第9話 家族旅行 The Trip
脚本/Vera Herbert
監督/Uta Briesewitz
【これまでのあらすじ】
ケイトはトビーに対して初めて逢った時に言った。
「太った人はタイプじゃない」と。でも互いに惚れていたハズ
だとしオレを捨てるのか?。オリヴィアは自分には無理だと
して感謝祭のディナーから抜け出す。ケヴィンは何が無理な
んだと問うが・・そんなやりとりを見ていたウィリアムは
優しい男がパイを差し出してくれたなら礼を言うべきだと語る。
ランダルはウィリアムのアパートの机の中であるものを
見つける。どうして僕の写真が母さんがウィリアムに送った
手紙の中に入っているのか?レベッカは怒るランダルに分かって
欲しいと告げる。僕の父を知っていたということなのか。
今まで僕にずっと隠していたのか。
【ストーリー】
ランダルは室内で怒り、カーペットの上を歩き回る。ベスと
ウィリアムは会話する。よかれと思っていたこと。ランダル
は怒っているだけだとすると、耳は聞こえているんだぞと
ランダルは室内から二人に語る。ベスはランダルのことが
心配だとすると、何時間も経つが話す気になったか?と。
ランダルはウィリアムとはねと語る。怒るのも当然だという
ウィリアムにランダルは質問をする。母との初対面は?産後の
退院の時だという。もらわれる家が良い家か確かめないと
いけなかったと。父さんも知っていたのかと問うと、そうは
思えないというウィリアム。ランダルは現在母さんを許せない
理由をリストに書いているとし22個書いたという。2ヶ月前に
僕がウィリアムの元を尋ねた時に僕を捨てたことも忘れた振り
をした。お母さんの気持ちを尊重したんだと。僕をむかつか
せる選手権が有れば2位だ、ベスは3位だと語る。私は告白す
るようにお母さんを説得したのだという。だから父さんも
ベスもリストには書いていないと語る。裏切っていたのは
母さんだとし、リストが完成したらすぐに母に聞かせる。
一言一句をかみしめさせるというランダル。
— 昔 —
家族でスーパーに買い物に行く。
先週1kgのハムとチーズを買ったのにもう食べたのって言われ
たとレベッカ。子供たちが一緒に来る中、ランダルは何処に
行ったのか?と探す。するとランダルは黒人の夫婦に対して
舌をくるっとさせることが出来るか?と問うていた。ランダルに
よると授業で習ったことで舌を丸められるのは親譲りなもの
なのだという。見つかったら本当の親かも知れないと。
ジャックは帰宅すると炊事しているレベッカにあの子に
ああいう時には何と言えば良いのかと問う。レベッカは何も
話さなくて良いと言う。みんなに舌を見せて回っていたら
どうするのか?辛すぎるとし本当の親を知らなくて心に穴が
空いているんだという。親は私たちよとレベッカ。ジャックは
考えたくないのは分かるがでもあの子の疑問には添えたいと
いう。俺たちを恨むことになるかも知れないとジャック。
レベッカはどうして恨むのか?とすると、愛して居るし必要な
ものはあの子に与えているという。何が足りないのか?
舌を丸めることが出来ないというジャック。出来るわよと
してレベッカは舌を丸めて見せる。出来ないなら教えるわと
してキスをする。
— 今 —
ケイトはケヴィンからママとランダルの昨夜のディナーの事
を話す。ママがランダルの実の父を知っていて隠していたの
か?正気じゃないレベルの話だというケイト。しかしケヴィン
はお前もそうだとし突然現れて胃を切るとか言い出して何な
んだ?というケヴィン。飛行機事故で死にかけた・・人生が
走馬燈みたいに浮かんだというケイト。ケヴィンは単に軽い
乱気流だろうとしピーナツがこぼれただけだと語る。ケイト
はそれでも怖かったとしあれで目が覚めた。「今を生きな
きゃ」と。ダイエットはどうするのか?計算したらこのペース
では目標体重達成するのは106歳だという。遠すぎる。私は
