アンと言う名の少女3
(Anne aka ANNE WITH AN”E”)
Marvin Moore (c) 2017 Northwood Anne Inc.
https://www.nhk.jp/p/anne3/ts/L532PR48ZY/
脚本/Moira Walley-Beckett
監督/Amanda Tapping
第10話 心の導き The Better Feelings of My Heart
【ストーリー】
時は19世紀後半のカナダ、プリンス・エドワード島
アヴォンリーの村。アン16歳
●ローズ家
ギルバートはウィニフレッドとは結婚できないことを語り、
その原因に好きな相手がいることを正直に話す。
「予想しないことを言われた。見事なものだ。完全に騙さ
れた。」
彼女はギルバートに対して私の気持ちを考えていないとし、
それでもこれだけは答えてほしいという。
「私と結婚したいとは思えなくなったのはいつから自覚して
いたのか。」
ギルバートは自分でもウィニフレッド同様に”困惑している”事
を告げ、”君のことは好きだ”という。
しかし彼女ほどには自分の事が好きではないという事なのか。
彼女から子供の頃からの約束を盾に自分を選ぶように要求され
たのかを問う。
ギルバートはそれを否定すると傷つける気はなかったことを
語る。
ウィニフレッドはこれからどうすれば良いのかと嘆く。
先日あなたと父が話をした際にもう決まったものかと思って
いたこと。母はその気になり牧師様と会う約束を取りつけ、
パリのアパートの内装を職人に依頼したのだと。今更破断に
なったなんてみっともないし、あなたに愛されていると信じて
しまったことに憤りを感じていることを語る。そもそもどうし
てそんな態度を取ったのか。
ギルバートは自分の気持ちが分かっていなかったとし、心の
奥底の思いに気が付いてすぐに君に伝えに来たのだという。
取り返しがつかなくなるところだった事。気が付くのが
一週間後や一年後ならばどうなっていたか。
“彼女と結婚する気はない”という。
それを聞くとウィニフレッドは更に憤り追い打ちをかける
のかというと、彼女の方には僕に気持ちがないのだという。
・”片思いなのか・・”
・彼女との恋は実らないのに私を捨てるのか。
・私で妥協しようとも思ってももらえないのは傷つく
事を語る。
しかしギルバートは君は素晴らしい人であり、妥協などに
甘んじなくてももっとふさわしい相手がいると語り、僕の
せいで自信を無くさないで欲しいと語る。
「君だけを見つめて心が揺らがない人と一緒になるべきだ」
そんなギルバートに対してウィニフレッドは一つだけ頼み
があるとし、破談になったことは暫く誰にも言わないで
欲しいこと。私が身辺の整理をつけるまでの間。
みんなは婚約すると思い混んでいるので噂が立つ頃には
町を離れていたいからだという。海外に行く手配をするので
二週間だけ待って欲しいとし約束できるか?と問われると、
ギルバートは了承する。
●学校
今日はクイーン学院の合格発表の日だった。
みんな緊張して吐きそうだとか(チャーリー談)、失神するか
も知れない(ダイアナ談)と語る中、ステイシー先生がやって
くる。
彼女は生徒に対して、入試結果が来ましたとし、結果がどうで
あれ、みんなよく勉強したことを語る。町の子供たちのよき
お手本であること。
「それでは運命の時よ!」
そう語ると合否が書かれた用紙を机の上に置く。
ダイアナは受かっていた。ギルバートとあんが同じ得点で
一位だという。ムーディは凄いと称えると共に
オールヴォク(au revoir)と言わなければならないとして、
島で一番賢い男がパリに行くのだからと語る。
アンとギルバートは室内の片隅で二人で語る。
アンは彼に何か言いたいことがあるのではないかと尋ねる。
しかし彼は「合格おめでとう」としそれ以上の言及が無かった。
ステイシー先生は寂しいが今日が最後だとし、この言葉を
誇らしい気持ちで言うという。
「本日は解散! / Class Dismissed」
生徒たちは先生に感謝を述べる。
芋電球は忘れません(チャーリー談)
またアンは先生に対して、向こうへ旅立つ前に一人で会いに
行っても良いかを尋ねる。先生もゆっくり話したいところだっ
たという。
更にギルバートは生徒が全員出ていった後、先生に対して
相談があることを語る。
詳しいことは説明できないが・・
・ソルボンヌには行けなくなったこと。
・この成績ならばトロント大学に入学できますか?
