アストリッドとラファエル 文書係の事件録
(Astrid et Raphaëlle) 2020 , FRANCE
制作/FRANCE TÉLÉVISIONS、JLA PRODUCTIONS
、Be-FILMS
、RTBF (Télévision belge)
原作/
制作/Alexandre de Seguins、Laurent Burtin
プロデュース/Jean-Luc Azoulay、Jean-Sébastien Bouilloux
https://www.nhk.jp/p/astridetraphaelle/ts/PG1M4JJQQV/
第7話 フルカネリの指輪 Fulcanelli
脚本/Alexandre de Seguins、Laurent Burtin
監督/Frédéric Berthe
【STORY】
■地下
フランス都心部の地下には若者たちが集まる地下
都市のような場所がある。毎晩のようにアルコール
を飲んで音楽を流して踊るクラブのような所。
カップルの男女(Charlie Joirkin)(Louis Desnot)
がキスしていると、突然衝撃音が鳴ると共に
辺りは一瞬にして砂埃と化す。
天井が崩落し、瓦礫の下には誰だか分からない
若者が下敷きになっていた。助けようとしたが
既に体は冷たくなっていて、ナイフで刺された
傷のようになっていた。
■ミシェルの店
ラファエルは姉デルフィーヌ(Herrade Von Meier)と
逢う。彼女は最高のオーシャンビューのホテルに
泊まったがシャワーのお湯が出ず、フロントに文句
を言ったとして語る。1泊350ユーロもするのに
黙って払う私では無い。そんなどうしようもない話を
聞いていると、ミシェルがクロワッサンを持ってくる。
デルフィーヌはラファエルに「パパにはあなたから
電話するように」と言うが、なんで私からなのかとして
断る。そこに事件を知らせるメッセが届く。
「15区で殺人事件が発生した」
仕事に行こうとするラファエルに対してデルフは
「誕生日おめでとう」と語るが、本当は明日が
誕生日だった。
この店でパーティーをやると姉さんたちにも知ら
せたけど来られるか?と問う。一応スケジュールを
合わせる様に努力するというと予めプレゼントを渡して
おくという。
突然小切手に金額を記入し始めると、それを見たラファ
エルは受け取るまでもなく店を出て行く。
■事件現場へ(地下道)
ラファエルはアストリッドと合流する。
アストリッドに対してラファエルは先ほどの小切手の話
をする。姉は完璧なマダムで私とは大違いだという。
現場は地下であり、閉所恐怖症だとキツイ場所だとし
アストリッドに大丈夫かを問う。
ここは地下20Mだが等間隔に換気口が開けられているし
この場所を熟知した専門家が付いているから大丈夫だと
いう。
初めてカタコンブ(地下墓地)を見たというラファエルに
対してここは採石場跡だとし、採掘の石灰岩は建築に使わ
れたというアストリッド。
赤いヘルメットの案内人によって遺体発見現場へ。
アストリッドは靴が汚れないように靴カバーをつける。
・アルチュールは若者たちに話を聞く。
ここではいつもパーティーをやっているという。
ラファエルが遺体について尋ねると、知らない人との事。
ただし集まる人の多くは知らない人たちばかりで、その場
限りで集まり解散するものだという。
鑑識は遺体が身につけていたIDを見つける。
「軍の認識票」であり、名前はガブリエル・アンリと書か
れていた。見た目の年齢は25歳前後なので、きっと家族の
ものだろうと。この認識票は恐らく第二次世界大戦(1939-
1945)のもの。
心臓に刀剣による切創がある。
アストリッドは遺体を見る。
状況証拠から見て被害者はパーティーの参加者ではない。
岩の下敷きになったのではなく一緒に上から落ちてきた
ものだと。
遺体の身元を確認するものが軍の認識票だけでは特定は
難しい。ガブリエルが家族とは限らないこと。
アストリッドは名前に覚えがあるので一度資料局に戻る
という。最近捜査資料で見た名前。
ラファエルは被害者が崩落前にどこに居たのか調べると
いう。地下の坑道は280kmに渡る迷路。
崩落の位置を地図に書いて地上の地図と重ね合わせると
いう手があるとアストリッド。
ラファエルは採石場の調査員がいるので、調査技師
(Majid Berhila)に話を聞きに行くという。
・調査技師に聞く
技師は崩落のタイプを聞いてくる。
「陥没」「沈下」「ただの崩落」。
また
「天井の崩れ方は円形だったか?」
ラファエルは確かにそうだとすると、それなら陥没だと
いう。若い連中が危険でも集まるので何時か崩れると思っ
ていたという技師。
遺体が元々有った場所を突き止めたいことを告げると、
技師はもう突き止めていると語る。今からそこに調査に
