第11話 不都合な存在 Big Man in Tehran
監督/Daniel Minahan 脚本/Chip Johannessen
Patrick Harbinson
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【前回までのあらすじ】
ソールが帰宅しないと思っていたミラはアラン・ベルナルドを
自宅に招いてディナーを取っていた。イスラエルの諜報員で
彼自身スパイだと認めたこと。ソールは独房にでも入れておけ
と指示する。キャリーやソールはジャバディに弱みを掴み、
今では彼はイランの敵になったのだと語ると、仕事を用意した
のが今後はイランに戻って我々に協力するよう告げる。
ソールはキャリーに対して次の作戦にはブロディを使う事を告げ
ターゲットは革命防衛隊のトップ、ダーニッシュ・アクバリだと
いう。ブロディが国境まで行き投降するのだという。
車両が爆破されたことでブロディたちは一時撤退を余儀なくされ
るがブロディは戻らない事を告げ国境まで270mだという。
キャリーはイランに入れば死んでしまうというが、君が連れ戻
してくれるだろうという。そんなの幻想だというキャリー。
しかしブロディは君なら大丈夫だとし信用していると語る。
そんな中ブロディたちは捕まってしまう。イラクの兵士かと
思ったが捕まえたのはイラン側の兵士だった。自分はフメリカで
CIA本部を爆破して国際指名手配になっているブロディだと語る。
ソールは作戦は失敗だと考え落ち込んでいたが、キャリーは
ブロディが潜入出来たことを報告。
キャリーは脱出経路を確保する為にファラに対してテヘランに
居る叔父さんに頼んで欲しいという。ファラは家族は巻き込まない
で欲しいとするが、現場で体を張っている仲間の生死がかかって
いるのだとし、無事に救出するのが私たちの勤めではないかと
問う。
ジャバディと共にブロディはテヘランへと向かうことになる。
【ストーリー】
ソールは刑務所にいくと、アラン・ベルナルドに合う。一日一
時間運動のために外に出られるがここより少しは良い部屋にして
くれるのかと問う。スパイにはここで十分だろうとするが、アラン
はスパイではないという。しかしソールは証拠はある事を告げる。
ここから出たいとは思わないかと問うと、アランは条件は何か
と尋ねる。テヘランである作戦を実行していること。支援チームが
撤退せざるを御亡くなった為に現地のモサドの工作員を2人回して
欲しいという。自分で交渉すれば良いだろうというが、作戦について
聞かれたら答えられないのだという。お前は私の妻を寝取ったロク
デナシであり私にもモサドにも必要とされていないと語る。役に立つ
ことをしろとし手始めにこれをやってくれという。
ブロディは尋問を受ける。
逃走ルートはアブ・ナジールが用意してくれたもので、貨物船の
コンテナに隠れてハリファクスからコロンビアに渡り、その後
ジープでベネズエラに移動。国境でトラブルで銃撃されたこと。
その後カラカスのスラムに連れて行かれたという。そこで依存症
になったのではないかと問うがヘロインは鎮痛剤に使われただけで
やっとの思いで依存を断ったという。HIVかと問われ否定する。カラカス
を出たのはあそこで死にたくなかったこと。有る尊師に助けられ
て脱出してイランに来たという。この国への亡命を求めているだけ
だという。どうしてこんな扱いを受けるのかと問う。
ジャバディは嫌がらせだと思うのかと問うとそうではないが長い道の
りだったとし、死にかけてなんとか乗り越えたこと。ここにくれば安全
で自分も歓迎されると思ったという。CIA本部を吹き飛ばした売国奴
を歓迎しろというのかと問う。誰の使いだと問うが、亡命を
求めているだけだという。
キャリーも女性用タクシーでテヘランのホテルへと来ていた。
名前はビュズゥーと名乗り、ジュネーブから来たこと。10日間の
滞在だという。7階の部屋で北向き、バルコニーが付いた部屋を
リクエストしていた。
ホテルの部屋に行きポーターに荷物を運んでもらうとすぐにキャリー
は非常階段からホテルを出て、外に出ていく。
ジャバディは補佐役から上でアクバリ総司令官が待っていると
聞かされる。あと10分で会議だとするが、呼ばれたことで仕方
なくバハル秘書の元に行き、アクバリと面会するのを待つ。
キャリーが向かったのはマサド・シェラジの家で姪御の友人だ
と語る。それを聞いてマサドは室内に入れてくれる。
私宛の荷物は届いているかと問うキャリーに対して、説明して
くれというマサド。ファラからは何と聞いているのかと問うキャリー
に対して、頼み事があるとしか聞いていないという。キャリーは
それ以上は知らない方が安全だというと、これの何処が安全なのか
と問う。送って来たものは衛星電話でそんなものが送られてくれば
確実に怪しまれるというが、キャリーは税関の目をかいくぐって
