第4話 憂国の逃亡者 Episode #3.4
監督/Andy Goddard 脚本/Julian Fellowes
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【前回までのあらすじ】
伯爵の投資の失敗によりダウントンアビーの売却の窮地に
陥るが、マシューはラビニアの父の本当の気持ちを知った事で
遺産を受け取ることになる。ロバートに話すと共同所有者にな
ることで意見が一致する。イーディスはストラランと結婚
当日突然新郎によって逃げられ悲しむことに。アンナはベイツ
の無実に奔走する中、ベイツはデントからクレイグがあんたの
ことを狙っているとして忠告を受ける。
【ストーリー】
仕事を終えると使用人たちの元に届く手紙を元にみんな雑談を
していた。
モールズリーは最近目が見えにくいとして呟く・オブライエンは
手紙で従兄弟が再婚することになったとするが、アンナには
手紙が届かなかった。カーソンに尋ねるが、残念ながら君への
手紙はないという。
マシューはダウントンアビー城の共同所有者になったことで帳簿
の精査をすることになり荷が重いと語る。メアリーは土地の共同
所有者なのだから当然だという。でも君の父のあら探しはするな
というのだろう?と問うと、責任を果たして欲しいだけだという。
アンナに対してベイツのことを尋ねると最近遭っていないとし
面会も出来ないし、手紙も来ていない事を語る。そのウチ、その
原因が何かわかるハズだと言う。
帰宅しようとするイザベルはヒューズの元を尋ねる。私がエセル
を尋ねたことは知っているでしょと問うと、彼女からあなたに
渡して欲しいとして手紙を受け取ったという。彼女は現在娼婦
になっていると告げる。それを聞いたヒューズは衝撃を受け、
まさかこの屋敷でそんな言葉を聞くなんて思いもしなかったと
語る。イザベルはそれだけ彼女は追い詰められているとし、他
に生きる術がなかったのだという。力になりたいが断られたとし
彼女を救う手がかりがその手紙に有れば教えて欲しいと語る。
エセルは自分の身を恥じて申し出を断るだろうという。
カーソンはマシューがこの城の共同所有者になったことで、
二人に仕えることになるのかと問う。マシューは僕は伯爵家の
土地と屋敷に投資をしたというだけでそれ以外は変わらないの
だという。カーソンは使用人の補充は可能か?と問うと、ヒューズ
にメイド一人、パットナムにキッチンメイド一人、私に下僕が
必要だという。マシューはその場で戦前のような暮らしは時代
遅れだとするが、ロバートは無視してヨーク大主教とのディナー
まではこのままで体勢で行くしかないが、不自由をかけるのは最後
だと語る。
翌朝、イーディスが食卓で朝食を取るのを知り、マシューは
ベッドで取ったらどうかと問う。私は独り身だからとし、ここ
で食べたいのだと語る。ロバートは新聞に目を通していたが、
アメリカのテネシーでは修正第19乗が批准されるという。女性の
参政権が認められるということ。イギリスよりも進んでいると
いうイーディス。ここでは私は投票が出来ないとし、30歳以上の
制限をつけるなんて馬鹿げていると語る。マシューはタイムズに
投書してみたらどうかという。
アンナがため息をついている中、カーソンはアンナに対して、
新しいメイドを雇うのでメアリーの侍女になれるぞと語る。
それを聞いても嬉しそうにしないことに驚く中、ちょっと考えごと
をしているというアンナ。新しい下僕も募集してるというと、
オブライエンは当然第二下僕なんでしょ?と問う。トーマスは有能
な人を見つけてくれと語ると、アルフレッドは僕のことを言って
いるのかとトーマスに突っかかる。ヒューズはエセルから手紙を
もらったが遭いたいけどここには来られないと言っているとし、
イザベルの家で会うことをカーソンに語る。
メアリーはマシューを呼びだすと、子供部屋は夫婦の居間にしよう
と語る。壁紙はこれで良いかと問うと、呼んだのはそんなことなのか
と問う。今朝医者に行ったのだろうと問うと何をしてきたのかと
問う。枯草熱のクスリをもらいに行ったのだという。マシューは
改装したら子供部屋はどうするのかと問うが、そういう心配は
まだ先のことだという。
イーディスはバイオレットに新婚旅行の土産を渡しに行く。
香水のビンで1ギニーだと聞いて銃でも突きつけられたのかと
問う。調子はどうかと尋ねると、酷いなんてものではないとし
悪夢だという。バイオレットは忙しくするのだというが、イーディス
はあの家ではやることはせいぜいおもてなしくらいしかないと語る。
しかしバイオレットは打ち込めることは有るハズだとし、あなたは
賢くて才能が豊かなので必ず見つかると語る。
