キャシーのbig C ~いま私にできること~
The Big C : Hereafter (シーズン4)
制作/Darlene Hunt
第8話 最期の言葉 The Finale
脚本/Darlene Hunt
監督/Michael Engler
プロデューサー/Elicai Bessette
音楽/Maecelo Zarvos
エディタ/Annette Davey
【STORY】
●前回までのあらすじ
アンドレアはデザイナーで講師のアイザックから見習いとして
一緒にニューヨークに行こうと誘われる。
校長はアダムに調子を尋ねる。仲間はみんな遊んでるのに僕は
試験ばっかりだという。
キャシーはショーンに父親と会うことを相談すると、彼は僕らの
ことを嫌っているのだという。しかしキャシーは嫌ってはいない
語る。
ショーンは手術を辞めたことを報告。
移植患者が金持ちのエリート主義腫だったことが気に入らないと
のこと。そしてショーンにとってはキャシーの命の方が重要で
あることを語る。
施設長からキャシーは帰宅した方が喜ぶと思ったというが、
彼女自身はここで死にたいから来たんだと語る。
ポールはキャシーに戻って欲しくなかった。
死ぬのは初めてだからきちんと経験する。
●キャシー
キャシーは既に鼻からチューブを入れている状態だった。
訪問看護師が午後に来る。
名前はイーナ(Marceline Hugot)。電話で話した。
アダムによると感じのいい人だったとのこと。
先生は戦士だ。ガンに戦いを挑んだ結果家に戻れた(Andrea)
あれから4か月もったんだよ。更に今後何年も生きて伝説になる。
ガンを打ち負かすんだ。(Andrea)
健康な人は言うのよね。やめて欲しい。
“彼女は最後までガンと闘った”なんて。
それで死んだらこういうの。“ガンとの闘いに負けた”(Cathy)
つまり敗者よ。死んだからって敗者なの?
死ぬ人がいなきゃ誰も子供を産まない。
“空き”がないから。死は必要よ。つらいけど重要なの。
だから死ぬ人には批判せずにこれだけを言って
「さよなら」「ありがとう」「君は敗者じゃない」(Cathy)
・訪問看護師のイーナ (Marceline Hugot)がやってくる。
これがモルヒネパッチ、そして一応予備の毛布も持って来た。
毎朝様子を見に来るわ。痛い時は薬を使って。
キャシーはあなたの名前をもう一度言ってと頼む。
“イーナ”。祖母の名前。昔は嫌だったけど気づいたの。
もう一人の祖母よりマシだって。“庭師(ホーテンス)”よ。
あり得ないわよね。
ポールはあり得ないのは無駄話の長さだと。
モルヒネパッチは副作用でふらつくことがある。
俺が支えるよ。
酔って見えるかも知れない。
酔いたいわ。(Cathy)
昔お世話した素敵な老紳士は毎朝ジンを一瓶空けてた。薬だって。
いつも裸だった。バール・アイヴスの曲で踊ってた。
ポールはそんな話に興味はないアイナと語る。(Paul)
イーナよ。
何でもいい、妻が病気なんだ。本題に入ってくれ。(Paul)
心配ないわ。いつでも電話してきて。今夜また来るわね。
酷いおしゃべりだ。(Paul)
優しい人だ。話好きなだけよ。礼儀正しくして(Cathy)
ポールはちゃんとできるか不安だと語る。あのおしゃべり女は
完璧なのに俺は足手まとい。
キャシーはお願いだからパパを連れて来てと頼む。
きっとそれが心残りで逝けないのよ。私の病気を知らず電話も
無視。あなたに連れて来て欲しい。(Cathy)
俺を嫌っている。(Paul)
あなたはイーナを・・出かけるチャンスよ。(Cathy)
●父親の元
ポールがキャシーの父の元を尋ねる。
いきなり彼から”訃報か?”と。前回は金をせびりに来たな。
ずいぶん昔の事で利息をつけて返した(Paul)
また金が要るのか?
