May 6, 2007
第14話 ピアノ Andy in C Minor
脚本/Gavin Harris
監督/Jeannot Szwarc
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2006年12月4日。
懐中電灯を片手にアンディとカルロスはヴィヴィアン・ハーデン
校長の部屋に侵入する。カギの掛かった部屋も上手く入り込む
とウォッカを盗む。そしてみんなで部屋の一室でパーティーを
すると校長が現れて消灯時間が過ぎているのに何をしているのか
と問う。アンディに対してただでは済まさないと語ると、彼は
ヒーターを壊れていたので暖を取りに来ただけだとしてジョーダン
を語る。今すぐに部屋に戻りなさいと語るが、校長も生徒たち
に折れて一曲踊ったら部屋に戻るのよと語る。
2006年12月18日、アンディ失踪・・・。
ヴェラとリリーは聾学校にいく。
フィラデルフィアに聾学校は数少ないというリリー。
ヴェラはまるで外国に来たようだという。リリーによるとこの
学校は1872年設立したものだという。ヴェラは生徒達が何か
オレのことを指さして何かを言っているようだと語ると、リリー
はヴェラのアゴがドーナツが付いていると言っているのだという。
二人は現場に来ていたスティルマンと合流すると何が有ったのか
と問う。2006年12月18日にこの学校の生徒・アンディ・リアダン
(17歳)が自宅から姿を消したのだという。クリスマス休暇中で
誰もが家出だと思っていたが、掃除していた教師がピアノの
鍵盤に血が付いているのに気が付いたのだという。そしてその
血がアンディのものだということが分かったとのこと。
しかし血がついているだけで殺人とは限らないとし、鼻血を出した
だけかも知れないというヴェラ。スティルマンは聾唖の生徒が
ピアノを弾くことに疑問がないかと問うと、CSUのジェームズに
電気を消すよう頼む。そしてライトを照らすとなんと教室中に
血が飛び散っていることが分かる。「叫んでも誰にも聞こえない
場所だ」とリリーは呟く。
バーデン校長から話を聞くスコッティのヴェラ。
校長は殺されたなんて信じられないとし、まだ遺体も見つかって
いないのでしょと語る。現在探している事を告げ、クリスマスに
学校に残っている生徒は多いのかと問うと、休暇に残っていた
人のリストの提出を求める。アンディの両親共に聾唖であること
を告げる。アンディのケースは珍しいとし、子供が聾唖でも
耳の聞こえる人はアメリカ手話を覚えようとはしないのだという。
子を捨てに来る様なものだという。
バーデンは12年間この学校に勤務しているという。親に見捨てられた
子達を見捨てることは出来ないという。
ヴェラは先ほどからオレのことを生徒たちは指すことが多いが
どういう意味なのかと尋ねると、あなたのことを殺人課の刑事だ
と言っているのだとし、人差し指でのアクションは「ナイフの印」
だと告げる。
アンディの両親・エドとジュリアと遭う。
校長は通訳として付き添ってくれていた。両親によると息子を
殺そうとしている人がいるなんて思いも付かないという。警察は
我々のことをバカだと思って当時はまともに取り合おうとも
しなかったこと。スコッティはそんな無礼な警察官がいたこと
を謝罪し、改めて話を聞く。アンディは人気者だったとし、立派
に生きて来たという。学校には何年通っているのかと問うと、息子
が聴力を失ったのは7歳の時だという。病気で脊髄膜炎が原因だ
ったという。しかし息子は耳が聞こえなくなったことにも
一度も不満を言わず「私たちの世界」を気に入っていたという。
リリーはその「世界」とは何なのかと問うと、自分達の世界で
有り自分達だけの言葉だという。ヴェラが無礼なことを語ると
アメリカの手話はキレイで情緒的だとして一度習ってみたら
どうかと言われる。確かにアンディはイタズラっ子だが人間的
には申し分ない子で成績はオールAだったという。
当時ピアノのある倉庫に入れた人は誰なのかと問うと。校長が
カギを持っており、何年も使われていなかったという。
アンディが居なくなる一日前に有る人にカギを渡したという。
— 2006年 —
エマは学校にやってくる。父親に対して電話で、まるでオリバー
ツイストになった気分だとし、ディキンズの小説のことだと
いう。そんなエマはピアノがあることに気が付く。校長からは
弾けるのかと問われると、幼少期に少しだけ習っただけだという。
校長はアンディとカルロスがやってくるとエマのことを引き合