ヒューズはアンナに少し出かける事を告げると、アンナが涙して
いるのを知る。もう何週間もベイツからの手紙が来ないので
心配していると語る。もしかしたらアンナのことを自由にする為
に身を引くつもりなのではないかとすると、それは考えられない
としてアンナは否定する。事情があるハズであり、絶対そうだ
と語る。
その頃刑務所ではベイツに対してデントはヤツラを怒らせた
みたいだと語る。看守のデュラントは売人であり、クレイグ
と組んでいるのだという。ベイツがヤツを殴ったことを今でも
根に持っているのだとし、ヤクを仕込んであんたをハメようと
したがそれも失敗したので怒っているのだという。デュラントが
所長に対してあんたのことを報告したとし、”乱暴で手が付けられ
ない”と言ったのだという。所長はそんなことは信じないハズだと
するが、それならば最近妻と面会したり、手紙が届いたりしている
かと問う。ベイツはそれを聞いて”良かった”と告げ、愛想を
尽かされたかと思ったと語る。デントはまた何か仕掛けてくる
ハズなので気を付けろと言ってくれる。
カーソンはアルフレッドに対して教育していた。
スプーンの名称を教えるがなかなか覚えられないアルフレッド。
トーマスはカーソン直々に指導するなんてアイツは狡いとするが、
彼は自ら教えを請いに来たのだとし、君とは違ってそうしたのだ
と語る。
エセルはイザベル邸でイザベルやヒューズと遭うと、息子のチャーリー
をブライアント夫妻に托したいと語る。あの頃、母の愛は他の
何にも勝ると思っていたが、現実は違うと語る。イザベルは
よく考えてくれとし、みんな自分の人生があると語る。しかし
エセルはよくそう言うがみんなではないとし、私には人生など
なく”ただ生きているだけ”だと語る。祖父母と暮らせばチャーリー
は何不自由ない生活を送れるのだという。イザベルは詳細は
伏せて孫の顔を見せたいとして手紙を書くのだとヒューズに告げる。
もしも気が変わった時の為にそのようにしようという。
イザベルの従者のバードはエセルを見て御屋敷を出てから苦労して
いるみたいねと告げ、だからと言ってあんな商売までするなんて
と軽蔑する。バードはイザベルに対して幾らなんでもああいう人
の世話をすることが私の仕事だとは思えないと語り、失礼だがこれが
正直な気持ちだと語る。
ヨーク大主教がディナー会の為にやってくる。
ヨークは別に反カトリックという訳では無いというが、ロバート
はカトリックはよそ者という気がして馴染めないことを語る。
外は雨が降る中、一人の男(トム)が屋敷に向かって走っていた。
アイルランドに居るシビルからイーディスに電話が鳴る。
「あまり時間がないが私は無事だと伝えて欲しい。何とか止められず
家を出られた」と語る。イーディスは止められるって何を?と
問う。
イーディスはコーラとメアリーに対して今シビルから変な電話
が有ったとして報告する。内容はよくわからなかったが、家を出た
と話していたという。
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クローリー邸の売却問題はマシューが故ラビニアの父の遺産を
受け取ることで決着がついた様に思われた。しかしイーディスは
結婚直前にストラランに逃げられ、アイルランドに住むシビルは
イギリスからの支配・独立運動に関連して国内で大変な事態が
起きていた。
アメリカでは一部の州で女性の参政権が決定していく中、ダウン
トンの中では今尚時代の波に乗れず、古くからの格式を守ろうと
して資産状況を無視した貴族生活を送る姿にマシューは少なから
ず疑問を呈していく。
時代と共に個人の意識の変化を求める風潮が有る中で、未だに
過去に固執しているダウントン人たちの中に有る変化を求めない
人たちと世間との間で大きな隔たりがあるところがなんとも言え
ないところ。
支配階級毎にその考え方の違いも有るのだろうけど、常々語る様
に、貧しい階級に居る人ほど、変化を求めるものあるし、
支配者階級にある人ほど変化を求めることに難色を示すという
流れが有る。前にも例えたけれど、「バカとブスこそ東大に行け!」
というドラマ「ドラゴン桜」の桜木建二の語るように、世の中は
全ては金持ちやエリートと呼ばれる人が、都合良く人を動かして
いるので、決定権を持つ側に立つことの必要性を唱えていくところ
が有る。
守るべき伝統は確かに必要だと思うけど、それがダウントンの
人たちに該当するのかどうかはまた別問題なのかなと思えるところ
が有るね。
大きく分けて3つの流れとして感想を書いてみる。
・刑務所に於けるベイツの流れ
ベイツとアンナが互いに意思の疎通が図れずにヤキモキする流れ