今を充実させたいと。トビーと別れたのは無関係なのか?と
いう兄にそうだという。沢山の人が受けて居るから平気だと
いう。ケウィンは色んな問題がある・・・お前にランダル・・
母さんは山荘を売るというし・・と。人生最高のキスをした
のに・・とケヴィン。ママは山荘を売るのか?私たちの子供
時代そのものだというケイト。しかし何年も行っていないだ
ろうと。じゃあ行こうという。
ランダルはメモ紙がないかと二人の元にやってくると、山の
ようにストックされている所を知っていると語る。
・三人で山荘へ。
売るなんてママはウソなんでしょ?とケイト。ケヴィンは山奥
なのに携帯の電波が飛んでいるなんて車に何か有るのかと。
知識が昔で飛んでいるからとケヴィン。僕にあるのはウソだけ
の昔だけだというランダル。ケヴィンは傷ついたのは分かる
が母と仲直りしろとし、クリスマスまでに・・だ。大事な行事
だろうと。自分の荷物を片付けして鍵を返したら母親とは
無関係になるという。彼女はアメリカ人じゃないから言葉の
壁が有るというケヴィン。イギリス人でしょと。同じ言葉を
話しているとケイトは語る。
・山荘に到着
ドアには鍵が3つもかかっていた。母の気が知れないという。
ケヴィンが熊を怖がっていたからだと。動物図鑑には熊は
賢いと有ったのだという。オレは勉強よりセックスばかりだ
ったので物を知らないのだという。ケイトはトビーにメール
する。「死霊のはらわた」とは別よとして山荘の写真をメール
するが、なかなか電波の通りが悪い。
室内を見て回る。この頃はデニムオンデニムばっかりだったと
ケイト。今はそれどころじゃないというケヴィンは壁の額
のステレオグラムを見ていた。これって海賊船?と問うと
ランダルは熊だよと。実体のない幻だ・・僕の子供時代と同じ
だという。ママは酷いことをしたが子供時代は幻ではないと
いう。私もケヴィンも生きて居るとし私たち家族は実在して
いるという。来てこれを見てと。ゴムウエストのケミカル
ウォッシュジーンズでニッコリしていると。しかしランダル
は実の親は見つからないと僕にウソをついたとして母親の
写真の所でそれを語る。気持ちは分かるがでもこれが三人で
過ごす最後なのよ・・だから楽しもうと語るケイト。
■感想
家族旅行は時間旅行でもあるのか。
ついにレベッカがランダルの父親のことを0歳当時から知って
いたという事実が明らかにされた。息子のランダルが父親を
探して回っていたということを知っていたにも関わらず、
レベッカは見て見ぬ振りをしたのか、その事実は一人で
隠し通し、36年目の節目になってついに発覚してしまった
という訳だ。
9歳当時の子供たちは無意識に親・兄妹に嫌われないように
自分の役割を貫くことがあり、親の顔色を見ながら好かれ
ようとする行動を取る物だけど、ランダルだけは養子という
立場上、一番プレッシャーが強かったであろうことも感じら
れる。だからこそ完璧な子供を演じようとしていたところが
有るし、両親が求める人物像として誰よりも立派なものとして
当時のイメージされる黒人という枠を越えるような成長・成功
をしている。
これはケイトにしてもケヴィンにしてもそれぞれ役割を演じて
いたのだろう。
その辺の事情は会話の中からも感じ取れる。
心の穴に関してはかつて三つ子出産の際に一人を失ったこと
でジャックとレベッカに対して心を埋める存在としてのラン
ダルのことを引き合いに出したけど、現実的にはランダルの
中にもルーツを知らないことによって心の穴として存在して
いるようだ。
家族・兄妹みんな何処に住んでいるのかよく分からない。
アメリカだと車で5時間移動なんて言うと広大な土地からすれ
ばたまにはあることなのかな。
そもそも幼少期の彼らは何処に住んでいた場所とは何処だった
のだろうか?
レベッカは今回山荘を売ろうとしていた。
あの山荘は先日の感謝祭で過ごした場所とは違う場所なのか?
