ダウントン・アビー ~貴族とメイドと相続人~ Downton Abbey シーズン3 第8話 クリケット大会 Episode #3.8

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第8話 クリケット大会 Episode #3.8

監督/David Evans 脚本/Julian Fellowes
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【前回までのあらすじ】
シビルの死により、トムはダウントンを出てリバプールの兄の
所で働こうかと思うという。しかしロバートはトムにダウントン
での領主の管理人になって欲しいとしてこの地に留まらせよう
とする。マシューとトムはダウントンの再建に乗り出すことに。
イーディスはジャーナリストになるとしてロンドンに行く事
を決意。刑務所から出所したベイツが戻ってくる。ロバートは
トーマスの処遇は考えているが無下に首にはしないという。
しかしそんな状況の中オブライエンによって唆されたトーマス
はジミーを夜這いしようとして近づき暴行罪とされる。
オブライエンはアルフレッドがその現場を見るよう仕向ける中
「あの男は神と人間の法に背いたのだから告発して転落を見届
けるのだ」と語る。

【ストーリー】
ビルとモールズリーの親子はクリケットの大会が行われるフィ
ールドの確認にいく。先日からの大雨でフィールドが使えない
かと思ったが無事だった。毎年恒例の御屋敷チーム 対 村チーム
でクリケット大会開催されるのである。ロバートのやる気は
特に強かった。

カーソンはトーマスを呼びだすとベイツが復帰したことに加えて
不幸な事件が発生したことでケジメをつける時だと語る。カーソン
は今回の君の問題に嫌悪感を隠せないが、それでも全く君に同情
しない訳では無いという。「君の汚れは自然のイタズラで自ら
望んだものではない」とし、黙って去るのであれば穏便に済ます
という。ベイツが戻ったことを理由にして辞職すれば、推薦状を
書いて不名誉なことは一切残らないようにするという。
トーマスはそんなカーソンに「オレは別に汚れていない。貴方とは
違いますが」と語る。そんなやりとりをドアの外でオブライエン
が立ち聞きしていた。

コーラはロバートに対してクリケットチームについて尋ねる。
何の問題もないとし、トーマスも居るという。しかしアンナが
庭師から聞いた話では村チームは相当強いのだという。
メアリーが静かにしていることに気が付くとコーラはロンドンに
行って疲れたのかと尋ねると、その通りだとして少し休むという。

ジミーはオブライエンからトーマスが解雇されることが決まった
として聞かされる。トーマスに対する怒りをぶちまけるので
有れば今のウチであり、彼を許せば同類だと思われると語る。

マシューはアンナが部屋の外にいることを見てどうしたのかと
問うと、メアリーと奥さんが中に居るのだという。
その頃メアリーはコーラにライダー先生は良い医者だとして会話
してていた。そんな中マシューはドアの中に入っていくと何の
会話をしているのかと問う。女性同士の話だと語る。
クリケットの件でマシューは僕も出場しないとダメなのかと
メアリーに尋ねる。昨年は村チームにボロ負けしたこと。しかし
父は去年の雪辱を果たそうとしているのだという。ベイツが
出られないことを羨ましいと言うマシューだが、アンナは
足に問題が無ければ喜んで出場していると語る。マシューは失礼
な発言をしたとして謝罪する。

モールズリーは使用人達にクリケットについて講義していた。
父が鬼コーチだったのでクリケットは相当鍛えられたという。
デイジーはなんでそんな貴方が初出場なのかと問うと屋敷に来た
のは今年だとし、村チームは嫌いだったという。アイビーは
ファンクラブを作って応援しようと語る。

メアリーはイーディスの元にやってくると、何を熱心に読んで
いるのかと尋ねる。今週のコラムで明日送るものだという。
「哀れな退役軍人」がテーマで、退役軍人が物乞いをしている現状
や元将校がクラブで女性のダンス相手になっていることを書いて
いるという。マシューは塹壕に比べたらマシだよと語る。

その頃ヴァイオレットとイザベルとコーラが会話していた。
18歳になったローズのことをヴァイオレットの家で少し預かる
ことになったのだという。ヴァイオレットの姪に当たる
ローズの母・スーザンから預かって欲しいと頼まれたと。
ローズはロンドンが嫌いなようで、7月までスコットランドには
戻らないそうだという。父親の仕事が忙しいようだというヴァイオ
レット。ロンドンが嫌でヨークシャーのヴァイオレットの元で
過ごそうというのかというイザベルは珍しい子だと語る。