よければ先生の友人の博士に聞いてもらいたいという。
それを尋ねるとかなりの出遅れになるがエミリーに連絡を
取ってみるとし電報を打つという。
●帰宅途中
アンとダイアナはいつもの森を歩きながら会話する。
ギルバートは何も口には出さなかったとし、私の手紙の事
も何もかもだと話す。優しくて良い人だと思っていたが
違っていたこと。とにかく答えは出たので気持ちの整理は
ついたという。アンはダイアナにもうすぐルームメイト
になるとして私たちの人生が小説ならばこの章の締めくくり
はまさに今、この時であり、心の通じ合う二人が腕を組んで
未来へ踏み出すのだという。ダイアナは両親を心変わりさせ
る薬があれば良いのに・・と不安を口にする。
アンは私が妖精ならば二人を薬で眠らせて唱える。
「あなたは優しくなる」・・と。
目を覚ました二人は過ちに気づくのだという。
今日は特別に言葉を変えて別れようという。
「あと7日で翼を広げて羽ばたきます」
二人は互いの小指を結んでその言葉を話して誓い合う。
両親はあなたを愛しているので分かってくれるはず。
「忘れないで、あなたの人生はあなたのもの」
であることを・・
●バリー家
ダイアナは改めてクイーン学院に行きたいことを両親の前で
語る。すると父・ウィリアムは怒鳴る。
「お前の人生はお前だけのものではない」
「息子がいれば違ったがいないのだから・・」
「つまりお前にはこの家に相応しい相手と結婚する義務がある」
母・エリザもまたダイアナに語る。
「私たちを騙すなんて恩知らずな娘。どうしてあなたは身勝手
なのか」
■感想
いよいよ最終話になりました。
ドラマでは端折った感の強い内容で、決して丁寧な作りでは
なかったのですが、それでも面白かったです。
アンのドレス姿は綺麗で、マリラとマシューがシャーロット
タウンのジョセフィン叔母さんの家を訪ねた時の驚きは、
見ている視聴者も同様に感じたかもしれません。
アニメ版だと明らかに成長する光景が有るのだけど、ドラマ版
だと成長期の子役か余程長いスパンで描かない限りその変化
を感じるのは難しそうな気がします。
この時代のプリンスエドワード島が舞台となる
「アボンリーへの道」をシーズン7まで放送したのを持って
いました。コロナ流行後にGYAOでずっと放送していたことも
あるし、何度かNHKでも放送している。このドラマは
「赤毛のアン」だけではないけど、アンを育てた後のエピソード
として描かれている所もあるので興味深いかなと。
またアニメ版と比較してみると、アニメ版(世界名作劇場)は
全50話でしたが、今シーズンは大体30話から40話前後のところ
が描かれた感じです。
ドラマ版ではクイーン学院に合格したことまでが描かれました。
どの時点で打ち切りが決まったのかはわかりませんが、
シーズン4が描かれるとしたならばクイーン学院での生活を
中心とした描き方を想定していたのかも知れません。
少々ドラマを見ていると不自然な感じも受けました。
なんと言っても結婚話を絡めた恋愛話に比重が置かれた事で
高校を卒業すると同時にそんな話が出て来るというのは
違和感が有ります。以前にも書きましたがそういう時代だった
のかも知れません。
また今回のドラマを見て教訓めいたものを感じるのは、
「人の恨み・辛み・怒りは他人に伝染する」
ということでしょうか。
自分に向けられた怒りは他人に向けられます。
自分が傷つけられれば他人に同じ痛みを負わせようとします。
話は変わりますが現在ロシアとウクライナが争っています。
ウクライナの歴史を見ると治めている国は過去にさかのぼる程
に次々と変わります。
そして現在ロシアの一方的な虐殺に近い侵略の構図ではあり
ますが、これを機会にして殺された人たちはロシア政府が悪い
と割り切ろうとしても感情的にはロシアの人たちに悪感情が
向けられるでしょう。例えそれが兄弟の国とか親子の国だと
しても同様です。ロシアの大統領はその辺の感情の問題を全く
無視して行動しています。
ドラマとしては興味深いところがたくさんありました。
みんな思い込みが強く先入観だけをもって勝手に決めてかか
ったところが多かったですね。
「勝負は下駄を履くまで分からない」とは日本の諺
ですが、最後まで諦めてはいけないことを改めて感じます。
疲れていたことも有りすべては覚えていないのですが、覚えて
いるところだけ言及してみます。
■色々と気になること、起きたこと
・ドラマの醍醐味
このドラマに於ける一番興味深いところは、アンの性格
にあり、この世の中では彼女が大好きな「想像・空想」と
今回のような「現実」が起きるところにあるかと思います。
これはステイシー先生も語っていたことにもつながりますが、
「常に幸せでいたいと望むのは無理がある。正直不可能で
