第10話 情報提供者 Backfire
脚本/Adam Belanoff 監督/Sheelin Choksey
【ストーリー】
夜のオフィス、シャロンは弁護士のペイジに対して被害者が
売春婦だからという理由で捜査の手がゆるむと思ったら大間違
いだと語る。今回の事件は背後にある大きな犯罪の一角だと
そういっているのだというペイジ。依頼人のジェイソン・ゴス
がブリアナ・マティスを死に追いやった訳ではなく第三者の
命令に従っただけだという。組織犯罪が絡んでいる証拠だとし
歯車の一つを取り除いても機械は止まらないとして司法取引を
持ちかけてくる。現場には地方検事補のエマやタオも同席して
いた。ブリアナを死に追いやった人の名をゴスに言わせてと
すると、ペイジは法廷で過失致死が認められた後でだと語る。
タオは過去の事件を解決し未来の犯罪を防ぐ情報の提供は?と
問うと追訴しなければ応じるという。エマは組織犯罪が絡んで
いるという証拠を一つは最低言ってもらうと告げる。
あくまで仮の話だとして、ゴスは6月頭に同じようなことが有っ
ただろうとし、エンジェルズクレストで、そして7月にもマルホ
ランドで女性が車から落とされた筈だという。
プロペンザは取調室でのそんな会話を聞いて、サイクスにFBIの
データベースを調べる様に告げる。6月1日から8日までの条件で
と。そしてサンチェスに対してマルホランドの件を調べる様
つげ、7月の中旬だと語る。
タオは取引しても保釈は無いとし、依頼人の皮膚片が爪に残って
いたのだという。しかしペイジは車から落ちるのを止めようと
した証拠だとして、ブリアナは興奮して車のバックシートから
飛び降りようとして止めたのだと語る。故意に突き落とした
証拠はないだろうとするが、そんなの判事は信じないとし、運転手
を見つけて証言させるという。カリフォルニアには免許を持つ
人が2300万人は居るぞというペイジ。被害者の遺体を発見した
と通報してきた証人もいるとするが、今後もまだ犠牲者は出る
かもしれない事を語る。
そんな中検索していたサイクスは6月3日にエンジェルズクレスト
で、グレン・ランドールの遺体が発見されているとし、ストリッ
プクラブの経営するストーン・クワリー社の会計士だという。
ゴスとブリアナもそこで働いているという。また7月13日には
マルホランドで20代前半の女性が遺体として発見されていると
サンチェスは語る。
シャロンは黒幕がいるという確固たる証拠がない限りは認めら
れないことを告げると、実際の罪よりも遙かに甘い判決なんて
無理だという。俺たちの乗っててブレアナが落ちた車はベンツ
の新Sクラス、色はシルバーだという。依頼人は運転手の氏名
と車を明かすが判決が下った後だと語る。
判事への供述内容は?と尋ねるエマ。
法廷。
8月8日午後23時30分、俺の勤め先のクラブに行った。そして
ブレアナの事を探したこと。ブリアナを乗せてマルホランドの
西へ行きヒバリークレスト付近でドアを開けて彼女を外へ出し
たという。グローブ判事はそれで死亡したのか?と問うと、
何故そんな野蛮な行為をしたのかと問う。19歳の女性を突き落
とすという悪意に満ちた残虐極まりない行為に及んだのか?と
問う。エマは裁判長に対して供述内容は取引で合意済みだとして
追加質問の用意はしていないという。しかし判事は私が必要と
思えば質問をさせてもらうという。今の質問は依頼人を窮地に
追い込む可能性があるとするペイジに対して、女性も窮地に
陥っていたのではないかと皮肉る判事。何故君とエマが被告人の
行為を殺人ではなく過失致死と判断したのか知りたいのだとい
う。犯行は個人の意志か?指示なのか?。頼まれたというゴスは
金をもらって引き受けたのだという。依頼した人物は?と尋ねる
と判決が下った後に話すという。それを聞くとそれがおかしい
のだという判事。シャロンは全てはこの先に起こりうる犯罪
を防ぐためだと主張するが、エマは被告人の協力は過失致死に
減刑に値すると判断したのだと語る。
サイクスはそんなやりとりを聞いていてサンチェスに対して恋人
のミスねと語ると、サンチェスはエマは恋人ではないとし、
まだ裁判は分からないと語る。
しかし判事はこれは典型的な雇われ殺人だとし、被告には一切
良心の仮借も感じていないと
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■今回の事件
ストリップクラブを経営するストーン・クワリー社という組織
の用心棒ジェイソン・ゴスが、走行中の車からブリアナ・マテ
ィス(19歳)を投げ捨てて殺害した事件。
冒頭からその事実は発覚しているが、問題となっているのは
ゴスは第三者の命令によって殺害を行っていること。
当然用心棒というくらいだから組織では下っ端。
誰の命令なのか組織の全貌を語るのを条件に第二級殺人を
過失致死にするよう要求してくるもの。
検事補のエマとシャロンがゴスに要求したのは、何よりも
「証拠」だったし、判事のグローヴが求めたのは「厳罰」だった。
その温度差を埋めることが出来るのか。
■刑事ドラマの定番のテーマ
テーマは実にありがちなもので、「大義」を取るか「信念」を
取るかというところで葛藤する内容だった。
組織壊滅させる為には個人を犠牲にしなければならず、個人の
罪を追求すれば大義を失い、今後起こるであろう被害者を見逃す
可能性につながってしまう。
罰する方としてはどうすることが一番のベストなのか。
今回の枠組みで見ると、司法と捜査側の対立の構図となり、
その中間にあるエマ検事補はこれまで司法側の人間として
動いていたけれど、今回は捜査官の立場から主張している所
がある。ただこの中には、19歳の少女ブリアナの遺族が出て