送り届けたことを告げ、税関は通っていないという。ジュネーブ
から外交封印袋で送ったので誰にも気づかれていないという。
そんなキャリーに対してCIAだろうと問い、姪もCIAなのかと問う。
祖国を裏切っているとするマサドに対して、寧ろ祖国の為に働いて
いるとしあなたならば分かってくれると言っていたという。
これを預かっているとしてファラの写真を手渡す。するとアメリカ
でも彼女はヒジャブをつけているのかと問うと、ファラの心は
常にテヘランにあるのだと語る。兄は姪の仕事を許しているのか
と問うと、今は受け入れてくれているみたいだと語る。そんな
キャリーは彼から携帯を受け取ると、助けがいる時には言ってくれ
と語る。
バハルはジャバディを室内に通すとそこで待っていたのはアクバリ
だった。
アクバリはプロディの尋問のVTRを繰り返し見ていたが、アクバリ
はジャバディに対してブロディは亡命したいと言っているがこの
話を信じるかと問う。事実かどうかは目下裏付けを探しているところ
だという。アクバリはジャバディ自身はどう思っているのかと問う
とまだ分からないが亡命を求めて国境をやってくるものには用心
すべきだという。君はこの男に手ぬるいとし疑っているとは思えない
と言われると、ジャバディは自分の考えではブロディは客人であり
それも大事なゲストだという。彼を受け入れることは我々にとって
も非常に大きな意味が有ること。この男を宣伝活動に使い、かなり
の効果が期待出来ると思うという。アメリカの英雄が祖国を否定
していること。彼は散々拷問を受けて居るので我々がそれをやる
必要もないというと、アクバリは信用出来るか分かるまでは周囲に
存在は伏せろという。ジャバディは一つ提案があるとし、アクバリ
本人が信用出来るかどうか直接逢って判断してみたらどうかという。
見極めは総司令官のあなたにお願いしたいというジャバディだった。
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元々革命軍の幹部だったジャバディを協力者として送り返した
ソールはブロディもイランに亡命させるという名目で国境を
渡らせて、アクバリに接近させた後、ブロディに殺害させるよう
命じる。ブロディが生きる道はそれしかないということを聞いて
彼も最後のチャンスとばかりにその作戦を決行する。何度と
なくピンチを迎えるが、ブロディはなんとかイランに入る事が
出来て暫くはアザディタワー近くの建物内で尋問を受けていた。
キャリーもテヘラン入りする中、問題は当初の計画とは違い
CIAの協力者が同行出来なかったことで、彼が暗殺した後に救出
する手立てがないことだった。そこでソールは自分の家に盗聴器
を仕掛けて独房に入れていたアランに取引を申し出て、イラン内
で活動するモサドの工作員の二人をCIAの作戦に協力して欲しい
と告げる。
最後までヒヤリとさせられる展開が用意されていて、なかなか
見応えが有ったな。
人をあまりに追い込みすぎると、敵に寝返る可能性があることは
否定出来ない事実で有り、これまでのブロディに対する扱いを
考えると、どちらに傾いてもおかしくないものが有るのは事実。
アメリカ側に肩入れする理由の中には、家族の中でも取り分け
娘の存在が有るのだろうこと。名誉を回復したいという思いと、
祖国・アメリカを一度でも攻撃してしまった罪悪感と、それとは
対象的にCIA組織そのものに対する不信感が渦巻く中で、最終的に
ブロディの中で優先されるべき信念や求めているものが何なのかと
いうことに繋がっていく。
キャリーが意外とあっさりとテヘランに潜入していたところを
見れば、無理して同行者をブロディにつけて国境越えをする
必要も無かったのではないかという感じにも思えるし、これは後々
の流れに繋がるけど、アクバリにはなかなか近づけないとか
言われる中で、意外と暗殺者が居れば仕留められそうなところ
にあるなという感じがしたところも有ってその辺は終盤にかけて
違和感を覚える描写だったところかな。
シナリオとして上手いなと感じるのは、やはりブロディの疲れた
心を郷愁という形で癒す為に、彼のことをよく知るアブ・ナジール
の妻・ナスリンとの再会を用意したこと。
一度はアメリカでも英雄としてスターダムにのし上がった彼が、
二度目の機会を経て今度はイラン国内で英雄視されることの妙という
ものを感じたところかな。
ブロディと共にナスリンもまた夫と息子を失っていること。
二人には色々と共有する思いも含まれていそうだし、徐々に
ブロディの中で気持ちの触れ方が、イラン側の立場に動いて
いくところも有って、その辺の流れが自然なものが有ったこと。
キャリーの信念は最後まで揺らぐことがなく、仲間意識以上に
彼女の中では愛する相手という認識が有ったこと。その信念も
彼女の中で育まれているお腹の中の子の父親だという認識から
そうさせているのかも知れないけどね。