いくのでラファエルも同行する。
■ジュッス家
ジュッス家の夫婦、夫(Michel Robbe)、夫人
(Béatrice Costantini) が住んでいる土地・建物だった。
二人はここに引っ越して長いのかと尋ねると18年間住んで
いるという。夫人は何か有ったのかと尋ねる。
すると調査機を使って空洞を調べていた技師からここに
反応があるとし、1メートル四方くらいの空洞があることを
聞かされる。土が掘り返された跡。夫婦は週末に少しだけ
庭いじりをしたが異常は無かったという。ここはただの
空洞ではなく墓だったとし、誰かが人を刺し殺して埋めて
いたことを語る。
■パリ警察署 / commissariat de Police
ラファエルはデスクで事件について調べていると、そこに
電話が鳴る。相手はマチルド・ニールセン(Elisabeth
Mortensen)からだった。ラファエルがアストリッドを
知っていることに”奇跡”という言葉を使う。
「先日、療養所でお会いした時に一緒に居た子が
アストリッドなのか」
しかしラファエルは言う。
「連絡したのは時期尚早だったかも知れないこと」
「アストリッドの方が逢う覚悟が出来ていない」
「あの子はなんと言っているのか?」
と問うがラファエルはアストリッドが来たので電話を
適当に誤魔化して切ってしまう。
アストリッドには「友達が振られた個人的なこと」と
して語ると、彼女は個人的な会話は得意では無いので
特に聞きたくないとのこと。更に捜査の話の方が落ち着く
のだという。
アストリッドはガブリエル・アンリに関する資料が有った
ことを報告する。ただし資料は破棄されたこと。
一ヶ月前に処分対象になったとし、捜査資料は50年間
保存された後に歴史的に価値のあるものはアーカイブに
保管されるが他のは破棄されるのだという。ガブリエルの
件は破棄された。
「クソっ、むかつく!」
「はい、クソです」
しかしアストリッドは破棄される前に資料をざっと目を
通していたので覚えていた。
破棄されたのは彼の失踪に関する捜査資料。
1952年3月に捜査が開始され、1961年11月に打ち切られた。
彼に何が起きたのか分からず仕舞いだった。
しかしラファエルはそのガブリエルは別人物ではないか
という。手首にしていた認識票は骨董品店で買ったもの
かも知れない。
・会話中にアルチュールから呼ばれる
アルチュールはガブリエルの記事が掲載されている新聞
がネット上にあがっていることを語る。
1952年失踪し、『捜索願』が出されていた。
当時はかなりの話題になったようで、遺体の写真と掲載
された写真を見比べてみる。
今朝の遺体はまだ20歳くらいに見られたので、現在生きて
いるとすれば実年齢は90歳くらいだと。
■検視官室
フルニエは遺体の所見を語る。
体の片側は無傷だが反対側は腐敗が進んでいること。
アストリッドはこれは間違いないとして、遺体が段階的
に乾燥していく過程で脂肪の喧嘩が起きていること。
体内のリパーゼと微生物酵素により脂肪が加水分解された
のだという。それを聞いたフラニエは屍蝋化したのかとし
つじつまは合うという。ただし遺体に脂肪が多く、アル
カリ性で酸素に触れなければ・・。滅多に無いがあり得なく
ない。
ラファエルの為に平たく言うと、
『特殊な条件が重なり遺体が腐敗しなかった』
のだという。
「ミイラ」なのか?。
「その通り」
「包帯が有りませんが・・」
認識票は彼本人のもので死亡したのは失踪した年である
1952年3月13日。
あの夫婦が来るずっと前から70年近く埋まっていた。
もう一つ、胃の内容物から出てきたもの。
『指輪』。
死ぬ直前に飲み込んだなんてよっぽど大事なものだった
筈。ただの指輪ではない。殺しの動機になるものだ。
『スピリトゥス・フルカネリ』。
上の記号は暗号のようだ。
そのように語るアストリッドにラファエルはあなたなら
ば解読できる?と問う。
【感想】
ドラマを見ると如何に人間は金に執着し、金に対する
価値観の違いから醜く見えたり人となりの品格が見られる
のかという内容となっている。
今回の事件でも金欲しさの犯行がそもそもの元凶で有った
し、私生活に於いても冒頭から誕生日プレゼント
を渡す姉らしき人物がプレゼントそのものを渡すという
よりも小切手を切って渡そうとする姿に現代的・現実的
な事とはいえ、家族との関係を軽視している感じしかしない。
実はこの辺はアストリッドの母親との関係とも精通する。
無責任に娘を捨てて出て行った親だが、本当のところでは
どんな意味をもって家を出て行ったのかは謎のままだ。
人の欲には際限が無いが、それが他人を傷つけるものだと
するならばこれ程イタイものはない。
指輪の記号の謎を解き明かすことに執着するのは悪くは