トムはクリケットをしたことがないとロバートに語る。
ロバートはトムをそれでも試合に引き込もうとするがコーラは
無理強いはしないでと語る。

オブライエンはジミーに対してカーソンがトーマスに対して推薦状
を書くみたいだと吹き込む。カーソンに抗議すべきで推薦状を
書けば通報するというべきだという。そんな会話をベイツは
聞いていた。

ロバートはヴァイオレットにローズをウチに泊めたらどうかと
するが、ヴァイオレットは寧ろローズを泊めることが楽しみだ
と語る。イザベルは私には18歳の子の相手は無理だとし、話が通じ
ないという。ヴァイオレットは夫と私が旅をして言葉の通じない
相手とも楽しい夜を過ごせたことを語り、コツは笑みを絶やさずに
批判的な顔はしないことだという。

ベイツはトーマスの元にいくと、「敗者は去るのみか」と告げ、
これからどうするのかと問う。どうでも良いだろうという
トーマスに確かに私には関係無いというベイツ。

マシューはシンプソンとタッカーの土地を買い取ればかなりの土地が
戻る事を告げる。そこで事業が出来るとメアリーに語る。
この時期にクリケットの試合が有って良かったというマシューは
古い伝統を大事にしたいという姿勢をロバートにも示せると語る。
メアリーは私はお父様の説得係でしょ?と、マシューはその通りだ
と告げ、我らはチームだと語る。マシューはメアリーにキスする
がメアリーはそれ以上はダメだとして関係を拒む。ロンドンに
行って疲れたと語るが・・・

ジミーはカーソンの元にいく。
トーマスは止めのかと問うと、例の事件はトーマスの誤解から
起きたことで深く反省していると語る。彼に推薦状を書くようだが
低い評価はつけたのかと問う。ああいう男をよその家で働かせ
られないのではないかとすると、カーソンは妥当な推薦状を
書くという。ジミーは彼をよく見せるような推薦状を書くのであれば
警察に通報しようと思うという。今の時代進歩的な様だが・・
と告げると、カーソンは自分は進歩的と言われる筋足はないとし、
とはいえ屋敷でのスキャンダルは困るという。トーマスには静か
に去ってもらうことになるとし、みんなの為だと語る。

ローズ・マクレアが到着する。
イザベルの住むクローリーハウスで迎える一同。コーヒーを出す
というと母親には止められているという。母は忙しく、父も仕事
の奴隷だから他のことは全て母に任せっきりだという。奴隷という
言葉はよくないと告げるイザベル。ヴァイオレットはこの人には
比喩は通じないのよと語る。
ヴァイオレットはイザベルに対してエセルの件で雑誌に載せた
広告の反応が良かったと告げ、手紙を手渡す。
ローズはどうしたのかと尋ねるとヴァイオレットが私の料理人を
余所にやろうとしているのだという。
「この人は人を困らせてでも自分の主義を貫く人」だという
イザベルに対して、それはお互い様でしょと語るヴァイオレット。

カーソンはトーマスに推薦状が賭けなくなった事を語る。
トーマスは10年も勤めたのにそれは酷いという。推薦状無しでは
誰も雇ってくれないとし旦那さまは知っているのかと問うと直々
に頼むという。カーソンはこうなった経緯も説明出来るのかと
問うと、ジミーは誰かに唆されたのだろうという。アイツはそんな
に冷酷なヤツではないと。トーマスはせめて一日、二日泊まって
も良いかと問うと頭を整理したいと語る。これ以上の便宜は
図れないと釘を刺すカーソン。

ベイツとアンナは新居を見に行くが、内装はあまり良いとは
思えなかった。壁を塗り直せばよくなるだろうというアンナ。
前向きなのが私たちでしょと語るアンナに対して、君がいる
部屋ならば何処でも快適だよというベイツ。