キャリーの判断は常に正しいところに転がっていき、早まった
ソールたちの決断に対して自省の念を促していく展開もまた
有る意味では滑稽に写るところが有る。ソールの立場からすれば
ブロディ殺害の決断は仕方がないのだろうし、何よりも最も
期待していたソールの立てた中東掌握に対する壮大な計画が
根本から崩れてしまったことでの喪失感が、そんな決断を後押し
してしまったところなんだろうけどね。
ドラマを見ているとキャリーがウザったらしく見えたりソールが
ウザったらしく見えたりする状況の中、最後には正しいことを
証明してそんな気持ちが薄れていくのに対して
一貫してウザさを継続して発揮しているのがロックハート議員
だという辺りもまた笑える。
でもジャバディがトップについたとしても、情勢が好転すると
ばかり言えないところは有るんだろうけどね。
最後の最後まではブロディの心の中では、アメリカには戻らず
汚名をすすぐことも諦める姿が有ったのだろうけど、イランに
残ったところで、暗殺者(今回はモサドの工作員だった)が狙って
いるということを考えれば、安住の地など無いようにも思える。
アクバリと面会した際に、まるでスポットライトが浴びている
くらいに目立つ形で灰皿が置いて有ったので、ブロディがこれを
使うであろうことはすぐに想像が出来た。問題はどうやって
一度は折れたブロディの心やアメリカとの決別の流れを再び現実に
引き戻すのかというところだったけど、意外なところに敵って
潜んでいるんだよね。
この場所が意外にも全ての出発点だったということを知り、これまで
ブロディが背負った悪夢や苦労が走馬燈のように巡り、幻想から
目覚めさせるのに十分な言葉だったのだろう。
ただあの場所からどう逃げるのか。
凄腕の諜報員ならば、窓から逃げる選択筋もあるんだろうけど。
部屋を出た瞬間にジャバディに殺されるとかなければ良いんだけど
ね。
しかし今の状態でアメリカに戻ったとしたらブロディは名誉を回復
出来るだろうか。できればその反応と、家族たちの救われる顔を
見てみたい。
余談だけどドラマではキャリーが妊婦役で登場しているけど、
ブロディの妻役のジェシカ役のMorena Baccarinは、このシーズン
3の5話が放送されている際に男児を出産している。
■使用された曲
・Homeland Main Title
Performed by Sean Callery Feat. Chris Tedesco
■検索用キーワード
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キャリー・マシソン (Claire Danes) CIA
ニコラス・ブロディ (Damian Lewis) 2003年行方不明、軍曹
ピーター・クイン (Rupert Friend) デビッドの部下、CIA職員
ジェシカ・ブロディ (Morena Baccarin) 妻、マイクと不倫
クリス・ブロディ (Jackson Pace) 息子
デイナ・ブロディ (Morgan Saylor) 娘
ミラ・ベレンソン (Sarita Choudhury) ソールの元妻
ソール・ベレンソン (Mandy Patinkin) キャリーの上司
アンドリュー・ロックハート (Tracy Letts) 上院議員
ダール・アダル (F. Murray Abraham) CIA職員
スコット・ライアン (Tim Guinee) CIA職員
アラン・バーナード (William Abadie) モサドの工作員
マジッド・ジャバディ (Shaun Toub) イラン
マサド・シェラジ (David Diaan) ファラの叔父、ファラの父の弟
ダーニッシュ・アクバリ (Houshang Touzie) 革命防衛軍のリーダー
カリム (Jeff Seymour) モサド諜報員
ユーセフ (Bobak Bakhtiari) モサド諜報員
ナスリン・ムグラビ (Naz Deravian) アブ・ナジールの妻
— (Eyas Younis) IRGC Interrogator
ダリッシュ・ラヒニ (Khalid Benchagra) イスラムのテレビ
— (Ames El Akil) アクバリのガード
バハル (Mohamed Choubi) ジャバディのアシスタント
— (Aziz Laalaj) Reception Clerk
— (Hicham Quaraqui) Man
— (Anas Bensalama) 医者
— (Farida Bouaazaoui) First Woman
— (Boussalem) ブロディのガード
— (Moutaouakil Mohammed) Security Officer
— (Kaghat) Nassrin’s Servant
バハル (Amal Essaqr) アクバリの秘書
— (Yasser El Aomaryine) Bellman