第8話 決断 Free Will
監督/Charles S. Carroll
脚本/Jeff Drayer
Joseph Sousa
【Story】
サラはダニーの行方を捜す中、チョイ先生も同行する。
何と言ってもホームレスの多いスラム街故にリスクも有り
とても女性一人では歩かせられないからだった。シェルター
を見つけたのか電車で暖を取っているのではないか。
大丈夫だろうとするチョイに、サラは気休めだというが
そろそろ勤務時間だと語る。また終わったら高架下に居る
かもしれないので探そうと語る。
・シカゴ総合病院
奨学金の借金を抱えているウィルはルームメイト兼同棲
し始めたニーナと共に出社する。今夜引っ越しパーティー
をする為にパテは大皿を頼んだという彼女。病理は内臓が
好きだし、陽に当たっていないのでビタミンDの補充だと
いう。そんな二人が入ってくるのをナタリーは見ていた。
ナタリーはウィルにオハヨーと声を掛ける。
今夜の引っ越しの招待状は届いたでしょ?というと、絶対に
行く事を告げる。同棲してみてどうか?と問うと、まだ2日
しか経っていないが良い感じだという。向かいに巨大スー
パーが有るのでしょ?として羨ましいというナタリー。
ウィルが幸せなら私も嬉しいという彼女。
マギーは早速ナタリーに第6に患者だという。
そんなマギーはウィルに対してニーナと上手くやってよとし
2005年のワインを持って行くのだから・・と。ウィルには
第1だと語る。
マギーの元にはノアもやってくる。
姉・エイプリルの検査結果が出ているかどうか。
今来た所だとして資料を渡す。マギーは力になると伝えてと
ノアに伝言する。
エイプリルは屋上にいた。
あまり近づかないようにノアに忠告する中、結核は進行して
いたのか?と問うと、彼は肺の影は5mm大きくなっていると
いう。薬を飲んで無理しなかったのにどうしてなのか。
ノアはそれだけでなくこれを読んでくれと検査結果を渡す。
すると妊娠しているという兆候が見られた。「私か妊娠?」と。
チャールズは精神科医のロニー(Nora Dunn)と町中を歩きな
がら会話する。
サンタの登場が年々早く無いか?というと、ウチの精神科医
はまだハロウィンの飾りだという彼女。感謝祭の予定は?と
問われダニエルは娘・ロビンと寿司を食べに行くという。
娘さんとは良く出かけるのか?と問うと上手くやっていると
いう。『心配なのは子供ではなく、子供がどんな人と付き
合うかだよ』とダニエル。『凄く良い外科医が居るんだが
深刻な”家族の問題”を抱えている』。ロビンの家族は一触
即発だという。ロニーは彼女は話したのか?と問うと、何か
ある事を察する。「彼に一言いった、友好的な助言だが・・」
と。彼女は落ち込むダニエルに折角の休暇を暗くしないで
と語る。
ノアとウィルはエイプリルの元へ。
2、3週間で結核菌を押さえ込むのだという。しかしエイプ
リルは避妊薬・ピルを飲んでいたのに何故妊娠したのかと
問う。薬のせいでピルの効果が薄れたこと。そして妊娠に
よって免疫力が低下して結核が発症したのだという。
予想出来ないことだというウィル。何ヶ月かしたら腹を
突き出しバージンロードを歩くことになるというエイプリル
のため息に、それも良いじゃないとノアの言葉に姉も救わ
れる。テイトはどうか?気持ちが変わってしまうかもと
エイプリルは心配するが姉貴にぞっこんだという。今は病気
で子育ても出来なくなった・・予定外だし・・と。
・ジム・ヴァンス
ナタリーとウィルの元に腎不全の患者ジム(38歳)がやって
くる。透析後に意識消失した患者で移植希望は出しているが
リストはずっと下の方だった。
ジムに逢うといつも透析ばかりだとし、胸が凄くドキドキ
して凄くダルイという。二人は心室性期外収縮(IDH)であ
り、透析低圧症である事を告げる。急激に血圧が下がるので
心臓に酸素が行かなくなり不整脈や心臓発作を起こすことが
あるという。心臓病があるとリストは後回しになってしまう
というと、俺はまだ40歳前なのに・・と語る。ケイキサレ
ート15経口、エイモロールで脈の安定をさせるというウィル。