■それぞれの家庭
・ジャックとレベッカ
今回は過去として描かれた部分と、その過去についてランダル
がアッシャー(Nick George)が持って来たマジックマシュ
ルーム入りの酒を飲むことを通して、ランダルだけが幻視の
ようにしてジャックやレベッカのことを思い出すシーンとして
描かれている。
「クイーン・メアリー」に於けるカトリーヌ妃が幻覚を見る
アンリ王や双子の子を見るような光景を彷彿とさせる。
二人はやはりランダルが自分のルーツを探る為に街を行き交う
人に遺伝的要素から自分の父を捜す行動を取っていることが
分かる。舌先を丸めることが出来るかどうかは遺伝的要素が
含まれるのかな。
この件はイヴェットに相談していた。
息子は父親について空想を話しているようで毎回設定が変わり
料理人、バスケの選手、郵便配達員など・・
白人と黒人の違いというのは理解しているのかどうかは分か
らないが、自分のことを投影出来る人を求めているのは確かな
様だ。男性のお手本が必要・・・これってやっぱりシングル
マザーだけでなく男親の必要性は欠かせないところなのかな。
レベッカはウィリアムに会いに行く姿が有った。
ウィリアムは幸い引っ越していなかった。現在の彼は小さな
楽器店の裏方で働いていると言っていた。ドラッグ依存症患者
のサポートグループの仲間も口を利いてくれるようになり、
5年間は既に断っているという。
元々のランダルの名前はカイルだったようだ。前にも捨てら
れていた際にカイルという名前が出て来ていたけど、ダドリ
ー・ランダルから取って彼の名前はランダルであることを
話した。とても優秀な子で頭が良くて算数と理科が得意、
GIジョー好き。そして初めての夫の出張時には、ランダル
が一緒に寝てくれたとし、自分が怖いのではなくママが怖く
ないようにとして気を使ってくれた事を語る。
常に9年間はこれで正しいのかどうか、自問自答していたのだ
ろう。あの子を店に連れて来たらどうかと問われるが、
レベッカとしてはここで会わせるとランダルが自分の子では
なくなるという不安が有ったのかな。
山荘ではボードゲームをする光景が有る。
しかしこれは実際に過去に有ったことと同時に現在ランダル
がマジックマシュルームによってハイになっている時に見える
光景でも有った。
窓の外から中を覗くと普通に暮らす幸せな家庭の光景が有る。
後日イヴェットから紹介された空手道場に連れて行かれた。
ランダルが求める黒人社会がここには有る。
この道場で築き上げるものとは何か。
「体」「心」「仲間との絆」。これが3つの掟だという。
子供にだけ何かを求めるのではなく、ここではジャックが子供
を背負って腕立て伏せをさせられていた。
軍隊式のバディシステムの思想に良く似ている。
この人だけは絶対に助けるという決意を体全体にたたき込む
光景。軍隊では絶対にバディを祖国に帰すという元で二人で
一人の人物を組ませるシステムが導入されている所が有る。
親としてどんな困難に遭遇しても背負い続ける覚悟を持った
こと。
・ケヴィン
ケヴィンはケイトが手術を受けるとする突飛な行動に反対的
立場。しかし案の定先週の飛行機の乱気流に巻き込まれた
ことで死ぬ思いをした彼女は手術を受けて、「今を生きる」
決意をしている事を知る。
ケヴィンはランダルに対して気持ちは分かることも有って
時間が必要だということは分かって居たのだろう。クリスマス
までには仲直りするよう告げていた。
山荘にいくことになる。
母が三人の幼少期の思い出の地を売ろうとしている。
ケヴィンはこんな山奥でも携帯の電波が届くことに驚いていた。
山荘には鍵が三つ付いていた。
自分は兄妹の三人が集まらないとこの山荘は決して開けること
が出来ないように両親がそういう仕掛けを施しているのかと
思っていた。それだけ三人の思い出という意味合いの強い
場所として認識していて、三人が揃った時だけ開くという
構図を作っているのかなと。
ただここは思い出を閉まっておく場所のようになっていたね。
いい思い出も悪い思い出もあらゆる過去をしまい込んでしまう
ような大きな箱のような山荘。
ケヴィンにはステレオグラムだかトリックアートが見えなか
ったのだろうか。大抵こういうのは問題の本質が分かって
居ないから見えないものとされる訳だけど、熊が写っている
という。
オリヴィアに自分の育った場所を見て欲しいと思ったみたい
だけど、彼女はなんと一人で来ることなく、スタッフのスロ
ーンやアッシャーという元彼を連れて来た。
・ケイト
ケイトは胃の手術を受けて入口を狭くして痩せるようなことを
するようだ。ケイトの身勝手なところは距離を置くとして
トビーに語るも、未だに固執して写真やメールを送っている
こと。「今を生きる」を実践したいのであれば、トビーとの
付き合いは欠かせないものだと思うけどね。
ケイトとオリヴィアが話合う光景がある。
オリヴィアは思い出の地を文句を言ってばかり。
ケイトはオリヴィアのことを「顔だけの自惚れ女。ケヴィン
みたいな単細胞の足を引いておもしろがっている」
