第5話 絶望の淵 Episode #3.5
監督/Jeremy Webb 脚本/Julian Fellowes
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【前回までのあらすじ】
株の失敗でダウントンを失いそうになるがマシューの遺産に
よって救われた伯爵。イーディスの投稿分が新聞に掲載され
る。「伯爵令嬢、女性の権利を主張」と。執筆者としての
新たな道を見出そうとする。シビルの夫のトムにはアイルランド
で放火犯の疑いがかかりダウントンに逃げて来た。身重の
シビルとトムに対して、コーラは何処にも行かず出産までは
ここにいるよう告げる。カーソンは使用人の補充は可能かと
ロバートに尋ねると、可能であることを語る。そして新たに
使用人としてやってきたのは、下僕のジミーとキッチンメイド
のアイビーだった。マシューはダウントンの帳簿に目を通す
ことになり、屋敷の運営に関して深刻だという事が分かる。
マシューは今の運営は明らかに間違っているとしてヴァイオレ
ットに相談する。そしてダウントンの再建を決意する。
【ストーリー】
シビルが腹痛を訴えた為にクラークソン医師に診療を頼む。
まだ産まれない事を告げ、何かあればすぐに連絡して欲しいと
いう。ロバートにシビルの様子を聞かれたクラークソンは前駆
陣痛が起きたという。それを聞いたロバートは明日産科医の
サー・フィリップを呼ぶという。トムはクラークソンに対して
本当に問題は無いかと問うと、シビルは若いし健康であり至って
正常だと語る。
シビルの出産のことは使用人達の間でも話題になっていた。
アイビーは私ならば都会で産みたいとし、医療が先進化されて
いる事を語る。アンナは知っている人が少ない所で産むのは心細い
という。パットナムはアイビーが早くも出産の心配をしているの
かとして突っ込みを入れる。カーソンは今日の仕事はシビルの
体調に配慮して極力大きな音を立てないよう要求する。
アイビーは赤ちゃんが生まれるなんてワクワクすると語ると、
敵意を燃やすデイジーは「あんたなは関係無いでしょ。さっさ
と厨房に戻って仕事しなさい」と語る。オブライエンもまた
「まぁ明確な指示ね」と語る。
ロバートとコーラは目覚める中、ロバートはクラークソンの
メンツよりも安全に出産するためにフィリップを呼ぶのだという。
クラークソンのことは好きだが、マシューの誤診、ラビニアの病状
も見誤った事を告げると、コーラはそれは言い過ぎだという。
フィリップは沢山の貴族の出産に立ち会っただろうが、私たちの
家族のことを何一つ知らないのだという。
ジミーはオブライエンに対して、柱時計のネジを蒔くよう言われた
がやり方を知らない事を相談する。オブライエンはそれは第二
下僕として認められた証拠だとし、そういう事はバローに聞く
べきだと語る。彼はあなたのことを気に入っているとし、何よりも
旦那の側近だという。仲良くすると良いわとしてオブライエンは
ジミーを唆す。
シビルは腰の痛さ、足首は浮腫んで、頭が痛いとし、妊娠するのは
お薦めしないとメアリーに語る。しかしメアリーはそれでも子供
を持つのは羨ましいと語ると、シビルはその気はあるのよねと
メアリーに尋ねる。何となく時期を見ているのかと思ったという。
シビルはこの子はカトリックにしようと思っていることを告げ、
生まれたらこっちで洗礼を受けるという。ホントはダブリンでやり
たかったとし、誰にも知られずにやりたかったのだという。
無理にカトリックにしなくても良いのではないかと言うが、シビル
は何よりもトムを愛していることを語る。メアリーはトラビス牧師
と揉めたとしても私が味方になると約束する。
ジミーはトーマスから柱時計のネジの巻き方を教わる。
体を密着させつつ、手に触れるトーマスはジミーに対して、時計
にとって心地の良い加減を忘れるなと語る。時計を生き物のように
語るんですねというと、時計は生き物だという。トーマスは父が
時計職人だったことを語る。空気が冷たい早朝や夜遅くにはゼンマイ
を巻くのではなく、日中に人がいないときを見計らって行うのだ
と語る。
アンナはベイツに面会する。
いままで何故面会が拒絶されていたのか疑問を持つアンナ。
ベイツはバートレット夫人の話を聞かせてくれと語ると、彼女は
ヴェラが死んだ晩に逢ったと言っていたという。散歩に出かける
とドアが開いていたので入ったと。爪の間にパイ生地を取っていた
とのこと。ベイツはヴェラは私がダウントンに帰った後にパイを
焼いて食べたのだという。アンナは計画的な自殺なのかと問う。
復讐の為の罠でハメたのかというアンナ。警察は前もってベイツ
が牛乳や小麦粉に毒を仕込んでいたのを疑うかも知れないというと
ベイツはそれを調べた結果、毒はパイにだけ入って居たこと。私
は仕込めることは出来ないのだという。アンナは嘘を付いていた
ことを知り、「ヴェラは地獄で焼かれるべき」だとブラックジョーク
を語る。しかしベイツはそんなことを思えば君の心が汚れると
してそんな風に考えることはないと語る。
イザベルはエセルを呼ぶ。
もう娼婦の仕事はしていないとし、チャーリーが居なければ