ディナーの時。
ロバートたちはイーディスに対してローズのことを村案内してあげて
欲しいと頼む。水曜日にはウィットビーの市場へ連れて行って
上げなさいと。しかしイーディスは水曜日にはロンドンに行く
用事が有るというと、ローズはイーディスに付いていくという。
ローズに対してロンドンは嫌いではないのかと問うと、ヴァイオレ
ットは貴方の母・スーザンからそう聞いていると語る。ロンドン
に行って母を驚かせる贈り物を用意したいのだという。
イーディスはそれならば私と一緒にロザムンド叔母さんの家に
行きましょうと語る。コーラはイーディスに何をしにロンドンに
いくのかと問うと、「スケッチ」の編集者・グレッグソンに逢って
コラムの話合いをするのだという。イーディスに対してマシュー
は自分もロンドンに行くので一緒に行こうと告げると、イーディス
も私一人ではローズに手こずりそうだから・・と語る。
トムはコーラに頼みがあるとして、領地の1/3を自営の農場にしたい
と語る。コーラは運営は出来るのかと問うと、戦後の世の中に
商人も厳しいと語る。道具はジャービスが全て持っていってしま
ったというと、メアリーは屋根裏部屋に使える物があると語る。
コーラはシビーを連れて農場に住むというトムに対して、
赤ちゃんが寂しくならないかと告げると、もう決めたことだと告げる。
——————————————————–

ダウントンの村では毎年恒例のクリケット大会が週末開かれる。
この日だけは村人選抜チームと領主のクローリー家の人たちと
の間で真剣勝負が行われる。昨年村チームに負けたロバートと
してはなんとかして勝利したいが、出場するメンバーが足りない
状況だった。最も戦力になるトーマスが、ジミーとの騒動で
名目上ではベイツが戻ったことでクローリー邸から去ることに
なっており、トムは特権階級に有るクローリーチームに加わること
に未だに違和感を生じていた。何よりもアイルランド出身の
彼にはクロケットには精通していなかったこと。
そんな中、ヴァイオレットの元には、姪のスーザンの18歳になる末娘
のローズを預かって欲しいとのことで、ヨークシャーにやって
くるということだった。

本来ならばラス前のエピソードだけど、NHK版だと最終話は2話
に分割して描かれるので、ラス前の前のエピソード。

何よりも気になるのはトーマスは去就問題でしょうか。
トーマスが居なくなればオブライエンの一人勝ち状態という
寂しい状況の中、果たして本当にトーマスはダウントンから追い出
されてしまうのか・・ということ。
最近ドラマの中では誰もトーマスとは言わず立場上バロウさんと
呼ばれるので、個人的にはトーマスの方が響きが良いなと思うんだ
けど、まぁどうでも良いですね。最近ジミーのこともジェームズ
と呼ぶので今現在の問題を反映して愛称としてではなく正式名で
呼んでいるのかな。イーディスはメアリーに対してアンナが結婚
したので今はなんて読んでいるのか?と問うが、「アンナよ」と
語る姿もあった。

流石のトーマスもシーズン3は完全に滅多打ち状態。
冒頭から新しい商売に向けて動き出そうとしたのに詐欺に有って
全財産を失っていたし、それでいて取りあえず代理ではあるけど
伯爵の従者の座を手に入れてバランスを取っていたものの、職も
財産も失うとなればどうしようもない。

意外なのはみんながトーマスの性的指向を知っていたこと。
トーマスのことをみんな神にも法にも背くものだとしていたけど、
その反面、元々の性格であることを容認しているところも逢った。
トーマスが捻くれていた理由の一つの中に、ダウントンの中でも
孤立していて特異な視線をもたれているからだと思っていたのだ
けど、ここに来てみんなが妙に寛容的でファミリー感に溢れている
姿が有った。
シビルが亡くなった時とかマシューがケガした際に、トーマスは
屋敷の中でもマシューとシビルは特に訳隔てなく優しく接してくれ
た様なことを言っていたけど、今回の展開を見る限りは、みんな優しい
姿が有る。寧ろ新しく入って来たジミーとかアルフレッドとか
アイビーが実に邪魔ったらしいこと(笑)。まぁアイビーは事情を知ら
ないみたいなので仕方がないのかも知れないけど・・。
ジミーは相当遊び人だということなので、これで少しは大人しく
なるのだろうか。でも同じ空間で働かせるというのはちょっと
気まずくないかな。
オブライエンを封じる魔法の言葉は「奥様の石けん」。
もの凄い効果有り殺傷力も有りそうだけど、どんな皮肉が込められて
いたのか?
ヒューズはいつもお悩み相談の受け口になっているね。
エセルに続いて今度はトーマスのことも相談に乗っていた。