と語る。ケイトはケヴィンのことをそう思っていたのか(笑)
寧ろオリヴィアの方がケヴィンは単細胞ではないと諭す所
が有る。
嫉妬しているとオリヴィアが語った時には、ケイトは彼女に
嫉妬していると言われたと思い込んでいたが、実際には
“ケヴィンに嫉妬”しているのだという。「彼は変貌しようと
しているのに、あなたは痩せても何も変わらなかったら・・
として怖いのではないか」とズバリ指摘されてしまった。
「今の自分が本当の自分だとバレてしまうのが怖いこと。」
トビーに電話する中で改めて関係を問われて、俺たちは別れ
たママだとされると、愚痴の聞き役にはもうなれないことを
言われた。
・ランダル
ランダルは母親が嘘をついていたことを激怒。
探していた父親のことを知っていながらレベッカはみてみぬ
振りをしていたこと。
ただあのままウィリアムと生活していたら、今の生活は出来て
いたか。今の楽しい思い出はできていたか難しいところだ。
ランダルは母親に対して文句を言うリスト作りをしていた。
大抵そういうリストを作ることは前向きに生きる為の一つの
ステップに思えるけど、彼は山荘を片付けて鍵を渡したら
もう他人だとばかりに興奮していた。
アッシャーのドラッグ入りの酒を飲んでそうとうヤバイ状態
だった。マジックマシュルームと言えば伊藤英明さんが
幻覚症状を起こして錯乱してしまったことを思い出すな。
しかしそのせいで過去の扉に一人トリップしている光景が
ある。誰もその彼を相手しないというのも凄い。
山荘の硝子窓が一つの現在と過去を隔てるものとして存在
している。
1) 僕に宇津を付いていた時間は1万3215日だ
2) 母さんは僕が求めていたものを奪って僕の将来を歪めた
3) ウィリアムは卒業式の答辞を聞けた
4) 僕の結婚式で演奏が出来た
5) 病院で孫達の誕生後も見られた
6番目のことを少年時代のランダルが偶然にも話していると
いう当たりが上手いね。
しかし窓から写る光景を見て、実際にはレベッカが面倒を
見てくれたことは計り知れないものがあるのを感じたハズだ。
■その他
・オリヴィアは試したのか?
オリヴィア自身が抱えている問題が何かが分からない。
何故わざわざ問題になりそうなことを引き起こしたのか。
アッシャーなんて連れて来れば明らかにケヴィンが怒るに
決まっている。そして普通の家族のことを否定しまくっている
彼女に対して、「オレにはリアルにやれとしていて昨日の
キスや感情はリアルだったのに、君にはそれが分かっても
怖がってても驚かない。自分の気持ちが怖くて打ち消そうと
している。でもそれよりも最悪なのは君には本物の経験って
ものが全く無さそうなことだ。君は人として空っぽなんだ」と。
・スローンと寝たケヴィン
前に進んだハズの彼だけど結局は下半身は止められない。
スローンもまたアルバニーに住む姉に子供/姪っ子が生まれて
駆けつけたいのにオリヴィアによって邪魔された。
山荘 = ホラー映画じゃないんだから、意地悪なことして
邪魔しなくても良いのにね。
・思い出の品
ランダルのGIジョーが屋根の上に投げられていた。
ジャックがしていた雨樋の掃除をしている時に見つけたもの。
ケイトとケヴィンは父親のナイフで木に彫っていた名前や
色々なものを見つける。「ケイト参上!」と。
■使用された曲
・The Calvary Cross by Richard & Linda Thompson
・If Only by Maria Taylor
■出演者
ジャック・ピアソン (Milo Ventimiglia) 36歳、建設会社勤務
レベッカ・ピアソン (Mandy Moore) ジャックの妻、初出産
ランダル・ピアソン (Sterling K. Brown) 36歳、エリートビジネスマン
ケイト・ピアソン (Chrissy Metz) 36歳、ケヴィンの付き人
ケヴィン・ピアソン (Justin Hartley) 36歳、コメディドラマ俳優
ベス・ピアソン (Susan Kelechi Watson) ランダルの妻
テス・ピアソン (Eris Baker) ランダルの娘・長女
アニー・ピアソン (Faithe Herman) ランダルの娘・次女
トビー・デーモン (Chris Sullivan) 減量のためのサポートグループに参加
ウィリアム・ヒル (Ron Cephas Jones) 無職、62歳、ランダルの父
オリヴィア・メイン (Janet Montgomery) 舞台女優
イヴェット (Ryan Michelle Bathe) 黒人、ママ友
スローン・サンドバーグ (Milana Vayntrub) 劇作家
レイ (Aaron D. Spears) 空手の師範
アッシャー (Nick George) オリヴィアの元彼
若い頃のウィリアム (Jermel Nakia)
9歳の頃のケイト (Mackenzie Hancsicsak)
9歳の頃のケヴィン (Parker Bates)
9歳の頃のランダル (Lonnie Chavis)