら見ていたけど、ここらで終わらせるというのも賢い選択だ
ったのかも知れない。

何と言ってもそれぞれの成長具合を描いたところが良かったね。
社会が変わればダウントンの形体だって変わる。
元々この階級社会が変わる筈もないもの、それに固守する人たち
の努力ばかりが描かれたシーズン当初の物語から始まり、それと
同時に固定された人の気持ちの中に、その枠を外れた行動を
起こすことに対する人々の葛藤が見て取れる。
そして個人にして見れば、自分の権利を主張するのは勿論のこと
上を目指す為、利己的行動の為に人を傷つけてきた人たちが
変わる事のない普遍的性格から来るものかと思っていたが、
最後になってようやく周囲の人たちとの連帯が自分の利益にも
繋がることが分かるところに繋がり、孤独だと思っていた人にも
一種の暖かさというものを植え付けていった。

それぞれに成長している姿は明らかで、寛容的で穏やかになった
感じかな。財政的には苦しい時代で寧ろ人間関係は殺伐として
もおかしくはないのに、葛藤は有ったが結局みんなそれを受け入れ
ていく方向が有った。

ダウントン・アビーの屋敷そのものの象徴がロバートでもメアリー
でもなく使用人として、この屋敷のルールを厳格に守ろうと努力
するカーソンだとしたら、ダウントンの村の象徴はヴァイオレット
だったのではないかな。
彼女もまた役割を終えてコーラにそれを譲る光景が有る。
今回は最後までヴァイオレットがこの変化を受け入れられず粘っ
ていたけど、押し入る時代の変遷と年齢的なものには抗うする術
はなかった感じ。
後身に席を譲るのもまた勇気がいることだし、義務でもあると
思う。その身の引き方は少々ヴァイオレットらしく最後まで
手放そうとはしなかったけど、義務的でいてそして自らの力の誇示
の為に頑張ってきた彼女も、また違った人生の歩み方を見出す
ことによって手放すことが出来たのだろう。
ヴァイオレットの価値観を覆すのに役立ったのはやっぱりイザベル
だったような感じ。彼女の存在の偉大さは歴史的に名前が残らなく
ても大きかったと思う。

・長女・メアリーの成長

何と言ってもメアリーの成長が有ったかな。
それを感じたのは勿論一度は破壊したイーディスとバーティの
関係の修復に有ったのだけど、子供じみたメアリーの行動も
その後妊娠したと分かりヘンリーに話した際に、

「もうすぐ望んでいるものが手に入るが今はイーディスが主役。
秘密にして。」

と、あれだけ毎度牽制していた妹に対する最上の気遣う姿が有
り、それを聞いたトムがまた
「その言葉だけで感動しそうだ」
というくらいにメアリーの成長を感じたところじゃないかな。

その後も妊娠の事はイーディスが新婚旅行に出るまでは秘密に・・
と語る姿が有り、これまでの姉妹の葛藤をみて居るもの、特には
メアリーの傲慢さを目にしている視聴者には変わったなと感じ
させるところじゃないかな。

・侍女・イーディスの誠実さ

この人の不幸さ加減と言ったら両親も気の毒に思うほどだったけ
どそんな彼女がいよいよ結婚する事になり、ロバートとしても
肩の荷が下りたとしていたように、ようやく色んな意味で落ち着く
ことが出来たのではないかな。
我の強い長女と三女の間に立つイーディスっていうのはその性格
からかどうしても自分の意見を押し殺してしまうところが有った。

しかし最後は幸せは自ら掴むものだということを知った筈だし、
その幸せは嘘の上では成立しないものだと感じたからこその
勇気のある告白だった。

冒頭のブランカスター城で、バーティが領主としてこの地を引き
継いだことを知らせる地元の有権者たちを集めた夕食会が有り、
そこで同時に婚約の発表する場が有ったけど、最後までペラム
夫人はなかなかイーディスを認められなかったけれど、ロバート
の一言が功を奏した。
「今、言わないと息子さんを失いますよ。」

なんとなくマートン卿の親子関係を見ているかの様。

ディッキーは自分たちの私利私欲の為にイザベルたちと父を
会わせずに幽閉していた事実があり、それを知った父親は
「息子として愛して居るがお前という人間を好きになれない」と
語る姿が有る。

しかしペラム夫人も鬼ではなく、バーティは母が子供を相手に
するとは思えないとしていたけど、マリゴールドと遊んでいる
光景が有った。

■その他

・使用人たち

バローがダウントンに戻るというのは明らかだったので、カーソン
が病気だと判明した際には、そこでそうくるかという思いが
有った。ただ病気が発症する前から最終シーズンでは病気で
高齢者たちがバタバタと体調を崩すケースが多かったので、
クローリー家を見守って来たカーソンがいずれ引退しても
おかしくはないと思っていた。

残念だけど実はもっと使用人たちはバラバラになって城で働く人
たちは減るものとばかり思っていたので、メインキャラクターは
ほぼ残った感じだったね。

・デイジーの性格を見抜くパットナム

パットナムとかヒューズは単なる上に立つものとしての存在だけ
ではなく人生相談に於いては色んなところで役に立つところが
有ったね。パットナム&ヒューズってパターンも多く見られた。

パットナムが一番気にかけていたデイジー。
その彼女の異性に対する行動パターンは完全に把握していた様で
「彼の心が離れた途端媚びるのかい。どう見てもそうだよ。」
と語っていた。
デイジーの無知で無鉄砲な行動が最後のシーズンでは目立ち始めて
いたけれど、自己の存在というものの価値に気がついてきた所も
あるのかな。
アンディはイケメンってタイプじゃなさそうだけど、都会で働いて
いた割りには田舎での農場の暮らしに興味を持っていた。
当初はデイジーの気を引くだけかと思っていたんだけどね。