わせる。彼女はボランティアで一ヶ月来た人だと告げると、エマは
手話で挨拶する。2年間手話を学校で習ったというものだった。
しかしアンディはそんなエマに「勉強し直せ!」と語る。
ピアノを喜ぶと思うのか?として聾唖をバカにしているのかと
問う。しかしエマは振動だけでも楽しめるかと思ったと告げる。
アンディはどうせ誰かの命令で来たのだろうとし、単位稼ぎ
の為なのかと問う。エマは何も知らないクセに・・と告げるが、
君は名門大狙いの偽善者だという。そんなアンディに対してエマ
はあなたは障害者でなく最低野郎だと言い返す。
— 2008年 —
それで学校を辞めたのかと尋ねるがエマは辞められなかったのだ
という。ボランティア精神が学校に来たのではなく、法廷命令で
社会奉仕で来たのだという。彼女は飲酒運転をしたこと。
エマはここに来るまで問題があったがここで良い先生になったの
だという。
アンディの両親はエマのことは知らないという。アンディが好き
なのは仲間だけだという。
ジェフリーズとリリーはエマに遭うとアンディのことを尋ねる。
アンディが消えた日に貴方は学校に戻っているでしょと問う。
パソコンを取りに来ただけだとし、汚名返上して名門大に入りた
かったという。アンディが当時私に言ったことは正しかったとの
こと。彼の事は軽いヤツだと思っていたが、初めて遭った2日後
に彼は私の元に謝罪の為に逢いに来てくれたのだという。
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2006年のクリスマス直前に失踪した聾学校の生徒・アンディ
の件で動きが有る。遺体こそ発見されなかったが学校のピアノ
を掃除している教師からピアノの鍵盤から血痕が見つかった
として調査した結果、室内から致死量に該当するくらいの
血痕が床や壁に飛び散っていた跡が見つかる。当時は家出だと
考えられていたが、これは殺されたものだとして、遺体を隠した
場所を必死に探す中、関係者に事情を聞いていく。
価値感の違う人同士の対立の構図がここ最近のエピソードの
殺人の原因として描かれているもので、それは当然価値感が違うので
殺人に発展してしまうのだろうけど、同じ仲間として一度は交じり
有っていたものが、新しい世界に向かおうとする人に対して、
素直に見守る事が出来ず、嫉妬心に苛まれて殺害に発展してしまうと
いうのは悲しいものだね。
今回葛藤点として描かれたのは、耳が聞こえる人と聞こえない人の
間で起きるもので、同じ世界で生きているのに、それぞれの間には
隔絶に近い別の世界として存在していることが有り、健常者として
はなかなかそういう世界が有るということに触れる機会がないので
色々と気づかされるところも多い話だった。
互いの世界に行ったり来たりすることが容易ではないということが
描かれた格好で、その決断には当事者も含めて周りの人たちの
気持ちや視線というものに触れていくことで事件の全貌が分かっていく
という段取りだった。
耳が聞こえる聞こえないということが今回のドラマの中では
象徴的なものとして描かれているけれど、障害云々は抜きにして、
基本的に人々の感情の部分に於いては、共通するものが有るという
ことが分かる。他人との間で形は違えど大なり小なり同様のことは
起きているだよね。
先週日曜日に放送していた「ウチ来る」の中で、劇団出身の吉田羊さん
がゲストとして登場したけど、劇団の世界から映像の世界に脚を踏み
入れる際に東京スウィカの旗揚げメンバーである比佐廉さんたちとの
葛藤の話が取り上げられていた。吉田羊さんが劇団に詳しい話をせず
に立ち去ってしまったということで、疎遠な関係になってしまった
みたいな感じだったけど、なかなか言い出せないという気持ちも
分からないでもないし、このドラマの中で起きていることとも一部
共通する部分が有りそうだ。
聾唖を題材にしたドラマというと「スイッチ ~運命のいたずら~」
を思い出す。出産時に取り違えられてしまった子供がアイデンティティ
の問題に苦悩すると同時に互いの両親もまた同時にその現実に向き合
っていく物語だった。その子供の一方の人物が幼少期に発熱によって
耳を聞こえなくしてしまい聾学校に通っているという設定だった。
共同生活のような形で生活していくウチに互いの生活・世界観という
ものに触れていく物語だけど、これだけ長い時間をかけて生活しても
理解し合えることとし合えないところが有る。
耳が聞こえるチャンスがあるというのに周りに気兼ねして人工内耳