ナタリーは血液濾過透析を入れても良いのではないかとし
対症療法では根本的な治療にはならないという。ろ過透析
が良いと思うのか?効果は似たり寄ったりだと語るウィル。
■感想
今回も色々と主張すべきテーマ性というものが隠されていま
したね。隠しているわけではないけど気がつくかどうかの
問題なのかな。
常々書いているけどこのドラマには色々と対となっている
エピソードの流れが有る。今回のタイトルにある「決断」に
しても色んな決断が求められる中で、決断して助かる流れ、
助からない流れが有ったり、医師として最善を尽くしたのか
どうか自問自答する流れが有ったりもする。
家族の問題としては元々コナー先生の専売特許みたいなもの
だったが今ではダニエルとロビーの問題の方が寧ろメイン
となっている。
そして何よりも大事な事を大事な相手に告知・告白出来るの
かどうか。
これは主に妊娠したエイプリルがテイトに話せるかどうか
の問題でも有ったし、患者の流れでは腎臓を移植出来ない
とする兄弟の中では弟が死にそうな中でも腎臓をあげられ
ない兄としてはHIV/同性愛者であることを話せないとする
事情も有る。そしてチャールズとロビンも上述しているが
親子してなかなか向き合えずにいるところがある。
ナタリーとしてはウィルとの関係は成就しなかったものの
逃がした魚は大きく見えたのかニーナと同棲する彼に不安
という名目を以て嫉妬するシーンも有る。
「節約や都合のために同棲するとか・・」
ナタリーがウィルへの気持ちが微妙だということがこの
セリフにも含まれているように思える。
さて、ドラマとしてのメインはやはり「勝敗」とか対決色
を臭わすイメージが有ったな。これはチョイ先生が言った
言葉だ。「善人が最後に勝つ」ということ。
囚人のカールとの間でいつの間にか勝負みたいな感じで
チョイ先生が一人勝負を挑んでいたけど、色々と悪い予感
もする中で、最終的には医者としての本分を忘れてはいない
かどうかという所に繋がる。医者として必要なものとは何な
のか。
今回はカリーナが持っていた「星と月」のイヤリングが
ドラマを象徴していたと思う。月が輝きすぎると星は見え
なくなる。一方がエゴ的オーラを発揮することで本質的な
ものが見えなくなってしまうということを描いていたのだ
ろう。
■今回の患者
・エイプリル
元々はテイトが結核の患者だったが、前回のラストで
飲みに行った先で突然咳が止まらなくなった。
検査した結果、エイプリルは結核は勿論、妊娠までして
いた。
薬のせいでピルの効果が薄れ、妊娠のせいで免疫力が低下
して結核を発症する。色んな皮肉の流れが込められていて
興味深いよね。
結核では喀痰培養の結果、結核菌は普通ではなく多剤耐性菌
だという。これに利くのは一種類の薬だけ。ただしそれを
飲めば胎児が心血管欠損を起こす。もうすぐ一回目の薬。
ノアは薬を投薬する事を説得するがダメだった。
ウィルが彼女に語るがエイプリルは
「看護師は医者の言う事なんてもう聞かないの」
「望みをもってやってくる患者に私たちは最善を尽くす」
この辺のやりとりはよく聞いているととても皮肉が効いて
いてよく出来ていたな。結局治療することになる。
・ジム・ヴァンス
38歳、腎不全で透析後に意識消失した患者。
腎臓を移植すれば治るものの心臓に問題が有る。
心室性期外収縮(IDH)、透析低血圧症。
急激に血圧が下がるので心臓に酸素供給が行かなくなり
不整脈・心臓発作などが起きる。透析は週に3度行っている
のでその度に死と隣り合わせの状態である。
クイキサレート15g経口、エスミロールで脈の安定。
ナタリーは血液のろ過透析をすれば良いではないかと考える。
対症療法では根治しない。しかしそれをしても実質的に
変わりがないと考えるのはウィルだった。
兄弟二人が病室でケンカ。
ナタリーが見に行くと兄・イアンの型が適合するのに弟は
腎臓を寄越さないとして怒っている。ただこの話もある意味
では絶対にくれると思っている弟の傲慢さは感じなくもない。
私なら身内が同様のことになればもちろん与えるけど、
絶対にくれると思うものなのか?