現実的ではない。悲しい思いをしなければ喜びも感じない。
一番深く沈むことのできる人が一番高く羽ばたく事が出来る」
彼女が必要としていたのは、生きている上での苦悩的飢餓感を
埋め、精神を正常に保つ為に常に持ち合わせていたものが
空想の世界の中に有りますが、その彼女には辛く厳しく突き
つけられる現実があり、そのギャップに苦しめられつつも
最終的には、理想の世界に近づいていく為に努力していく所に
共感を覚えるのかも知れません。
・男親、女親、無視と裏切り
前回の感想の中で親子関係について言及しましたが、今回も
それは切っても切り離せないものがあります。
今回のエピソードの中で起きていることが有る意味では
人生の初めての大きな岐路であり、決断の時でもあるからです。
そんな時に子供に関わるのが親の仕事です。
ただしそんな親も子供の気持ちを無視して過干渉すれば、それは
子供に取っては嫌だろうし、ネグレストの如く無視すれば
それもまた虐待です。
前回の感想の中では
・カクウェットと母、エリザとダイアナ、ヘイゼルとセバスチ
ャンとして扱いました。大体女親と子供の関係です。
今回は・・・
・ダイアナとウィリアム
・アンとマシュー
・ヘイゼルとセバスチャン
・イライジャとセバスチャン
の構図となり、男親が多くなった感じを受けます。
・ダイアナとウィリアム
ダイアナの流れは冒頭でのウィニフレッドとギルバートの
流れの後に描かれていたことも有って、二つの問題に対して
全くの無関係な流れでは有りますが、実際には連動性があって
面白く描かれました。
ダイアナが花嫁学校には行かないでクイーン学院に行きたい
と語ったのでしょうか。
ウィリアムは言いました。
「お前の人生で果たすべき義務は一つしかない。結婚後に
夫にねだると良い。お前が望んでいることとやらをな」
「見せてもらおうか、連邦軍のモビルスーツの性能とやらを」
って後者は「機動戦士ガンダム」のシャア・アズナブルの名言
だけど、なんとなくウィリアムがシャアに見えた瞬間(嘘)
ウィニフレッドもエリザも二人とも対象者に対して
「裏切り」「恩知らず」と語ったし、アンがダイアナに対して
「あなたの人生はあなたのもの」と言った次の瞬間に、
「お前の人生はお前だけのものじゃない」と否定される所に
妙味がありました。
・アンとマシュー
この組み合わせではマシューの不器用さが現れたところで
しょうか。男は意外と繊細な心を持っていたとしても
行動は不器用なことが多いような印象があります。
これまでのことを思えばマシューがアンに愛想をつかす
ことなどまず考えもしない。
寂しさをごまかすための行動が逆に怒っているようにも
拗ねているようにも見えましたね。
実際にはアンの決断に対して、自分の存在が足を引っ張ること
が無いよう突き放したものでした。
・ヘイゼルとセバスチャン
実質既に仲直りはしているような感じでしたが、果樹園を
二年でよみがえらせたセバスチャンの頑張りに対して
ねぎらいの言葉をかけていました。
「よくやってるわね。とても立派よ」
ヘイゼルは常に子供に目立つ行動を辞めるように頭を抑えて
来た感じですが、親は子供のことをよく見てくれていて、わずか
なかけ違いが大きな意見の違いに結び付くものだなと感じた
瞬間でした。
・イライジャの存在
実はメアリーの息子のイライジャと原住民・ミクマク族の
カクウェットの存在、シーズン2で詐欺を働いた二人の男
たちのことは気になっていました。
解決したのはイライジャだけでした。
彼は母親の葬式には来ませんでしたし、ギルバートの家に
泊めた際には、彼の父親の勲章を盗んで質屋に売りに出して
しまいました。アルコール中毒です。しかし買戻して、母親の
墓参りに来て、その上デルフィーヌの人生にも関りたい旨を
伝えてきました。
セバスチャンは許さないかと思われましたが、心の広さは
彼の良さでもあります。
■手紙は人を救うが愛は伝わらない
「手紙」に対する役割が意外と大きかったこと。
しかし手紙では決して相手には真意が伝わらないことも
覚悟しなければならないことも想定しなければなりません。
先日のアンからチャーリーへの手紙の内容は伝わらなかったし、
今回のチャーリーからアンへの手紙も同様です。
更にいうとアンの出生の流れを掴もうとして手紙を書きました
が手紙だけでは伝わらず、実際に本人の元を尋ねたからこそ
伝わりました。
・アンの出生と両親
この流れが正直一段落の解決をするとは思いませんでした。
常に欠けたピースを探して生きていく。
その要素が逆にアンというものを構成していくとしても
十分深みのある造形はできたのではないかと。
前にアンを預かろうとしたトーマス夫人の家からは何も
出てきませんでした。スコットランド出身だというアンの