今はかなり成功してる。自己啓発セミナーをやっているんだ。
用件は「キャシーに会いに来てくれ」。
“クソ野郎”と言われて以来会って無い。
過去は水に流して。
頻繁に電話が来る。どうせまた文句だろう。
父親を貶すのだろう。話すことは無い。
キャシーはもうすぐ死ぬ。死を前にして会いたがってる。
会ってやってくれ。本人が言うハズだったのに口が滑った。(Paul)
なんてことだ。
義務が有る。父親だから。(Paul)
俺はあなたを好きじゃないが会わなきゃ一生後悔するのは分かる。
不公平だが彼女よりずっと長い一生だ。
トランプ大会がある。
バカにしてるのか?外の車の中で待ってる。(Paul)
正しい決断をして俺の隣に座るまでな。(Paul)
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■感想
キャシーはホスピスから追い出されるようにして自宅に戻ること
になるが、保険適用で訪問看護師が付いてくれるようになる。
キャシーの為に周りのものたちは彼女の望むことを叶えようとして
努力する。キャシーの容体は確実に悪化し、最期の執着は
『父親との和解』、そして最期に残したい『自分の言葉』だった。
メリー・クリスマス。
私にとっては平日の水曜日でしたが、誰かにとっては良い日でも
有るし悪い日でもあるでしょうが、良い日である人が多いことを
祈ります。
疲れている身体を鞭打ってドラマレビューを書いている私は
一体何なのでしょうか。頭が痛いので頭痛にEVEでも飲んで
早く寝ます。
前回から気が付いていたのだけど、「変な時計」がホスピスに
飾られていて、時を刻んでいるカットが何度か挿入されている。
前回のエピソードを見た時にジェイミソン家の壁にこの時計の
未完成な絵が掲げられているのを目にした。
時の流れはこのドラマにとっても一つの重要な要素になっており
その流れはイレギュラーであり不条理な時間軸として存在している。
まるで最終シーズンは「Cathy in Wonderland」のようだった。
いやこのドラマ自体がその世界を構成するものだったのだろう。
風変りな人々が登場し、キャシーの世界を支配するガンという名の
病や息子・夫・家族、隣人との関係。母親という責務によって縛ら
れている現実に対して、その縛りを解き放つものの存在が有った
り、病自体がその足かせを解くものとして利用されていたりする。
息子・アダムとの関係は病を抜きにしても一番難しい時期に
あったはずで、その彼をどう導いていくのかはドラマの中で常に
キャシーの頭の中に有ったであろう。
今回最初で最期の酒飲みの父親が登場した。
スペシャルゲストとして父親役を演じたのはBrian Dennehyさんだ。
父親のキャラクター像を見て行くと、息子に拘る母親の姿勢は
彼女の育成環境からの影響が強いと思われる。
酒飲みで海兵隊員だった父親との関係。
ショーンが父親に関して散々貶していたが、それを見るだけでも
どんな幼少期を過ごして来たのか想像できる。
それを反面教師として息子との関係、そして家族に対するこだわり
を見せて来たこと。
しかし父親にしてみれば言い分もある筈であり、今回は同じ子育て
を経験した親としての立場になったり、娘として父親と接したり
して興味深いものとなる。
彼女が頑固なまでに意思を貫くのも父親譲りなのだろう。
■頼るべきもの
生きていくためには何か支えとなるものが必要だろう。
今回は家族そのものが支え合い、更には何の縁なのか助けを
求める人にも助けていく展開になった。
・ポール
ポールが絶望の時には啓蒙・啓発活動中のジョイとの出会いが
有った。必要な時に必要な人と出会う。これがこの世の真理なら
ばいう事ないが、世の中そう甘いことなど一つもない。
ポールが他人の為に掲げたスローガン的ワードは「スイッチを押せ」
だった。
キャシーの立場からすればそのスイッチはどう感じたのか。
彼女もまた最期に残したい言葉を考える。そして出た結論は、
「私は幸せ」だった。
・アダム
キャシーはシーズン4の4話の前半(7話)で、色んな宗教家との出会い
があるが、宗教や聖書に頼るキャシーとアダムの姿がこのドラマの
終盤では深く印象に残る。
聖書に頼るアダムのことを少し奇異な感じで見つめていたもの
だが、終盤になってキャシーがそんな宗教に頼ってみたり、また薬に
よる自死を考えようとしたりして、如何に複雑な状況なのかを
感じさせる。
どの宗教でも自死は最悪なものとして扱うだろう。
宗教と言えば、彼女が色んな宗教家の前で訪ねていた死後の世界の
先にあるとされる天国は「プール」に該当するのだろうね。
プールを作ろうとしていた拘りは自ら安楽の地を捜していたように
思える。
■わずかな違和感