そしてエセルの行く末も気になっていたけど、取りあえず策士家
ヴァイオレットに追い出されそうになり、イザベルとしても
しがらみのない新しく土地で人生を送ることには賛成のようだけど、
雇ってくれそうなワトソン家は息子・チャーリーが住むブライアント
家の近くにあるということで、状況的には厳しいものがあった。
イザベルはそんな事情をヴァイオレットに話せば勝手に問題を解決して
くれると思ってシラーっと情報を流す辺りがまた嫌らしい訳だけど、
この二人はホントケンカするほど仲が良い相手って感じだね。
ローズの件でもヴァイオレットのレーダーは凄く敏感に反応して
いるしね。
ブライアント夫人がやってきて、旦那は私が説得するということ。
このドラマのシーズン3のテーマでも有る女性の権利の向上という
ことを考えると、コーラとロバートの関係のように夫の手綱を握る
のは妻であるという状況が描かれた格好で笑えるところも有る。
エセルはこれで一応お役目ゴメンというか。
シーズン3までのキャラクターなのでどん底から立ち直った人として
のキャラクターを見事に演じた格好だった。

そしてローズという新キャラが登場。
このキャラクターはシーズン5現在まで登場しているので今後
どんな人生を送っていくのか。18歳という年齢だけど、性格は
まるで違うけどシビルの変わりのように出てきた役割っぽい
感じもする。こんな若い子がテレンス・マーガデールなんていう
年の離れた男性とデートしている姿に違和感があるも、歴史的に
見て戦後は男性/国内の労働力が不足するものなので、女性は
相手探しにも苦労するという事情が有る。この辺はイーディスも
感じて居るところなのだろうけどね。男女の人口に於けるバランス
の乱れと言えば、ロシアが現在その状況に有り女性過多で困った
状況だ。韓国も昔から男子が望まれる傾向に有るので逆に男性が
多いということも有る。

そしてもう一つ気になるものとしては、メアリーとマシューの
子供が出来ない理由がなんなのかということ。
実はメアリーは妊娠しているのかなと思っていたけど、どうやら
女性的な何らかの病気になっていた感じで、手術をしたとのこと。
でも手術は成功したみたいなので、これで取りあえずは二人の
生活も安定していきそうだ。

ラストはクリケット大会。
ファミリー感とか結束力・団結力を高めるのに良い感じのイベント
だね。古き良き時代の伝統を守るのは良い事だと感じさせるもの
の一つ。クリケットって全く知らない競技なんだけど、かなり
野球に近いものが有るのね。クリケットの影響からイングランドでも
野球文化が発達しても良い気がするのだけど、なんでイングランド
に野球文化は定着しなかったのだろうか。欧州で野球と言えば
オランダとイタリアだけで、残りはほぼアメリカ圏にある地域のみ
のスポーツとなっているよね。
トムはそんなイベントを通して、家族の暖かさに触れる。
特権階級故の鼻持ちならない人たちだと思っていたけど、家族を
愛する心とか子供に対する視線などを見て、トムも家族になりたい
と今本当に思った瞬間だったのかも。
コーラとかメアリーとか本当に優しいし、上流社会の人らしく上品
な振る舞いをしている。

モールズリーは相変わらず口ばかり。今回は格好ばかりで実践で
使えないという姿が有ったけど、何度も自分のフォームを解説
している光景を見る度に笑える姿が有った。

■検索用キーワード

・Downton Abbey – The Suite
Performed by The Chamber Orchestra of London

ロバート・クローリー (Hugh Bonneville) グランサム伯爵
シビル・クローリー (Jessica Brown Findlay) 三女
イーディス・クローリー (Laura Carmichael) 次女
メアリー・クローリー (Michelle Dockery) 長女
コーラ・クローリー (Elizabeth McGovern) 伯爵夫人
バイオレット・クローリー (Maggie Smith) ロバートの母
マシュー・クローリー (Dan Stevens) ロバートの遠縁
イザベル・クローリー (Penelope Wilton) マシューの母

Mr.カーソン (Jim Carter) 執事
ジョン・ベイツ (Brendan Coyle) 従者
サラ・オブライエン (Siobhan Finneran) 侍女
アンナ・スミス (Joanne Froggatt) メイド
デイジー・メイソン (Sophie McShera) 料理人
トーマス・バロウ (Rob James-Collier) 副執事
Mrs.ヒューズ (Phyllis Logan) メイド長
Mrs.パットモア (Lesley Nicol) 料理長
エセル・パークス (Amy Nuttall) イザベルの家政婦
ジョセフ・モールズリー (Kevin Doyle) イザベルの従者
ジミー・ケント (Ed Speleers) 新しい第二下僕、イケメン
アルフレッド・ニュージェント (Matt Milne) 下僕、オブライエンの甥
アイビー・スチュワート (Cara Theobold) キッチンメイド
トム・ブランソン (Allen Leech) シビルの元夫