結果的に言葉には言えないが兄は同性愛者でありそして
HIV陽性患者だった。それを言えないのは弟が同性愛者を
毛嫌いしているという「皮肉」。
ジムは悪化していく。心室頻拍が起きたので透析は中止。
脈拍微弱、呼吸窮迫。除細動で息を吹き返させる。
治療法を変えることになる。
ミドドリンという薬で血圧を上げて低カルシウム透析の
SPコース。あまり利かないけどこれがベストだろうこと。
ただいつ亡くなってもおかしくはない。
イアンが腎臓をくれないのはウイルスのせいだろうとして
話は聞いたようだ。イアンはジムに腎臓をいつでも与える
つもりだ。ただ医師としては今は免疫力が低下しているので
その状態だとHIVに感染した臓器を移植すればエイズを
発症して死ぬという。それでもやってくれというが、
この手術は違法であること。ナタリーはやるべきことを
告げるが手術した事がバレたら医師免許は剥奪。
ナタリーはチャンスを与えて欲しい事を告げるが、ウィルは
上司として承認しない事を語る。
保健省は感染の移植を認めない。
マギーのコネクトでFDAの担当者・未承認薬の例外を扱って
いる人を紹介する。
ただそれもダメ。
ウィルは合法にする方法はあるとしてHIVに自ら感染させる
選択肢を与えること。あくまで決めるのは彼。
空の注射器を置いていき感染者同士ならば移籍出来ることを
示唆していた。
・カール・ウォレス
36歳男性。囚人で腹部に刺創がある。
チョイ先生と看護師ドリスが対応し、ノヴァク
(Christopher Popio)が警護して病院のベッドに手錠で繋がれ
ての治療だった。ただしチョイ先生は皮膚の表面は綺麗で
血管にも腸にも損傷はないので縫い合わせればまた刑務所に
戻せるという。しかし当然それは嘘。
シャロンによると刑務所から抜け出し自分で刺したのだと
いう。彼は2人を殺し刑期30年を喰らっていた。
チョイはカールに傷を縫ったら退院させるという。
そもそも自分が刺したであろう傷。
ただそれに対してカールは自傷癖があるようなことを口に
した為に医師としては精神科の医師に診せる必要が出て
しまった。勿論其れも嘘。
ダニエルが彼を診るが反社会性があるだけ。日和見主義で
誠実さがないだけ。
いよいよ傷を縫って退院させようとする。
しかし今度は彼は口から血を吐いていた。ポータブルの
レントゲンによると星形の異物が食道を切ったことが分かる。
カリーナを利用した囚人。
・カリーナ・ゴフ
16歳の少女で冒頭ではクラークが対応。
ウィリアムズ症候群という病気で自宅で意識消失して運ば
れて来た。コナーとレイサムがクラークにこの病気について
説明しながら行うことになる。
ウィリアムズ症候群は遺伝性疾患。多くは心血管疾患を
伴うもの。特筆すべきは人格でオキシトシンの分泌が多く
ホルモンのせいで人懐っこくて他人を信用しやすくなって
しまうというもの。
レイサム先生に彼女が抱きついた時には、ユダヤ教徒の
彼はコナーに助けを求めていたし、更に後に囚人のカール
の元に行き挨拶をしては笑い有っていた。
実は彼女がしていたイヤリングをカールが飲み込むことに
なる。星形のイヤリング。
カリーナの母・ウェンディは気絶するのは始めてなので
心配している。何よりも心音といえばレイサム先生は誰より
もその音を聞き分けられる。彼によると右第2肋間に収縮期
雑音がある。弁狭窄だとしてエコーで確認。
検査結果今すぐにでも手術しないといけない。心臓からすぐ
に出た大動脈が狭い為に血流が鬱滞した状況だというのだ。
カリーナはそれを聞いて手術したいというが、母親はそんな
に単純なことではないという。ウィリアムズ症候群は
麻酔で死ぬリスクが高いということ。
娘は未成年者なので決断は私が決めるというウェンディ。
逢った人を元気にしてしまう眩しい光のような子・カリーナ。
それが糧になっているとして母も手術して欲しいことを
告げる。
手術中にベス(Mia Park)はヴォースパン医師にイヤリング
のことを聞く。それを飲み込んだらしいことを・・
結局手術後に目を覚ましていたので成功したのかな。
■その他
・気になること
・ダニーの死とエイプリルの妊娠
人類とは皮肉にもバランスよく出来ているものだ。
亡くなるものも居れば産まれようとするものもいる。
ダニーの死を巡り必要以上に関わるなとしたダニエルの
忠告をどうしても守る事が出来ずに感情移入してしまった
サラ。危険を顧みずにスラム街を探したが見つからず、
助けを求める信号を彼は発していてその方法論は提示したが
その後は投げっぱなしとなってしまう。その結果ダニーは
助かる為には元の組織に戻るしかないと考えた。その結果
死体として発見された。組織にボコボコにされたのだろう。
「シカゴP.D」のリンジーがそれを告知に来るのだから興味
深い。彼女も「シカゴP.D」の中ではナディアというヘロイン
中毒の女性と関わり合いがあり見捨てられないところが
有った。