が有る。冒頭でアンナが涙する流れは、悲しみのそれだけど、
最後にアンナが涙する頃には、それとは違う意味合いの流れが
有って、現状なり心情を反映していて上手く構成されている。
手紙を見ることがこんなにも楽しいもので有り、嬉しいものだと
いう時代が有ったということが羨ましくも有るし、ドラマになって
しまうんだよね。
階級の違うシビルとイーディスの伝達方法には電話が使用されて
いたし、まるで階級の違うエセルとブライアント夫妻との連絡
には信用の有るエセルを通してのみ連絡が取れるような流れが
有った。
腐った世の中で有っても、共通する意識がある人の頼もしいこと。
刑務所にいるベイツに対して味方はいないと思っていたのだけど、
必ず自分のことを見てくれている人がいて、味方になってくれる
人もいるとばかりにデントがクレイグとデュラントの画策に対して
ベイツに密告してくれて、反撃することに協力してくれた。
・使用人たちの間に起きている新しい雇用の流れ
使用人の流れはシーズン3に於いては、トーマスとオブライエン
の影に隠れてなかなか個性を出せずにいる人も多かったけど、
個々人の静かなる闘志と恋愛の流れがそこにはあるって感じ。
向上心を持つデイジーは自分も指導的立場になりたいと考えていて、
このドラマに於ける女性の意識の向上を求める一人として数えられる。
新たにやってきた人物が騒動を起こしてしまうというのは、この
ドラマのパターンであり、仲間として受け入れるまでには色々と
苦難の道を辿ることになりそうだ。
そんな中二人の人物(ジミーとアイビー)が新たに使用人としてやって
きて、凝り固まっている使用人達の人間関係なり価値感を色々とかき
混ぜていきそうだ。
デイジーがアルフレッドのことを擁護したのに、肝心のアルフレッド
は新しくやってきたキッチンメイドのアイビーに目を奪われてしま
うというのが何とも言えないね。
元々の意図した流れでは、男性の第二下僕のジミーの中に有る
カリスマ性を以て、女性使用人のモチベーションを保たせようと
していたのに、ホモであるトーマスがそれに反応してモチベーション
を高めてどうするよって感じがするところがなんとも言えない(笑)
オブライエンはその動きに敏感に反応しているところは流石だ。
「愛することは自らの弱点をさらすことでもある」とばかりに、
色々と利用されてしまう可能性は否定出来ない。
ヒューズの病気の件は完全に忘れ去られてしまったかのうよな扱い。
しかし新たにエセルの流れを利用し、改めて苦しい庶民の実情と
共に女性として強さなり、社会的地位を求める流れへと繋がって
行きそうな流れが有る。
・民族的・宗教的対立
アイルランドとイギリスの間に起きている実に難しい問題で、
語り出すときりがないというくらいのものが有るけれど、
個人的に分かっているようで分からないことも多いので深くは
言及しないけど、IRAの活動家がテロを起こしたとかなんとか
いう現実的流れはつい最近まで起きていたという印象が有るよね。
身近でアイルランドというと、「THE FALL 警視ステラ・ギブソン」
が舞台となったのは北アイルランドであり、ロンドン警視庁からの
出向という形で捜査を行うドラマが有ったし、ニューヨークに
移住したアイルランド系の多くは警察官になったという歴史が
有るとして、「CSI:NY」などでドン・フラックが語っていたりも
する。
サッカーなんかを見ているとイギリスのサッカー協会は日本の
バスケの協会とはまた違って別の意味で複雑な形で分裂している
し、つい先日行われたイギリス国内でのリヴァプールとマンチェス
ターUでの対決に於いては、元々労働者階級地区が多く住む土地同士
の対決だけど、主にこの時代、リヴァプールが貿易の拠点となり、
ホワイトカラー人口が多かった為に、製造工場となっていたマンチェ
スターは見下されていたことはよく言われていて、サポーター同士
も衝突することが多い。
アイルランドのイギリスからの独立を求めるトムとしては貴族の
生活に嫌気が差しているのだけど、そんなトムの妻は貴族の娘
でも有るし、活動家をするのであれば、そんなものにシビルを
巻き込むなと小一時間な感じもする。妊婦を放って逃げて来たと
いうことで確かに嫌悪感を示すものも有るのだけど、支配されて
いることに対して反発心が出るのは当然のこと。なかなか複雑な
心情が入り乱れているし、何よりもイギリス人の支配者層を追い
出そうとしている活動家が、イギリス貴族の家に住んでいると
いう辺りの不思議な因縁と危うさを感じるね。
子供の扱いに関して、エセルとの関係と対比されるものも有る
けれど、一番望まれるメアリーとマシューの間には子供を
作ろうという機運が生まれないのか気になる。メアリーはなんと