飢えるのは私一人だけで済むという。そんな彼女に暫くウチで
働かないかとしてバードを手伝って欲しいと語る。エセルはとても
嬉しい申し出だが、ヒューズやコーラ、バイオレットが何というのか
今にも聞こえてきそうだという。やり直す機会を与えてくれるなんて
感激だが、後々問題になるという。その時は二人で一緒に乗り越えれば
良いだけだと語る。
看守のデュラントは囚人・クレイグに対してベイツが上機嫌だ
ぞと語る。アイツの妻が来ていたので何か”良い知らせが有った
のではないかという。デュラントはお前は刑期が延びてオレは
処分されたのに原因を作ったベイツが一人だけ良い思いをする
なんて許せないという。ヤツの手紙は何処にしまっているのか
と問うと、「良い知らせ」の内容を知りたいと語る。
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ダウントンでの経営は切迫していることを知るが、貴族としての
古い体質に拘るロバートとカーソンは、プライドに拘るあまり
新世代には対応出来ない頑固ものとしての一面を見せ始める。
ダウントンには新たに二人の使用人が来るが、マシューは今の
財政状況を考えればそんなものを雇う余裕はないと考えていた。
そんな状況の中、イギリスから自国を取り戻そうとして活動して
いたトム・ブランソンは、祖国のアイルランドで放火の罪を
着せられてダウントンに逃げ帰ってくる。身重なシビルが出産する
までここに居るべきだとされる中、シビルは出産までの間、
大事に扱われる。足のむくみや腰の痛みがあるが、妊婦としては
当然現れる症状だと見られるが、クラークソン医師と産科医で
権威のあるフィリップの間では見解の違いが現れる。出産が近づく
につれて、クラークソンはシビルは子癇の可能性があるとして、
今すぐ病院に連れて行き帝王切開で産むべき事を主張するが・・・
段々とロバートが嫌な人物になっていくところが有りますね。
シーズン1は貴族としての風格に溢れていて、礼儀・礼節に関して
も貴族として颯爽と振る舞い、問題に適切に対処するに辺り、
その洞察なり思慮なりの人間的な心の広さを備えていたのに、
ここに来て時代遅れの貴族としてのプライドが妙に邪魔をしていて、
嫌な人物像として描かれている。
これはカーソンにとっても同様で、この二人が今後、意固地な頑固
爺としてのダウントンでの厄介者になっていきそうな感じがする。
何時の時代も自分が最も栄華で輝いていた時期が忘れられず、永遠
に続くとでも思っているのであろう地位に固執したいのだろうけど、
カーソンはともかく、社会の情勢には敏感な姿勢を持っているのに、
ロバートにとっても貴族としてのプライドによって縛られている
ところが有るのだろうか。そもそもロバートは一度は全財産を
失っているのに、まるで現実的感覚を持っていない。
今回は全体にしめやかな感じがしていたので、イマイチモチベーシ
ョン的には欠けた部分も多かった。
やはり冒頭からシビルに対する死のフラッグが至るところに張り巡ら
されていることも視聴者的にも勘づくところが有って、やや喜べない
雰囲気が多かったのかも。
使用人の中で起きている恋愛の構図はどれも一方通行であり、
恋愛の難しさを感じると共に、嫉妬心がダイレクトで伝わって来た
り、それを利用して色々と画策するものたちが居たりして、なかなか
興味深い流れになっている。
デイジーが冒頭からアイビーに対して何度となく突っかかる様を
見ると、日本語吹き替え版だと妙に可愛らしいところが有るのだけど、
原語版を見ると、デイジーってあまりデイジーらしい可愛さを
感じられないのでやっぱり吹き替え版って偉大だなと感じさせる(笑)
パットナムからは、「アイビーをイジメてもアルフレッドの気は引け
ない」と言われたけど、いつも怒ってばかりいるパットナムから
はそれを聞きたくないって感じもする。
デイジーがアイビーに対してお礼を語る際の苦汁を飲まされる感。
そんなちょっとしたやりとりの中に面白さがあった。ただ正直、
アイビーも周りからちやほやされるほどの人物に見えないところが
有るのがこのドラマの弱いところ。
このドラマ、貴族の品を持たせる為か、やはりクローリー三姉妹は
綺麗どころを集めて居るし、アンナさんも綺麗だしね。
トーマスとジミーのモーホーの流れにオブライエンが影で操り、
妙に焚きつけているところが気になる。トーマスにとっての弱点は
数少ない自分を正当に評価してくれる人物だということで、
今回シビルが亡くなった際のトーマスの涙にはちょっと驚いた
けれど、トーマスの中にも涙という流れの中で、アルフレッドを守る
為の行動ではなく、彼に仕返ししようとしているであろうオブライエン
の中の非情さが見て取れてなんとも言えない感じ。この二人も殺意が
生まれないところで戦っているウチには面白い関係なんだけど。
刑務所の流れではベイツの無実を晴らす為にバートレット夫人から
の証言を以てそれが解決しそうな部分が有るけど、どこからわき出
して来たのか、気が付くとデュラントとかグラントの怒りの矛先が
どうしようもない程に、ベイツに向けられているところが気になる。
デュラントの発言からすると既に彼女は殺されているのだろうか?