ないし、錬金術に対する執着も悪くは無いが、その過程
で他人の執着を横取りしようとするものの姿がある。
真相を知ろうとして人を誤って殺してしまったケースも
今回は有った。
またアストリッドの母のように家から出て行ったり、
今回は勝手にコンタクトを取ってきたりと身勝手な振る
舞いを取る人物も居る。
幾つかの”奇跡”とか”偶然”が散見する事件に対して
それを含めて真実を解き明かしていく。
興味深い流れとして、
・90年前に失踪した人物の遺体が発見される
・何故遺体は殺された当時のまま残されていたのか。
・遺体の胃の内容物から出てきた指輪が意味するもの。
・古い遺体故に関係者がどれほど生存しているのか。
・生前被害者が何をしようとしていたのか。
そして私生活上では有るが、
・アストリッドとラファエルは同じ日・同じ年に生まれた。
・アストリッドの母・マチルドが少しずつ娘の前に近づく。
・複雑な家庭環境
遺体は分かってみると時空を越えて来たようなもので、
失踪したガブリエルの家族はその時から時間が止まって
しまっている。
今回の事件被害の家族とアストリッドの話は比較するのに
面白い素材となっていて、一方は逢いたい思いやどうして
失踪したのかその原因を知りたがっているが、アストリッド
にしてみれば割り切るようにして、母親は既に亡き者として
扱っている。
■不可解な物事
今回の流れを見ると不可解なことが意外と沢山有る。
・被害者のガブリエルが失踪した当時、相当大きな扱いで
世間を騒がせた事件だった割りに、既にアーカイブされる
こともなく破棄されている。原則捜査資料の保存は50年
だそうだが、歴史的価値のある事件に関しては保管される
のではないか。
・アドリブ的行動が多くなったアストリッドは喜ばしいこと
だが、突発的な行動の嫌いな彼女はルーティンを無視して
意外と世界を広げている光景がある。
自助会に行ったり、ラファエルの家に予告も無く訪れたり。
・日本のドラマでも全く同じだが、上司が事件解決の流れを
毎回妨害しようとする。
「60年前の事件で捜査は打ち切りになっている。忘れろ」
・情報の漏洩
警察官(デルマール)がマスコミに情報を流していた為に、
ドラマでは常に捜査官の一歩先に犯行が行われていく。
この警察官の情報漏洩で一人死んでいるので相当罰は大きい
のではないか?
■事件の重要関係者
・アタナシウス
エニグマ誌で色々と面白い記事を手当たり次第に書いて
いる作家。
・トマ・アンリ
殺されたガブリエルの息子で、母親は昨年息を引き取った。
あと一年生きていれば真相が分かったのにね。
・エチエンヌ・ラロッシュ
ガブリエルの従兄弟で現在病院に入院している。
カトリーヌ介護士によると娘さん以外の面会はないとの事。
病室に入ると車椅子の上で死んでいた。
・ソフィー・ラロッシュ
ラロッシュの娘。
「父は親戚とも絶縁状態だった。」
「父はある一家(アンリ家)を人生から抹消した」
しかし本来ラロッシュと友人であり従兄弟であるガブリエル
とはパリの地下鉄拡張工事の労働者として一緒に働いて居
た。
・カトリーヌ・ルベール
介護士をしている彼女。ラロッシュの部屋に案内して
くれた人。
何気に病院で重要な人に会う確率が高い・・先日には
ラファエルはマチルドに逢っている。
■科学捜査
現場捜査に於いて最近のアストリッドは用意周到だ。
元々そういう性格的なものも有るのだろうけど、冒頭での
現場では靴パットを持っていたし、ラロッシュが亡くなっ
た現場に於いては証拠保全のためにラテックスか何かの
手袋をハメている。
『粉のついた本・・3ページ分破られていた』
『指紋がつかないように犯人も手袋をしている』
■アストリッドに関すること
●融通の利かないさを利用する
バシェールから捜査中止を命じられたことも有り、彼女は
「上司の命令は絶対の筈」「結果が無効になる」
という事で捜査に難色を示す。
しかしラファエルはアストリッドがまだ指輪の謎を解いて
いないことを知って、
「捜査は辞める。まずあなたに預けた指輪を返してもらう」
●「社会力向上クラブ」
今回はウィリアム、ブレワ、マックス、アリス、ヴィンセ
ントなどが参加していた。
アストリッドはラファエルの誕生日パーティーのことと
プレゼントの事を相談しに行った。また最後に指輪の謎、
アルゴリズムを解くのを手伝って欲しいという。
『自分にとってその人は何か。』
●プレゼントは”指ぬき”
日本では約束をする時には”指切り”げんまんである。
ぬくのと切るのはどう違うのかという感じだけど、
ウィリアムのアドバイスはこの指ぬきによって役に立った
と言えるのか。
●アストリッドがプレゼントを嫌う理由
今回唯一回想シーンがあった。
アンギュスが生きている際にアストリッドの30歳の誕生日
のことに言及していたので最近まで生きていたのだろうか?