最小限の情報から教会にも手紙を出して情報を引き出そう
しましたが残念ながらわかりませんでした。
しかし改めてトーマス夫人の元を尋ねていくと、そこで
ある本が見つかりました。
「花言葉事典 / The Language of Flowers」
【バーサへ、君が生徒たちと一緒に自然と親しめるように
この本を贈ります。愛を込めて ウォルターより】
【1883年7月13日 アンの初めてのピクニック】
また母親のバーサはアンと同じく赤毛でした。
・THE 親友
ダイアナはなんというかアンとギルバートの関係に於いては
不思議な役割を果たしました。
前回は伝えることが出来ずモヤっと感があり、今回は偶然と
いう名で列車でばったり遭遇し、彼がウィニフレッドとは
結婚せず、そしてアンに対する気持ちを知って失敗から得た
教訓を実行に移しました。
・ペンと紙
このシーズンでは「ペンは剣よりも強し」という言葉が
ぴったりであるかのように、アボンリー新聞を通して
弱者の窮状を訴えたりしました。それで印刷機が壊される
こともありました。
しかしそれ以外のところではなかなかペンや手紙の良さ
というものが伝わらずにやきもきさせること多い展開が
最後には待っています。
■その他
・メアリーの墓
1865年11月2日生まれ、1899年4月8日没。
メアリーの墓の隣はギルバートの父・ジョン・ブライスの
墓でした。墓標を見る限り1896年11月18日に亡くなったよう
です。
・夢は世界を変える
・心の通じ合う友
ステイシー先生とアンが好きな言葉です。
・手紙の切れ端
「ギル」「離れ離れ」「心」「無い」「学校」「婚約」
「愛」「してません」「恐れ」「ひとり」「無い」「永遠に」
これを見てアンはギルバートは私を愛していないという返事
を書いたものだと勘違いする。
みんなせっかち過ぎはしないでしょうかね。
・私にとってはあなたが家に来てくれたことが最高の贈り物
マリラがアンにかけた言葉です。
・レイチェルの出番は?
意外と最後の方は出番が少なかったような・・・
・ギルバートはトロント大学へ
ステイシー先生の知り合いのエミリーに頼んでくれたので
入学することが出来るようです。
■使用された曲
・Ahead by a Century by Tragically Hip
■出演者
アン・シャーリー (Amybeth McNulty) 13歳、孤児
マリラ・カスバート (Geraldine James) 妹
マシュー・カスバート (R.H. Thomson) 兄、牧場主
ダイアナ・バリー (Dalila Bela) アンの親友
レイチェル・リンド (Corrine Koslo) カスバート家のお隣
ジェリー・ベイナード (Aymeric Jett Montaz) カスバート家の農場のお手伝い
ミュリエル・ステイシー (Joanna Douglas) 教師
ギルバート・ブライス (Lucas Jade Zumann) 生徒・イケメン
イライジャ・ハンフォード (Araya Mengesha) メアリーの息子
ウィニフレッド・ローズ (Ashleigh Stewart) 医者
ヘイゼル・ラクロワ (Melanie Nicholls-King) バッシュの母
セバスチャン・ラクロワ (Dalmar Abuzeid) “バッシュ”トリニダード出身
Mr.ウィリアム・バリー (Jonathan Holmes) 地元の金持ち
Mrs.エリザ・バリー (Helen Johns) アンの見極め
ジョセフィン・バリー (Deborah Grover) 叔母
ローリングス (Kent Staines) ジョセフィン家の執事
リリー (Mackenzie Ripley) クイーン学院、寄宿学校の世話係
Mrs.ブラックモア (Sheila McCarthy) 下宿
Mrs.トーマス (Corinne Conley) アンの前の養母
コール・マッケンジー (Cory Gruter-Andrew) アンの友人
ジョーシー・パイ (Miranda McKeon) 生徒
ルビー・ギリス (Kyla Matthews) アンの友達
ティリー・バルター (Glenna Walters) 生徒・太い
ジェーン・アンドリュース (Lia Pappas-Kemps) アンの友達
プリシー・アンドリュース (Ella Jonas Farlinger) 生徒
ムーディ・スパージョン (Jacob Ursomarzo) 太った生徒
チャーリー・スローン (Jacob Horsley) 少し天然パーマの生徒
ポール・M (Kyle Meagher) ビリーの友達
ポール・L (Daimen Landori-Hoffma) ビリーの友達
デルフィーヌ () セバスチャンとメアリーの娘