テレンス・マーガデール (Edward Baker-Duly) ローズがデート
LADYロザムンド・ペインズウィック (Samantha Bond) 叔母
マイケル・グレッグソン (Charles Edwards) ロンドンの雑誌の編集者
ビル・モルズリー (Bernard Gallagher) ジョセフの父
LADYローズ・マクレア (Lily James) 18歳
ミード (Edmund Kente) ロザムンドの従者
— (Jordan Long) タクシー運転手
ダフネ・ブライアント (Christine Mackie) チャーリーの養母
Dr.クラークソン (David Robb) ダウントンの町医者
Dr.ライダー (Richard Teverson) 産婦人科
スタンフォード (Tony Turner) ヨーク郡警察

ブラント巡査
ボウラー
スーザン・マクレア
シビー
シンプソン
タッカー
レディ・フリントシャー
アガサ叔母さん
ハリー・ストーク

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コメント

  1. アバター 山田 誠 より:

     クリケットを日本に普及する活動をしています。かたわらイギリス文化史の観点からも研究している者です。
     ダウントン・アビーは、シーズン1から欠かさず見ています。その中でシーズン3第8話のタイトルが「クリケット大会」と銘打たれていたのを知り少々興奮しました。これまでもしばしばイギリスの文学作品や映画などで、クリケットが登場していますが、単なる一情景として描かれているというより、これから起こるストーリーを暗示したり、人物紹介を兼ねていたり、人間関係を表していたり、比喩的にクリケットが用いられています。それだけイギリス人にとって文化として深く浸透しているものといえます。今回のこの物語のクリケット大会の位置付けは、クリケットを知らなくてもダウントン・アビーのファンにはわかりやすかったのではないでしょうか。問題のトーマスが窮地に立たされているのも関わらず大活躍した結果、解雇を免れたばかりか、副執事になるという驚きのどんでん返しとなりました。クリケットは野球と違って、打者はアウトにならなければいつまでも打撃をすることができます。そのためチームの総得点の半分以上一人で稼ぐことも可能です。特に打撃の優れたトーマスはスコアボードによると3番打者として登場して最後までアウトにならず105点を記録。100点以上も打点を取るのは”センチュリー”と大賞賛されます。チームは199点で打撃を終了しているので、まさに半分以上の得点はトーマスによるものでした。勝つことが領地における自分の権威を示すことになるチームの主将である伯爵にとって、トーマスはなくてはならない人物であったということです。シビルの夫トムはアイルランド人ということもあって、クリケット大会への出場を拒みますが、これには訳があります。アイルランド人にとってクリケットはイングランドの象徴そのものであり、敵対者、征服者の文化ということです。それだけではなくイングランドにおいても支配階層のスポーツという側面があります。(一方アイルランド人魂を象徴するスポーツにはハーリングというものがあります。ホッケーをさらに荒々しくしたような競技)しかし、トムはクリケットは下手ながら伯爵の強い希望によって大会に出場したのですが、トムがフライをキャッチしたところで試合が終わります。クリケットでは野手はグラブを使わず、硬球を素手で掴まなければなりません。時には鋭いライナーが飛んできます。そのため打球の捕球には技術はもちろん、勇気が必要とされています。当時の紳士の素養の一つである勇気を持っているかどうかが試されたのがクリケットの捕球でした。つまりトムは素晴らしい価値あるプレイを実現し、伯爵はじめチームメートから大いに祝福されたのです。結果として伯爵から伯爵家の一員として認めれらたという訳です。もう一つおまけがあります。この時のバッテリーは投手(ボウラー)カーソン、捕手(ウイケットキーパー)が伯爵です。執事のカーソンの投球術によってフライとなり、トムがその飛球をキャッチした連携プレイなのです。ここでもこのプレイを通して重要人物との関係が表現されています。一般のクリケットの記録にもフライキャッチとなった時の投手と補給者の名前が記録されます。その時の打者が村の医師だというのも興味のある設定です。
    マシューはオープニング打者として登場しました。打撃側の最初に登場するオープニング打者は、チームの中で最も信頼のある選手が選ばれることが一般的です。ドラマの中でのマシューの選手としての力量は、特に派手に活躍した場面はなかったのですが、ワンカットだけですが堅実なプレイをしていることがわかります。このことからキャプテンである伯爵から最も信頼されている人物であることがわかる設定になっています。またクリケット大会で貢献することによって、伯爵に改革を迫りながらも伝統を重んじる意思を態度で示すことを表しています。
    クリケットは18世紀後半にはイングランドの各地に普及しており、各地の領主たちが使用人などを選手としてチームを編成して各地を転戦したという記録もあります。特に領地でのクリケット大会は、領主と領民とのコミュニケーション手段としての役割が大きかったようで、重要な伝統として受け継がれてきました。
    マシューが教えトムが学ぶ。試合前マシューとトムがネットで練習しているのもこの二人が互いに協力しようとしていることがわかります。
    このほかモールズリーがかなりの場面で登場します。使用人の前でバッティングやボウリング(投球)の知識や技術、経験を披露。それを聞いていた人たちはモールズリーが活躍することを期待します。しかし結果は?打順が巡ってきた時に、意気揚々とグラウンドに入り打席に立ちます。しかし、あえなくたったの一球でアウトになったのです。クリケットでは打者の後ろにあるウイケット(3本の柱(スタンプ)と2本の横木(ベイル)で構成)が競技の根幹となっています。投手はを投球によってウイケットを倒すことを第一の使命としています。打者はそれを防ぐためにバットで投球をはじき返します。結果として一球ででもウイケットに当たればアウトになります。モールズリーのアウトはこのアウト(ボウルドという)で、打者にとっては最も注意すべき基本的なものであり典型的なアウトなのです。思えはモールズリーが使用人に説明している時のバットの使い方、フォームが、このアウトにならないための技術でした。モールズリーはこのドラマではどちらかというと誠実ながら要領の良くない人物として表現されています。しかし、親譲りのクリケットの知識、技術、経験を披露することで皆んなから見直されようとしていたのですが・・・・・。