「地球が太陽の周りを30周しただけ。その日を祝っても
何の意味も無い」
「プレゼントをくれた人の前で開けた時、気に入らない
と反応に困るからだろ」
アンギュスは「パズル、オールド&ニュー ホフマン教授著」
重要のパズルをテーマごとに分類しリストアップした初版
本。
■その他
●「フルネカリ」とは誰のことなのか。
錬金術・・鉛を金にする技術を身につけたとされる
スピリトゥス・フルカネリ。
「エイリアンは既に地球にいる」と言う記事を書く
ENIGMA誌では、誰なのかを追っている。
カミーユ・フラマリオン、ウジェーヌ・カンスエリ、
ガブリエル・アンリ。
この三人の誰かなのでは無いかとされた。
そのENIGMA誌では、
20歳そこそこで金持ちになった上記のメンバーをピック
アップ。
「賢者の石」を使って鉛を黄金に変えたという嘘を流布
する。
●アストリッドとラファエルの誕生日
偶然にも同じ日が誕生日だった。
同じ年・同じ日に生まれたパリジャンは2230人。
世界では24万4千人いる。
アストリッドはプレゼントを用意出来なかったが、
「友達」という言葉を贈る。
「私はそう思う。友達で居たい」
彼女の秘密部屋でその事に一人悩む姿。
色々と文字を広げてその関係図を作っていた。
友情(L’Amitié)社会的行動(agir en société)
外(le monde extérieur)、友達(les amis)、私(MOI)
●ルルスの円盤
中世の修道者が考案した装置。
アンリ二世ま三日月暗号箱と呼ばれるもの。
アメリカのドラマを見ていると稀に旧ソ連とのやりとり
の中でこういう暗号装置を使って暗号のやりとりをして
いた事が描かれている。
破られた三ページにはこれが書かれていた。
因みに指輪/錬金術の謎に関しては、【リンを製造する方法】
だった。
【SOUNDTRACKS】
・
【出演】
アストリッド・ニールセン (Sara Mortensen) 犯罪資料局・文書係
ラファエル・コスタ (Lola Dewaere) 刑事・警視
ニコラ・ペラン (Benoît Michel) 刑事
カール・バシェール (Jean-Louis Garçon) 刑事・警視正
アラン・ガイヤール (Geoffroy Thiébaut) 犯罪資料局・局長
アンリ・フルニエ (Husky Kihal) 監察医
アルチュール・オンギャン (Meledeen Yacoubi) 警部補
アンギュス・ニールセン (Aliocha Itovich) 父、警察官
テオ・コスタ・ルジェ (Timi-Joy Marbot) ラファエルの息子
16歳のアストリッド (Sylvie Filloux) 学校を辞めて
アタナシウス (Daniel Mesguich) “スピリトゥス・フルカネリ”の研究・作家
マチルド・ニールセン (Elisabeth Mortensen) 母
ウィリアム・トーマス (Jean Benoit Souilh) “大人の自閉症友の会”
マックス (Clément Lagouarde) 自閉症、長髪
アリス (Lizzy Brynn) 自助会・メガネ
ブノワ (Clément Langlais) 自助会・ヒゲ
ヴィンセント (Vincent Chalambert) 自助会
デルフィーヌ (Herrade Von Meier) ラファエルの友達
カトリーヌ・ルベール (Marie-Bénédicte Roy) 介護士のトマの叔母
トマ・アンリ (Raphaël Almosni) 息子
ソフィー・ラロッシュ (Stéphanie Pareja) ラロッシュの娘
アヌーク (Sonia Zonenberg) ラファエルの学友。三つ叉話
(Alexandra Jussiau) エクアンのルネサンス美術館キュレーター
(Michel Robbe) ジュッス主人
(Béatrice Costantini) ジュッス夫人
(Charlie Joirkin) 若い負傷者 1
(Louis Desnot) 若い負傷者 2
(Olivier Colignon) 制服警官
(Majid Berhila) 地盤調査技師
(Zeka Laplaine) 社会保障機関(INPS) 調査官
(Aleksandra Yermak) Employée documentation
(Nicolas Ullmann) ラファエルの連む仲間
(Marie Courandière) ラファエルの友達
ガブリエル・アンリ