来ていない為に、加害者であるゴス自身をどうしたいのかという
強い圧力が足りなかった。
ここのところアメリカのドラマは司法取引を多用しすぎている
ところもあるな。
ゴスが強要されて殺しているのであればまだしも、この人既に
過去に於いても2人くらい殺しているみたいだしね。
■アメリカの捜査の難しさ
守秘義務とか黙秘権とかこの辺は先進国ならばあるのだろうけ
ど、取引中に会話した内容を元にした情報に於いて、取引が
決別するとその情報は使えなくなるという辺りがなんとも面倒
くさい。
「シルバーのベンツ」だと分かっているのにそれを探すことが
出来ないところは、驚くほど厳格だったし、そんな一つのワード
が何処から出てきて捜査につながったのかなんてことを法廷で
追求していくところは、それこそ言葉遊びになる可能性があり、
大義を見失っている気がする。
■ドラマを盛り上げた要因
同じ捜査官同士でも連邦捜査官と市警察の間でも、同じ捜査を
しているのに守秘義務・秘密事項という名の下で情報を共有で
きない不便さがあるところが興味深い設定だったね。
FBI捜査官のショーがベンツのことを口にすればあっさりと
捜査が進む筈なのに、手出し出来ないところが厳格すぎる所
があるよな。
こういう時にフリッツィーが居れば・・・
しかもこういう時に限ってテイラーも自己主張どばかりに
シャロンたちに対して「ジョンソン本部長補佐が居れば解決
出来たぞ」なんて発破をかけるのだから嫌らしい(笑)
フリンは
「同感だ。そして俺たちをまた法廷に召喚される」として皮肉
っていたけど、両者の捜査手腕に対してどう考えているんだ
ろうか。
それにしてもブレンダって今頃何をしているのかな。
■人間は嘘をつく
嘘にも色んな種類があると言われている。人を傷つけるもの
だったり、傷つけることを避けるために嘘が有ったり・・
シャロンたちが取調室でついたゴスや弁護士に対する嘘は、
かなり厳格な法律遵守の中で起きているドラマの中に於いては
相当リスクの多きものだったように思う。
ショー捜査官が協力者であるブリアナに対して守ることを
「約束」して送り出したけれど、安心させる為とはいえ、
ベテランの刑事が居れば「守れない約束はするな」と叱られそ
うな台詞だった。
そして何よりも毎回のようにドラマで示唆しているのはラスティ
に対する視線であり、ラスティ本人もまた色々と嘘をついて
いるところがある。自衛のための嘘だったの、他人を傷つけない
為の嘘。なかなか難しい問題だね。
■ラスティの行動
ラスティがクリスと別れようとしている意図は何なのか。
ラスティのゲイ説、ラスティの生きる為に行ってきた売春に
対する罪悪感故に自らを汚いものとして蔑んでいること。
ラスティが証人故のリスクが高い為に周りの者を傷つけない
ために近寄らせないようにしているところなど、様々なものが
あるけれど、いずれにしてもラスティの問題は犯人が有罪に
ならない限りはなかなか安心することも出来ないし、難しい
ところだ。でもラスティがゲイでクリスと別れたいと考えている
のであれば、今回の理由付けは一番説得力があるものとして
存在していた感じがする。
■司法同士でも争い
FBIと市警察の間でも葛藤が起きれば、今回は罪を問う側の検事
局や裁判の判事との間でも葛藤が起きた。
エマはグローヴ判事に対して死ななくても良い命を失ったこと
を口にしていたけれど、私は判事の圧力が有ったからこそ
よりよい結果に導かれたように見えたな。
上述したけどシャロンの捜査方針なので仕方がないとはいえ、
最近はどうも司法取引ばかりを安易に多用している感じがする
んだよね。事件解決には手っ取り早い方法だとは思うのだけど、
安易に取引するのは被害者の遺族に対して少々考え及んでいない
部分があるのではないかという気がします。
今回はブリアナの家族が出て来なかったのでそういう葛藤が
少なかったのだけどね。
喧嘩していたエマとサンチェスの仲がちょっぴり元通りに
なりましたね。
■使用された曲
■出演者
シャロン・レイダー (Mary McDonnell) FIDから重犯課へ
ルイス・プロペンザ (G.W. Bailey) ベテラン
アンディ・フリン (Tony Denison) プロペンザの相棒
マイク・タオ (Michael Paul Chan) 分析力
フリオ・サンチェス (Raymond Cruz) ギャング捜査に強い
バズ・ワトソン (Phillip P. Keene) カメラ
エイミー・サイクス (Kearran Giovanni) 特捜班から異動
ラスティ・ベック (Graham Patrick Martin) 母親が失踪中
モラレス (Jonathan Del Arco) 鑑識
ラッセル・テイラー (Robert Gossett) 新本部長
エマ・リオス (Nadine Velazquez) 地方検事補
クリス・スレーター (Madison McLaughlin) ラスティの同級生
ピーター・ペイジ (Steve Valentine) ゴスの弁護士
スコット・ショー (Callard Harris) FBI捜査官
グローヴ (Ron Marasco) 判事
ジェイソン・ゴス (Nick E. Tarabay) ストリップクラブ用心棒
ブリアナ・マティス (Rita Volk) 19歳、売春婦、協力者
バーンズ (McKinley Freeman) 捜査官
— (Jeaneen Tang) Technician
グレン・ランドール () ストーン・クワリー社・会計士
ジェリー・ストーン () ストーン・クワリー社・組織
マーク・ハル () 政治家
エリン・ヴァレンティン () 売春婦、ブリアナの仲間
コリー・スターク () 運転手役