デイジーが最後、髪型を変えた。
もの凄い勢いでメアリーの部屋に入って勝手にドライヤーを
借りていったけど良かったのか(笑)
「帽子を深く被りすぎてない?」(anna)
「帽子をお取り!!」(pat)

結局アンナが髪型を変えてキレイに整えてくれた。
アンナによってオゥクーランにしてくれたのか。
「女王ヴィクトリア」によれば流行って意味らしい。

・子供

少なからず子供の存在は切り離せないものが有った。
ローズが最後にゲストの感じで帰郷したけど、アメリカでの
アティカスの商売はどうやら上手く行っている感じ。
トムがアメリカに行ってしまった時にはどうなるかと思ったけど
ね。

で、ローズは赤ちゃんの名前をビクトリア・レイチェル・コーラ
と名付けていた。この名前を聞くだけでローズが実母以上に
コーラを慕っていたことが分かるね。そんなに長いシーズン
関わった訳では無かったローズだけどそれでもコーラの存在の
大きさを知らしめることになった。

最後にアンナとベイツの間に赤ちゃんが産まれた。
赤ちゃんを抱くアンナの可愛いこと。
メアリーの部屋で突然破水してしまったことも有り、当主の
部屋を占領する大晦日となった。子供は男の子だったけど、
やはりロバートの名前を付けるのかな。

・色んな皮肉

最終話はこのドラマを見ている人には色んなところでコアな
形の皮肉の込められたセリフが多かった様に思う。

一番笑えたのはイーディスの結婚にレビンソン夫人が来られ
ないとした際のロバートとコーラのやりとりだったかな。
「ちょっぴり残念だな」(rob)
「ちょっぴりね」(cora)

レビンソン夫人とはコーラの母だけど、シーズン4の最終話で
イギリス貴族の生活を見たいとしてやってきた人物で、アメリカ
流の振る舞いをして散々ヴァイオレットなんかを苛つかせていた
ような感じだったよね。


スプラットとデンカーのやりとりは常にくだらない形でのやりと
りだったけど、スプラットのしゃべり方ってなんか確かに小憎ら
しい(笑)

メアリーの妊娠に際して、
「イーディスが新婚旅行に出たら世界中に報告して」
「妹思いだね」
「感傷的な人ね。姉妹には秘密がつきものよ」


「イギリス人の気質って何処から来るの?」
「さあね、歴史にうまれたむ部分も有るけどお天気のせいよ」

イギリスのネタになるとかならずこの晴れない感じのお天気が
取り上げられるよね。

■大団円

最後に締めるのはやっぱりロバートとコーラだったかな。
ローズがコーラの病院での振る舞いをロバートに見せることで
意固地だった彼の利己的な行動も解けた。
「灰被り姫のイーディスは王子様のキスで蘇った」
と言っていたけど、寧ろ現実に立ち返ったのはロバートなのかも。

ディッキーは結果的に悪性の貧血(鉄欠乏性貧血)ではなかった。

「懐かしき友たちは忘れ行くものなのか。久しい日々も記憶の
かなたに去るのか。懐かしい友たちの為に久しき日々の為に、
慈しみの杯を今こうして交わそう」

■使用された曲

・Downton Abbey The Suite
Written by John Lunn
Performed by Chamber Orchestra Of London

■出演者

ロバート・クローリー …… グランサム伯爵
イーディス・クローリー …… 次女
メアリー・クローリー …… 長女
コーラ・クローリー …… 伯爵夫人
バイオレット・クローリー …… ロバートの母
イザベル・クローリー …… マシューの母
トム・ブランソン …… シビルの夫、シビーの父

チャールズ・カーソン …… 執事 -> 引退へ
ジョン・ベイツ …… 従者
アンナ・スミス・ベイツ …… メアリーの侍女
デイジー・メイソン …… 料理人
トーマス・バロウ …… 副執事 -> 執事へ
エルシー・メイ・カーソン(ヒューズ) …… メイド長
ベリル・パットモア …… 料理長
ジョセフ・モールズリー …… 下僕 -> 教師
フィリス・バクスター …… コーラの侍女
ジョージ・クローリー …… メアリーの息子
マリゴールド …… イーディスとグレッグソンの娘
シビー・クローリー・ブランソン …… シビルとトムの娘

LADYロザムンド・ペインドウィック …… ロバートの妹
LADYローズ・マクレア …… スーザンの娘
アンドリュー “アンディ” …… 下僕
ヘンリー・タルボット …… シャクルトンの甥
Dr.クラークソン …… 村の医者
ディッキー・マートン卿 …… 富豪、悪性貧血
Mr.ドーズ …… ダウントンの学校の校長
バーディー・ペラム …… ブランカスター城領地管理
アミリア・クルックシャンク …… ラリーの妻
スプラット …… ヴァイオレットの執事
Mr.メイソン …… デイジーの義理の父
— () ブランカスター城の執事
Mrs.ペラム …… バーティーの母
Sirマーク・スタイルズ …… バローの新しい就任先
ラリー・グレイ …… マートンの息子
アティカス・アルドリッジ (Matt Barber) ユダヤ人、ロンドンの銀行
ヒュー・”シュリンピー”・マクレア …… ローズの父
ローラ・エドムンズ …… 出版社に面接
トラヴィス牧師 …… 結婚式

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