に踏み切れないことへの懸念すべき要素はいくつも存在する。
周りとの人間関係はもちろんのこと、それに付随する形で状況が
一変する可能性についても言及され、不安さと共に希望に満ちる部分
との間で綱引きが行われていた。
アンディは人工内耳をつければ、障害者としての資格を失うのかどうか
は分からないけど、障害者として扱われているウチには守られている
部分も多いと思うし、自尊心が満たされる部分も有るハズだ。
彼の世界・コミュニティに於けるアンディの人気の高さは
見ていても分かるものが有るけど、別のコミュニティに脚を踏み入れ
れば、そうしたものは一切取り無くなり、逆に偏屈になるくらいの
仕打ちが待っているかも知れない。公的支援など受けられなくなること
も有るのだろう。
人は自分にはないものを持つ人に嫉妬するもので、先天性の聴覚障害者
と後天性の障害者の違いというものが、同じコミュニティの中でも
嫉妬の対象として存在してしまうという流れが切ないものが有った。
興味深いのはショパンの曲を「彼の和音は視覚的だ」と表現したこと。
ピアノそのものを弾く彼に対して分かりやすい形の視覚的嫉妬を
目にしたけど、同じ世界に居ても人が変われば状況・状態も違う訳
で、なかなか難儀なものがあるなという感じだった。
ヴェラが手話の勉強をするという光景を見ると、彼が単なる一刑事
としての姿ではなく、理解出来ないものにも理解を示そうと努力する
姿が有り、シーズン5になってからのヴェラは別人のようだ。
今回の被害者の両親が人工内耳の手術をすることになるアンディに
対してかけた言葉は、話を聞いていたミラー自身の心にも深く
突き刺さるものも多かっただろう。
ミラーは
「昔の私をあの子が知ったら絶対に傷つく。それだけは出来ない」
と語る中、
手術しようとするアンディに対して父親がかけた言葉は、
「息子を失うことになったとしてもそうすべきだったから。」
ラストはヴェロニカとジャロッドを再会させるシーンに繋がった。
超簡単な手話の本を読むヴェラ。
スコッティとのやりとりで覚えた手話を披露する。
「昼飯奢れ」。
スコッティはヴェラに対して
「ポーカーの貸しの50ドルを返せ」ってどう手話で行うのか?
としてヴェラに牽制した後、手話と称してヴェラが”中指”を立てる
辺りが笑えた。彼は聾学校で”人差し指”で指されていたけど、
その意味はナイフだと言われていたり、リリーが何処まで手話に
精通しているか分からないけど、周りがヴェラを指さす中、
「ヴェラのアゴにドーナツが付いている」と言ってるよと語る
流れをみると、ヴェラが完全にいじられキャラになっていて面白い。
■使用された曲
・SOS by Rihanna
・Talk by Coldplay
・Gravity by John Mayer
・Look What You’ve Done by Jet
・Look After You by The Fray
■検索用キーワード
・
リリー・ラッシュ (Kathryn Morris) 殺人課の刑事
スコッティ・ヴァレンズ (Danny Pino) 殺人課
ジョン・スティルマン (John Finn) リリーの上司
ニック・ヴェラ (Jeremy Ratchford) リリーの同僚刑事
ウィル・ジェフリーズ (Thom Barry) リリーの同僚刑事
キャット・ミラー (Tracie Thoms) 麻薬課刑事 s3#8から
ジャロッド・ジョーンズ (Dondre Whitfield) 元麻薬の売人
ヴェロニカ・ミラー () 娘
2008年
アンディ・リアダン (Ryan Lane) 聾唖者、17歳、被害者
エド・リアダン (Bob Hiltermann) アンディの父
ジュリア・リアダン (Kalen Feeney) アンディの母
ディーン・ビビアン・ハーデン (Lilli Birdsell) 校長
エマ・ウォーカー (Colleen Foy) 健常者、酒気帯び運転で社会奉仕
リア・オファティ (Shoshannah Stern) 嫉妬深い生徒
カルロス・ラミレス (Michael Davis) アンディの友人
アル・ウォーカー (Joe Sabatino) エマの父
— (Evelina Gaina) Deaf Student
— (Lisa Hermatz) Deaf Secretary
— (Lance De Leon) Deaf Student
— (Michael Anthony Spady) Deaf Teacher
— (Alex Parlar) CSU