イザベラとエセルの関係に関しても不透明感があることは否めない。
娼婦だった女と一緒に働けないとしていたバードがあっさりとイザベラ
からは首になり、バードとしてもまさかクローリーハウスから首を
言い渡されるとは思わなかったのかも。悔し紛れのことなのか、
誰かにこれを言わずには居られないとばかりに、手紙に書いて
カーソンたちに伝わってしまった。
また次女のイーディスは「スケッチ」の編集者からのコラム執筆の
依頼がくる。マシューにそれを相談すると喜んでくれるが、
ここでもロバートの心ない言葉で「向こうの望みはお前の名と肩書き」
だとすることで、次女の心を傷つけていく。
さて今回はシビルの出産を巡り、地元の医者クラークソンを信じる
のか、それとも産科医のフィリップとの間で意見が割れた。
多くの人たちはその判断を夫のトムに委ねるべきことを語り、
クラークソンを邪険に扱うべきではないことを語っていたのに、
「オレは主人だ」とばかりにロバートが結局決断を下して結果として
死なせてしまった。クラークソンがマシューの判断やラビニアの
判断に関して誤った一面が有ったとしても、この一件では正しかった
というだけ有って、ロバートばかりを責められないところも分かる
のだけどね。
結果的にはバイオレットが語る様にして、
「人は悲劇に見舞われると誰か責めたくなるもの。責める相手が
居なければその時は自分を責める。だけどこれは誰のせいでもない」と。
ダウントンは変わって行かねばならないとき。
バイオレットが先週のエピのラストと波風を立てずに変えることは
不可能だとしていたけど、メアリーは現状を知ってか知らずか、
ダウントンをマシューの力で取り戻した瞬間に、もう大きな態度で
接してくる。確かに不謹慎な時に弁護士と協議していたとはいえ、
ロバートは経営者としては不適合者であることは明らかな感じが
するし、元々一度はダウントンを失っているのも同然なのだから、
メアリーもジビルだけでなくダウントンも奪うつもりかという
突っ込みは適切ではない感じはするのだけどね。失いたくなければ
少しは協力しろと小一時間だ。
シビルの遺体を前にして、メアリーとイーディスは私たちはこれから
仲良く出来るのかと問う際に、分からないけど、三人で居られる
のはこれで最後なんだと語るシーンが何気に泣けるな。
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・Downton Abbey – The Suite
Performed by The Chamber Orchestra of London
ロバート・クローリー (Hugh Bonneville) グランサム伯爵
シビル・クローリー (Jessica Brown Findlay) 三女
イーディス・クローリー (Laura Carmichael) 次女
メアリー・クローリー (Michelle Dockery) 長女
コーラ・クローリー (Elizabeth McGovern) 伯爵夫人
バイオレット・クローリー (Maggie Smith) ロバートの母
マシュー・クローリー (Dan Stevens) ロバートの遠縁
イザベル・クローリー (Penelope Wilton) マシューの母
Mr.カーソン (Jim Carter) 執事
ジョン・ベイツ (Brendan Coyle) 従者
サラ・オブライエン (Siobhan Finneran) 侍女
アンナ・スミス (Joanne Froggatt) メイド長
デイジー・メイソン (Sophie McShera) メイド・新人
トーマス・バロウ (Rob James-Collier) 第一下僕
Mrs.ヒューズ (Phyllis Logan) 家政婦長
Mrs.パットモア (Lesley Nicol) 料理長
エセル・パークス (Amy Nuttall) 新人メイド
ジョセフ・モールズリー (Kevin Doyle) イザベルの従者
ジミー・ケント (Ed Speleers) 新しい第二下僕、イケメン
アルフレッド・ニュージェント (Matt Milne) 下僕、オブライエンの甥
Mrs.バード (Christine Lohr) イザベルの侍女
アイビー・スチュワート (Cara Theobold) キッチンメイド
トム・ブランソン (Allen Leech) 元運転手、シビルの夫
デュラント (Neil Bell) 刑務官
クレイグ (Jason Furnival) ベイツと同房
ジョージ・マレー (Jonathan Coy) 弁護士
サー・フィリップ・タプセル (Tim Pigott-Smith) 産科医
Dr.クラークソン (David Robb) ダウントンの町医者
— (Roman Green) British Army Battlefield Amputee