    今回第8話の結果は・・・お分かりのようにクリケット大会をすることで、この時点で起きていた諸問題がすべて解決ということになりました。トーマスの処遇、トムと伯爵との関係、マシューの位置付けなどなど。

    • ita_reds ita_reds より:

      山田さん、書き込みありがとうございます。
      当方クリケットの知識は皆無でして、しかもこの競技を見たのが恐らくテレビを通して見ても初めてに
      近いものが有ります。そういう意味ではドラマの中のトムみたいなものでしょうか。
      競技ルール自体はドラマを見ていただけでは全く分かりませんでした。やはり一度は実際にプレイしたり山田さんの
      解説を見た後に見直すとより興味が増すものだと思います。私が見ていて思ったのは、競技者以外みんな
      帽子被っているなとか、クラークソン医師とかカーソンなどちょっとスポーツ競技者としては、少し年齢を重ねた方たち
      が参加していたのが驚きでした。あと山田さんの解説の中にもありますが、領主、使用人、領民たちのコミュニケーション
      の手段として身分を越えて同じフィールド内に立っているというところにスポーツの良さみたいなものを感じました。
      支配階級の違いから伯爵相手には手加減するのかなとかそういう視線で見ていましたがそんな姿もなく、その光景に
      はイングランドへの嫌悪感を示しているトムの中でも少しは心が解けた瞬間があったのかも知れませんね。
      家族の繁栄とかその象徴として日本だと”野球が出来るくらい子供が欲しい”みたいなことを口にしますが、チームがそんな家族となっていて
      とても良好な関係を築いていること。また貴族の人であれば使用人の数などが力の象徴となると思いますので、
      チームが出来るくらいの人数を揃えているということはその誇示にもなりますし、その一人が欠けても成り立たないものとしての
      使用人たちの役割などを感じました。キャッチボールのボールの行方が人間の実社会に於いてもコミュニケーションの流れを示す
      一つのものとされますが、トムがボールを受け取ったシーンはプレイに於ける勇気そのものよりもクローリー家の仲間になったと
      いうことを受け止めたのかなという感じでとても良く写りました。このシーンと似たような内容に若かりし頃のウィノナ・ライダー
      とかチャーリー・シーンが出演した映画「ルーカスの初恋メモリー」の中にも有って、こちらはアメリカの映画なのでそのスポーツ
      はアメフトですが、そんな映画のワンシーンを思い出しました。