なく生みたくないのではないかという感じが、今回の子供部屋を
犠牲にするという行動の中にも見て取れるような感じにも見えたな。
それにしても豪邸の火事をトースターを使って表現する辺りは
ちょっとチープすぎる(笑)。寧ろバイオレットが必死になって
一連の流れでジョークを言っていたシーンが印象的だったね。
「個人への暴力には反対していました。本当です。」(トム)
「なら安心して眠れそうね」(バイオ)
「ここだけの話こうなると思った。あの男が屋敷の恥だ。
警察から逃げてシビルは恐らくダブリンの地下牢かどこかに
捕らわれているハズだ。」(カーソン)
「君の世界は物騒だ。」(ロブ)「何処の世界でも同じ。自覚があるか
どうかだと」(トム)
「当局はトムが英雄視され、シビルが第2のモード・ゴンや
グレゴリー夫人になることを最も恐れている」「グレゴリー夫人
にマルキエビッチ伯爵夫人、アイルランドには高貴な革命家が
多いわ」
「公爵夫人レディー・サラはどう?」
「彼女はチャーチル系よ。チャーチルは軍人の家系。」
「ウチにはチャーチルは居ないの?」
「バイオレットは正しい」(ロブ)
「今の言葉書き留めておいて」(バイオ)
「勤勉さと真面目さは美しさより尊いものだ」(カーソン)
「伯爵令嬢が女性の権利を主張。グランサム伯爵のご令嬢イーディス
からの投書」「彼女は制限選挙を非難するとする主張。政府は
女性の権利を軽んじていると苦言を呈している」(投書欄)
「間違いを正さないといけない。しかし途方もない波風は立つ」(バイオ)
■検索用キーワード
・Downton Abbey – The Suite
Performed by The Chamber Orchestra of London
・ドラムグール夫妻 息子と使用人を追い出した。火を放った
・あの家はおぞましい
・「あんたハップスブルク家かい?」(PAT)
・電気トースター
・レディー・アンストラザーに仕えていた。奥さんはフランスへ
・「アルフレッドは哀れな子犬みたい」(メアリー)
・「堕落の道を選んだら後戻りは出来ない」(ヒューズ)
ロバート・クローリー (Hugh Bonneville) グランサム伯爵
シビル・クローリー (Jessica Brown Findlay) 三女
イーディス・クローリー (Laura Carmichael) 次女
メアリー・クローリー (Michelle Dockery) 長女
コーラ・クローリー (Elizabeth McGovern) 伯爵夫人
バイオレット・クローリー (Maggie Smith) ロバートの母
マシュー・クローリー (Dan Stevens) ロバートの遠縁
イザベル・クローリー (Penelope Wilton) マシューの母
Mr.カーソン (Jim Carter) 執事
ジョン・ベイツ (Brendan Coyle) 従者
サラ・オブライエン (Siobhan Finneran) 侍女
アンナ・スミス (Joanne Froggatt) メイド長
デイジー・メイソン (Sophie McShera) メイド・新人
トーマス・バロウ (Rob James-Collier) 第一下僕
Mrs.ヒューズ (Phyllis Logan) 家政婦長
Mrs.パットモア (Lesley Nicol) 料理長
エセル・パークス (Amy Nuttall) 新人メイド
ジョセフ・モールズリー (Kevin Doyle) イザベルの従者
トム・ブランソン (Allen Leech) 元運転手、シビルの夫
アルフレッド・ニュージェント (Matt Milne) 下僕、オブライエンの甥
デュラント (Neil Bell) 刑務官
ターナー (Ged Simmons) 刑務官
クレイグ (Jason Furnival) ベイツと同房
デント (Karl Haynes) 囚人、ベイツに忠告してくれる
— (Michael Culkin) Archbishop of York
Mrs.バード (Christine Lohr) イザベルの侍女
ホレイス・ブライアント (Kevin McNally) エセルの義父
ダフネ・ブライアント (Christine Mackie) エセルのバボ
ジミー・ケント (Ed Speleers) 新しい第二下僕、イケメン
アイビー・スチュワート (Cara Theobold) キッチンメイド
— (Michael Haydon) 囚人
— (Glen Stanway) 囚人
— (Brian Woodward) 囚人
— (Roman Green) British Army Battlefield Amputee
シュート内務大臣
マレー