そんな中でエイプリルは寧ろ意外な妊娠という事実を耳に
することになる。実感はないのだろうがテイトが喜んで
くれたのは嬉しかったことだろう。
ただしここでも「決断」は迫られることになる。
薬を投与すれば妊娠した胎児は亡くなるかも知れない。
・恋愛事情
コナーとロビンはとても良い感じだ。
ホワイトソックスを未だに応援しているとしていたけど、
この時は恐らくもう優勝からは離れていたのだろう。まだ
応援している理由を今夜飲みながら教えるというが、
コナーはダニエルから警告が入っているので、どうしても
踏み切れず。
当然ロビンはダニエルに文句を言いに行く。
ダニエルは親として子供を心配するのは当然だとするが
ロビンは既に過去は忘れて前に進んでいるのに父親は今まで
放って置いたことに罪悪感・良心の呵責を感じている。
「今更私の人生に口を出そうとしてもそうはさせない」
・霊安室と教会
アメリカの病院って教会が設置してあることが有るよね。
サラが落ち込んでいる時にダニエルが慰めていた。
サラは自分が唆したせいだと。
・引っ越しパーティー
借金返済の為にウィルは結婚式で歌ったとして、彼にギター
を持たせて歌わせていたね。
・名言
今回は名言が多かった。
・ダニエル先生
「最高のアドバイスでも足りない時が有る」
「精神医学の危険な所は医師がコントロール出来るという
幻想を抱いてしまうことだ」
「だが人の脳はこの世で最も複雑で神秘的なもの」
「我々の行動には何も確かなものはない」
・レイサム先生
「ある研究者が被験者に大量のオキシコドンを与えた所
金をばらまき始めた。この子は初対面の囚人にすぐに
打ち解けた」
・ナタリー先生
「一番必要としてるものが目の前にあるが手に入らない。
選ぶ権利もない」
・シャロン
「豚とケンカするな。汚れるだけ。豚は泥が好き」
・レイサム先生
「幸運は勇者を好む(アデデスホットノゥフゥワットゥ)」
■使用された曲
・You Are the Best Thing by Soul Deep
■出演者
シカゴ医療センターの救急外来
Dr.ウィル・ハルステッド (Nick Gehlfuss) 内科医。弟はシカゴ警察
エイプリル・セクストン (Yaya DaCosta) 看護師。ブラジル出身
Dr.ナタリー・マニング (Torrey DeVitto) 小児科医。救急外来研修中
サラ・リース (Rachel DiPillo) 医学部の4年生
Dr.コナー・ローズ (Colin Donnell) 外科医、父とは長年の確執
Dr.イーサン・チョイ (Brian Tee) 感染症の専門医。海軍の予備役
シャロン・グッドウィン (S. Epatha Merkerson) 管理部長
Dr.ダニエル・チャールズ (Oliver Platt) 精神科部長
マギー・ロックウッド (Marlyne Barrett) 主任看護師
イシドール・レイサム (Ato Essandoh) 医師・外科医
ジェイ・ハルステッド (Jesse Lee Soffer) シカゴPD
エリン・リンジー (Sophia Bush) シカゴPD
Dr.ニーナ・ショア (Patti Murin) 病理学
ジョーイ・トーマス (Peter Mark Kendall) 臨床検査技師
ジェフ・クラーク (Jeff Hephner) 新しい医学生、元消防士
Dr.アレン・ヴォースパン (Tosin Morohunfola) 手術室にて
Dr.マーク・バット (Saurabh Pande) 病理
ノア・セクストン (Roland Buck III) エイプリルの弟・看護師
Dr.ロビン・チャールズ (Mekia Cox) ダニエルの娘、感染症科
キャンディス・レイトン (Karissa Murrell Myers) 看護師
ドリス (Lorena Diaz) 看護師
ベス (Mia Park) 看護師
Dr.ロニー・リチャードソン (Nora Dunn) 精神科医
テイト・ジェンキンス (Deron J. Powell) エイプリルの婚約者
ダニー・ジョーンズ (Nick Marini) 性的搾取されている
カール・ウォレス (Rob Campbell) 36歳、囚人
イアン・ヴァンス (Levenix Riddle) 兄、HIV陽性
ジム・ヴァンス (Corey Hendrix) 弟、38歳、腎不全
カリーナ・ゴフ (Abby Rose Merrill) 16歳、ウィリアムズ症候群
ウェンディ・ゴフ (Brenda Barrie) カリーナの母
ノヴァク (Christopher Popio) 警備
ラハル (Kaiser Ahmed) 検死官
(Ryan Heindl) ホームレスの男、冒頭でサラが声を掛ける
(Anthony Mannix) 救命士、
(Darja Vaarsi) 訪問者
(Ralph Alexander) エレベーターの男
(Ashland Thomas) ED医者