最終シーズンはたったの4話(8話)の構成だった。
「春夏秋冬」のようにして一気に時を駆け巡り、各々の感情の
変化・推移をスライドのようにしてその瞬間を映し出していった
ようにも思える。
最初から全シーズン4の構成だと知っていたら、「春夏秋冬」を
シーズン1ごとに進めていったことであろうが、記憶では
四季を通して描いていった印象もある。
最後に時間を長く持たせたのはアダムが最上級生になるだけに
留まらず、卒業する姿を母親に見せたかったもので、科学の落第
の話をしていた流れから一転して一気に卒業まで進んでいった
ことには少々違和感が残る。
人物描写は丁寧に描いていても時間的な流れに関しては少々雑な
流れにも思えるが、あまり人の不幸なシーンを長く見て居たく
ない視聴者心理なのかな。
またショーンの心情が行ったり来たりでよく分からなかった。
元々よく分からない人だが、結局彼は移植手術をすることを
決断したようだ。その心変わりはキャシーの言葉によるところだと
思うし、妹に対して恐怖に打ち勝つ自分の姿を見せたかった
のかも知れない。どちらにしてもこの流れは少々雑な感じにも
思える。
そしてポールの仕事とキャシーへの愛情の描写が少しページを
抜き取ったかのように話が飛んだようにも思う。
●アンドレア
亡くなることが分かっていてもアンドレアがニューヨークに行か
ねばならない流れは悲しいものだ。
これは軍人である父親の心情にも精通するかも知れないが、大切な
人を守るために軍人になり、生きて帰れるかも分からない道を
選んでいくようなものだ。
アンドレアは後押しが欲しかったのだろうし、キャシーは
残り短い自分の為にアンドレアの未来の可能性を犠牲にしては
いけないとして、今すぐにアイザックの助手としてニューヨークに
行くように促した。
■その他
●最後の言葉
・エリザベス1世「何でも差し出すからしばしの時間を」
・ジョージ・ハリスンは「互いを愛せ」。
・スティーブ・ジョブズは「ああ すごい ああ すごい 魔法でも観た
ように」
・ジェイ・Zは「私の死を嘆かないで 芸術は心に残るから」
・”見ろ デカいぞ”だ(父・ジェイミソン)
・「腹減った」だ。(ショーン)
●セリフ
「裸のグロリア・スタイネム Gloria Steinemとサーフィンをやってた」
ショーンが手術前に仮眠を取った後に目覚めた際に語るセリフ。
■使用された曲
・Game Called Life by Leftover Cuties (Main)
・The Cinematic Orchestra by To Build a Home
・Beetle in the Box by Admiral Fallow
・It´s all right by Vassy
・Stop by Great Northern
・Keep believing by Bob Mould
・There’s Hope for You by William Elliott Whitmore
・Among the Leaves by Sun Kil Moon
■出演者
キャシー・ジェイミソン (Laura Linney) 43歳、妻、高校の教師
ポール・ジェイミソン (Oliver Platt) キャシーの夫
アダム・ジェイミソン (Gabriel Basso) 高校生、15歳
ショーン・トルキー (John Benjamin Hickey) キャシーの兄
アンドレア・ジャクソン (Gabourey Sidibe) 生徒、デブ
アンヘル (Michael Ray Escamilla) 漁師 “Angel”と書いてアンヘル
父・ジェイミソン (Brian Dennehy) 喧嘩別れしている
本人出演 (Isaac Mizrahi) サー・アイザック・ミズラヒ、デザイナー
(Kathy Najimy) キャシーのセラピスト
(Darlene Hunt) ホスピス管理者
コニー・シューラー (Connie Ray) 学校長
マーリーン (Phyllis Somerville) 亡くなった隣人・犬”トーマス”
(Kathy Najimy) キャシーのセラピスト
スーザン・ランド (Bianca Amato) 臓器移植コーディネート
イーナ (Marceline Hugot) 訪問看護師
(David Aaron Baker) 司祭
ウェスリー (David Wilson Barnes) 安楽死の方法を教える人
(Judy Gold) ラビ・女性
(Ramsey Faragallah) イマーム。ヒゲ
レイ・ミルトン (David Andrew Macdonald) ショーンが腎臓を移植
ジャネール・ミルソン (Marin Mazzie) レイの妻
(Jen Sese) 花屋の女性